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新、経営を考える第6回

2016年06月16日 | ブログ
拡販の秘策

 企業理念は、一般的に「世の為人の為」であり、「今後の経営方針」はというとほとんどの企業が売上げ拡大の成長志向を目指すようである。確かにそれは一面、世の為人の為になる。売れれば、追加の設備投資が必要になり、新たな雇用が生まれる可能性があるのだ。

 戦後、わが国でどんどん人口が増えていた時代は、比較的容易に拡大路線がうまくいった。全体のパイがどんどん増えていった。人口が増えるだけでなく、個人所得も確実に増加していたからである。

 ところがここに来て、人口減少時代に突入した。しかも個人所得は増えない時代。老人が増えて年金生活者が増加すれば、当然国民の平均所得は減少するのだ。もっとも子育てが終わり、家のローンも払い終えると、贅沢を考えない限り、それほど生活費は掛らないからどうにか生活はできる。ただ、病気や災害、縁者への支援などが加われば話は別で、団塊世代の貧困が問題になったりする。

 長寿は目出度いことであるが、老人に災難に遭遇した場合の抵抗力は弱い。それが分かっているから、人々は僅かな所得の中からでも貯蓄に勤しんできたし、今もそうせざるを得ない。

 要するに現在のわが国では、全体として国民の消費能力は細り、従って物は売れにくい。しかも、高度経済成長の遺産もあり、生産能力は潤沢であるからデフレとなる。資本主義社会においては、生産者側の投資を効率的に還元される為にインフレ状態が好ましいけれど、残念ながら未だデフレ状態なのだ。

 売上げ拡大を目指すマーケッティングの4つの要素、すなわち4P(Product、Price、Place、Promotion)はあまりにも有名であるが、なかでも価格(Price)戦略が問われる時代なのだ。物の価値とはそのものの機能をそのものの価格で割ったものになる。物の価値を高めるためにはその物の価格を下げることが手っとり早いのである。

 勿論、4Pのトップにくる「製品・サービス(Product)」が重要なことは言うまでもない。ものづくり企業においては、常に技術開発を怠ってはならない。楽に儲けることを考えた企業は衰退するのが常である。拡販の秘策。ひとつは製品を磨くことなのである。そして宣伝・広告による世間への告知が重要になる。

 しかし、もっとも手軽にできる一般消費者向け拡販方法は、製品はそのままに製品の価値を高める、すなわち価格を下げることにある。スーパーなどでは、昔からやっていることではあるけれど、安い目玉商品を広告し、来店顧客についでにどれだけ、通常価格の商品を買い物かごに入れさせるかが勝負なのである。思い切って、良い商品を安く提示することが拡販の秘策なのである。一般消費者向けだけでなく、当然企業向けにも有効である。

 まず、自社の製品を売ることで認知させ、所与の安心感、信頼感を消費者に与えることができれば、次々とラインナップさせた製品も比較的容易に売ることができる。

 安く売る為にやらねばならないこと。それがコストダウンなのである。コストダウンによって得られた果実を、自社とその従業員及び消費者に還元するのだ。その経営者の心根が実は企業を発展させる。



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