日本裁判官ネットワークブログ

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お薦めしたい本

2008年01月22日 | 
 家庭裁判所に勤務していることから,少年事件関係の本を読むことも多いのですが,最近非常に感心した本が品川裕香著「心からのごめんないさいへ」中央法規出版刊(1900円)です。 宇治少年院を中心に,少年院の最近の取組の変化とそれによる少年の成長ぶりをインタビューなどを交えて生き生きと書いています。特にその中心にある向井義広氏(当時宇治少年院首席専門官)の理論と実践を詳細に書いているのですが,いわゆる発達障害とかアスペルガー症候群などに似た傾向を示す少年について,その診断を正確にすることよりも,その少年固有の特徴をつかんでそれに対応した個別的な処遇をすすめることの方が大切というものです。というとあまり新味がないように見えますが,その成果は誠にめざましいものがあるようです。詳細は本を読んでいただきたいのですが,少年達自身の言葉でもその劇的変化が語られています。他の少年院への波及効果も大きいようです。
 このルポは,あとがきにあるように,著者自身の帰国子女としての,つらいいじめ体験からの言葉「私は,こどもたちの感じている,居場所のなさ,理解者がいない惨めさ,レッテルを貼られる怒り,そして何もできない自分に対する絶望感について,ずっと考えています。」という一節に表現された心情があふれた読み応えのあるものです。この本は後書きから読み始めるのが良いかもしれません。お時間のある方は是非ご一読下さい。「花」