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 今週は,「司法試験「年3千人」見直し 法務省、合格者減も選択肢」(朝日)との刺激的なニュースが流れました。「合格者の急増による「質の低下」を懸念する声が相次いでいることに危機感を募らせたためで、「年間3000人は多すぎる」との持論を展開している鳩山法相の意向も受け、年度内にも省内で検討を始める。同省が慎重路線にかじを切ることで、今後の検討内容によっては現在の「3000人計画」が変更され、合格者数を減少させる方向に転じる可能性も出てきた。」(朝日)とのことです。
 法曹人口の拡大は,平成司法改革の柱の一つで,合格者3000人計画を盛り込んだ司法制度改革推進計画が閣議決定されており,先進国で法曹人口が少ないわが国が,少なくともフランス並みの法曹人口になるように制度設計されたと記憶しています。これが後退するのかどうか目が離せないですね。規制緩和,構造改革を進めた小泉改革が後退した世の中の風潮と何か関係があるのでしょうか。今後,法務省だけでなく,経済界,法科大学院,日本弁護士連合会などの動きが注目されます。
 次は,「<最高裁>検察審査会の配置見直し案 東京は3倍の6カ所に」(毎日)とのニュースです。検察審査会の適正配置というところでしょうか。かつて,簡易裁判所,地方家庭裁判所支部の適正配置の動きが昭和から平成にかけてありましたが,今度は検察審査会ですね。内容としては,都市部で増設,地方で統廃合というイメージでしょう。
 さらに,時節柄,やはり刑事関係の動きのニュースが続きました。「容疑者が取り調べ記録、自白強要をノートで防ぐ──弁護士会「差し入れ」、ご当地版も続々」(日経)とのニュースがある一方,捜査側の警察庁も,「尊厳害する言動規制 警察庁が取り調べ指針、県警誤認逮捕を検証」(北日本新聞)とのことです。後者は,富山の誤認逮捕問題や被告12全員が無罪となった鹿児島県の選挙違反事件を受けたもののようで,警察庁が「取調適正化指針」をまとめたとのニュースです。
 そのほかには,「公取委、談合対象の審判廃止へ 不服企業は訴訟に」(朝日),「来月4日に初の和解へ 薬害肝炎訴訟、福岡高裁で」(共同)などのニュースがありました。前者は,企業側が「審判で審判官と事件を摘発する審査官が、同じ公取委なのでかばいあう姿を見る」と批判しており,日本経団連や経済産業省が審判制度を全廃するように求めていたものに応じたもののようです。廃止されれば,直ちに裁判所で争うことになる構想のようですね。ADR(裁判外紛争解決手続)の重要性が叫ばれる中で,ちょっと意外な感じもしないではないですね。
 全体としてみると,司法試験合格者数見直しのニュースを始めとして,従来の司法改革路線とは少し違った動きも感じた一週間でした。



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