経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

補正予算は2兆円のデフレ要因

2013年12月13日 | 経済(主なもの)
 あなたは、「今年は2億円の利益を上げました」と胸を張る事業部長を評価できるだろうか。前年の利益が5億円で、3億円の減益という結果であったとしても。その事業部長が反省の態度を見せるならまだしも、前年比の減益を隠し、当年の利益額だけアピールするようなら、間違いなくクビだ。こんな常識も、国の補正予算では通じないらしい。

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 今日の日経は、「補正予算で5.4兆円還元、消費増税分の2/3」とあるが、前年の補正予算は10.2兆円だったのだから、これとの比較をして、デフレ予算と評価するのが普通の見方であろう。財政当局のセールスポイントを、そのまま流しても意味があるまい。消費税との関係で言えば、約7.8兆円の増税に加え、補正予算でも2兆円の緊縮とするのが正当だ。

 前年の補正予算は、いろいろと膨らませてあって、需要を拡大させると見込まれる実質的な大きさは、国債増発に見合う5.2兆円程度であった。そうした観点から、今年の補正予算を評価するなら、3兆円程度となる。前年比では、約2兆円のマイナスである。

 今回の補正予算のフレームを見ると、歳出は5.5兆円となっているが、震災復興分1.9兆円のうちの1.1兆円は、前年度に執行できなかった分を繰り越すのと同じことなので、追加需要としてカウントできない。残りの0.8兆円は、復興法人税の減税分であるから、カウントはできるものの、すべて賃金に分配されるとしても、見込める消費増は、7掛けの0.6兆円弱くらいのものであろう。この時点で4.2兆円まで目減りする。

 問題は、地方交付税交付金の1.2兆円である。これのほとんどは、特別会計に繰り入れられるだけで、年度内に自治体へ追加配分される部分は少ないと予想される。そして、来年度予算の地方交付税の財源に組み込まれ、その分だけ来年度予算の国の負担は減らされて、地方での需要拡大にも結びつかないだろう。結局、追加需要としてカウントできないから、これも差し引いて、今回の補正予算は、実質的に3兆円となる。

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 今回の補正予算の編成は、安倍首相が3%アップの消費増税を懸念し、負担増を1%程度に抑えるべく、5兆円規模を指示したとされる。首相の懸念は、もっともだし、日経も、そうした「型」に嵌められて、数字を見ている。しかし、財政当局は、形式を整えただけで、増税の圧力を緩和するどころか、一層、強めるものに仕立て上げている。どうして、こういうことが罷り通るのか、筆者には、理解し難いところである。

(今日の日経)
 法人税制改革は足踏み。 補正予算で還元。税制大綱決定・家計負担増。経済教室・FRB100年・カーメイン・ラインハート。
コメント (1)
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