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2017年の展望 第5回

2017年01月13日 | ブログ
中国

 「文藝春秋2017年の論点100」に批判に応えるということで、「私はなぜAIIBの顧問になったか」という元総理の肩書を持つ人物の論述があった。

 そこに、元総理は、「日本では中国が今にも武力で尖閣諸島や南沙諸島を奪うかのような報道がなされており、中国脅威論が高まっているが、それは現政権に都合がいいからで、現政権が煽っているところがある。」「そんなことをすれば世界の非難を浴びて国益を損なうことは中国自身が一番よく知っている。だからする訳がない、そのことは米国も、実は日本政府も知っている。」(中国脅威論の虚構)という趣旨のことを述べている。

 人それぞれ考え方の違いから物事の見方も変わり、意見の異なりがあるのは当然であろうが、元総理の肩書を持った人の意見は、一人一票の一般人の言いたい放題とは異なり、正確な情報に基づく確度の高い論評でなければならないだろう。中国共産党のどなたの意見を基に、「世界の非難を浴びて国益を失うようなことはしない」と確信するのか。大丈夫、大丈夫では日本人1億2700万人の生命財産を危機に晒すことにならないのか。そもそも仮に中国共産党のトップにその気はなくとも、230万人ともいわれる人民解放軍(中国共産党の私兵)の上から下まで確実に統治できる保証は誰にできるのか。軍事学も地政学も世界の歴史さえも碌に学ばずに総理にまで上り詰めた人物の論に聞こえるだけだ。

 事実南シナ海の人工島については、フィリピンがオランダ・ハーグの仲裁裁判所に申し立てていた仲裁裁判で、フィリピンの主張が認められたが、中国はこれを全く無視し、軍事基地建設を進めている。わが国への領空領海侵犯を繰り返している。空母を太平洋に繰り出す。これらの明確な事実だけをみても、元総理の言う「中国脅威論の虚構」が十分誤った認識と取れる。

 元総理は、さらに「中国は脅威どころか、日本の高い技術を、ノウハウを求めている。日中の協力を必要としているのは中国の方である。」とまで述べているが、それは1972年の日中国交正常化以来の中国のご都合主義で、米国などから圧力があれば、わが国に秋波を送り微笑めば、取り込むことができ時間稼ぎに使えることを知っているだけの話だ。あれだけ声高に機会あるごとにわが国を誹謗する中国にあらためて貢ぐ必要があるのか。

 元総理に代表されるような、友好建前論者は中国共産党を利するだけなのだ。その走狗とさえ映る。米国のオバマ大統領も大きく誤った。強大な米国が世界の警察官を止めれば、世界はさらに無法者、無法国家が跋扈する現実がある。「太平洋は米中で分け合うに十分な広さがある」という習近平の論理を、聞いたその時点で一刀両断しなければならなかったとはよく聞く話だ。太平洋は周辺国家が国際法に則ったそれぞれの領海を有する、平和の海だ。大国間で勝手に分け合えるものではない。

 しかし、中国脅威論を語るだけで東アジアの安寧が保てるわけではない。世界の自由と民主主義を標榜する国々が、団結してこれに対抗する手段を構築しなければ、東アジア、延いては世界が平和を失う。米国がこのまま国内に閉じこもってゆけば、中国という覇権国家が大手を振るだけだ。それは世界の平和と自由にとって脅威以外の何物でもない。

 一方で、その中国も内情は厳しい。チベット、ウイグルなど他民族支配への抵抗がある。香港なども本国のやり方を快く思っていない。急速な経済活動の活発化は大きな格差を生んだ。何のための地主など富裕層を葬って成した共産革命であったか。その経済も人件費の高騰や過剰設備投資もあって陰りが見えると聞く。賄賂などの悪習根絶のやり方を巡っても指導者層に政治的路線対立もあろう。一部には民主化運動も当然にある。肥大化した軍の統治も難しかろう。現体制は、外敵によらず内部崩壊する可能性が見え始める年になろう。


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