経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

成長のための負担増

2010年04月20日 | 社会保障
 4月には各経済雑誌で「経済入門特集」が組まれる。春の風物詩というわけだが、週間東洋経済4/24号は「入門」にもかかわらず、なかなか読ませる内容だった。その背景には、慶大の権丈善一先生が居られるようだ。

 出色の出来だったのは、国内編の経済政策の部分。ありきたりの政府批判は影もなく、フィギア&ファクツに基づいて展開される政策論には好感が持てる。米国に並ぶ小さな政府である事実を無視し、更なる小さな政府をはやす日本の現状に心を痛めていただけに、若い人には、ぜひ読んでほしい内容だ。

 内容から窺えるように、編集部は、権丈先生から多くのことを吸収して論を進めている。こういう傾向は以前の「年金特集」から顕著であった。もちろん、内容の充実は、3年前の「格差特集」の頃から見られたことであるから、先生の力添えだけというのでなく、編集部の実力に裏打ちされるものではあろう。

 社会保障の充実は、経済成長に資するものであり、国民生活を安定させる。いたずらに消費税増税と結びつけて、社会保障をおろそかにすることは、国民の大多数を占める中低所得の人々にとって利益にならない。それにもかかわらず、小さな政府が世論になってきたことに政治的不幸があったのだが、権丈先生や東洋経済の努力によって、変化がもたらされつつある。

 ただし、中期的に、社会保障の充実と消費税の増税が必要なことは明らかで、それに向かうことは正しくても、当面の経済運営を安易に考えてはいけない。消費税を上げる際には、物価上昇率2%以上の経済状況と、税率1%の小刻みでの引上げが絶対条件になる。

 権丈先生は、97年のハシモトデフレについて、消費税引上げ前の緊縮財政が大きな理由で、消費税引上げは景気には中立というお考えだが、筆者は、消費税引上げも原因と考えている。むろん、感覚で言っているのではなく、当時の家計調査のデータを見ての判断である。また、東洋経済は、「消費率は安定的」だから、消費税引上げも問題なかろうとするが、これに頼るのは危険だ。

 詳細は日を改めたいが、いずれにしても、消費税を引上げる際には、経済情勢を十分に見極め、上げ幅にも慎重を期さなければならない。安易な引上げで景気を壊す失敗をすれば、それこそ、二度と社会保障の充実はできなくなってしまう。

(今日の日経)
 子ども手当・増額分は金券。財務省チーム改革提言。女性就業率73%に引き上げ目標。エコカー補助延長せず。中国経常黒字、低下でもGDP比6.1%。ヤマト設備投資2年2000億円。田園都市線・早乗りクーポン。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 前の記事へ | トップ | 消費税増税の目的とタイミング »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

社会保障」カテゴリの最新記事