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品質経営を考える その3

2019年03月07日 | ブログ
品質経営の実践

 文藝春秋2018年2月号の「大企業の品質偽装はトップの責任だ」から日本科学技術連盟会長の坂根正弘氏の言葉の引用を続ける。

 『近年、財務諸表に表れない企業の価値として環境(Environment:エネルギー使用量やCO2排出量削減など環境面への配慮)、社会(Social:ダイバーシティやワークバランスへの取り組み)、ガバナンス(Governance:取締役会のあり方や情報開示の充実など)の頭文字をとったESGが注目されるようになった。これらを重要視することは大切であるが、ただ、ガバナンスにおいて品質担当の役員を減らすようなら問題で、経営の所掌拡大で経営トップが品質に対する関心を失いつつあることを懸念している。・・・

 企業価値を最大化するために何が一番大切か。企業には利害関係者(ステークホリダー)はたくさん存在するが、企業価値をつくる主役は社員や協力企業、そして経営者であり、株主や社会はそれを評価、チェックする人。そして何より当社の製品を使っていただく顧客にとって、当社製でなくてはならぬ存在になることである。・・・顧客に評価して商品を買ってもらうから収益を上げることができ、株主への配当も、社員への給料も、原資は顧客からいただいた対価なのである。

 そのための活動にTQM(総合的品質管理)がある。経営目標を、製品・サービスの品質、人材の品質、組織の品質など、企業内の様々な質を高めていくことで達成しようという考え方に基づくものである。

 PDCAを回すことはTQMの大切な要素である。Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4段階を繰り返すことによって製品と業務を改善するサイクルである。実はPDCAの後にStandardize(標準化)があり、PDCASをまわすことになる。

 このサイクルがうまく回るようにするためには、品質の「見える化」が必要不可欠で、品質管理とは、結局のところ「見える化」と「PDCAS」にほかならない。・・・

 今後、より激しくなるグローバル競争に勝ち抜くためには、これまで日本企業が長年にわたって培ってきた品質を原点とする経営に磨きをかけていかねばならない。真の品質経営の追求こそが日本の産業競争力を高め、世界で戦う最大の武器になるのだ』。

 組織であれ、国家であれ、長年に積み上げた大きな遺産があれば、構成員がほとんど入れ替わらない時間軸の間は、愚かなトップによっても目立って凋落はしない。しかし、目に見えないところで確実に劣化は進んでゆく。国家であれ、大政党、大企業であれ、気が付いてみれば取り返しがつかないレベルまで崩壊が進んでいるものだ。ジャパンブランド、日本という国家さえ慢心は禁物である。
 


本稿は、文藝春秋2018年2月号「大企業の品質偽装はトップの責任だ」を参考に引用編集しています。



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