経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

ポスト・アベノミクスによるコロナ対策

2020年08月30日 | 社会保障
 アベノミクスは、異様なほどの金融緩和をしても、緊縮財政を組み合わせていては、経済が「離陸」しないことを証明した。したがって、どのような形で再分配を行うのかが成長への突破口になる。コロナ禍にあって、内需のテコ入れが必要なときなのだから、喫緊の課題でもある。そんな中、業界へのバラマキか、消費減税くらいしか構想できないところに、この国の不幸がある。

………
 コロナ対策では、「給付金」が乱立し、給付制度のインフラがない中で、にわか造りの実施で大いに混乱した。普通なら、後悔して制度作りを考えるところだろうが、そんな気配さえない。そうこうするうち、10万円給付金の効果は抜けるし、秋冬にコロナの3波が来たら、どうするつもりなのか。ポストコロナでIT戦略を強化するのも結構だが、こちらが御留守で、出たとこ勝負では、混乱を繰り返すことになる。

 一つの方法は、厚生年金のルートを使うことだ。企業に依頼し、年収100万円以下の加入者には20万円、150万円以下に15万円、200万円以下に10万円、250万円以下に5万円といった具合に給付してもらい、それに要したのと同額の保険料の納付を、財政負担によって実質的に免除する。こうすれば、所得に応じた給付を、個々人の申請という手間を省いて、スピーディーに行える。

 この再分配が重要なのは、社会保険料と消費税は低所得者にも一律という「逆進性」を改善できるところにある。日本は、低所得者の負担が重く、所得が増えても減殺される。これが消費不振の一因なのだから、成長のための構造改革となる。しかも、いきなり重い保険料がかかる「130万円の壁」が取り払われて、就労抑制がなくなり、所得が底上げされる。それは、少子化の改善にもつながり、年金財政も助けるはずだ。

 国民年金については、一律20万円を保険料の引き落とし口座に振り込むようにする。国民年金では所得の把握はしていないので、事後に申請してもらい、一定額以下であれば、返済を不要とする。返済が必要な人は、後で毎月の保険料に上乗せする形で払ってもらう。それで払ってもらえない場合は、将来の年金給付を差し引くことで清算する。年金を、老後にもらうだけでなく、いざというときに生活の支えるものにするのである。

………
 日経は、8/27に諸外国での年金の早期引き出しを報じてくれた。平時からの定額還付といい、日本は、消費増税に拘泥するうちに、制度整備で完全に劣後してしている。コロナ禍での無様さは、かつての官僚主導のキャッチアップ型の政治すら機能していないことの現れなのだ。もし、厚生年金から乳幼児期の所得保障を引き出せれば、非正規にも対象を拡大でき、出生率を高められる。それは、むしろ年金財政を改善する。

 アベノミクスの8年は、賃金を上げても、消費税と社会保険料によって、4割の上前がはねられる「反消費」の経済構造への完成であった。消費を捨てれば、成長は、不安定な外需に頼るよりほかなく、金融緩和による円安で、日本を安売りしてしのげば、国民の貧しさは、ますます募ってしまう。ポスト安倍の真の課題は、「反消費」の構造を活かし、思い切った再分配に踏み出すことだが、リアリズムが欠如して、課題の存在すら見えていない。


(今日までの日経)
 安倍首相辞任。コロナで年金早期引き出し 豪州や米など特例措置。

(図)


※全産業活動指数の廃止は寂しいね。建設業活動指数は国交省で引き継いでほしいな。



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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2020-08-31 20:40:07
菅政権のようですが、彼はかつて無利子国債や政府紙幣の発行を求めたり、三党合意の破棄を求める強硬派だった前歴があるので、財務省からしたら厄介な人かもしれません。
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