教育・訓練の重視
経営の品質を評価する時、その企業が「人」を大切にし、その能力を十二分に発揮できるような経営を行っているかがポイントである。
長く企業に勤め、大企業同士の合併も、外資系企業への出向も経験したが、企業業績は、その企業で働く人々の能力や成果の総和であるということに気付かされたものだ。
品質を経営の中核とする品質経営では、人間性尊重がキーワードとなり、そのためには労働諸条件、働く環境の整備と共に教育が重要であり、従業員の能力を高めることこそ企業価値を高める最良の方策である。
コマツの坂根正弘氏は、企業価値を最大化するための活動にTQM(総合的品質管理)があると述べておられた*註1)が、TQMの教科書*註2)によればTQMの考え方に17の原則がある。これらそれぞれの原則について、従業員全員に周知することができれば品質経営の達成は近いであろう。
(1)「マーケットイン」、(2)「後工程はお客様」、(3)「品質第一」、(4)「プロセス重視」、(5)「標準化」、(6)「源流管理」、(7)「PDCAサイクル」、(8)「再発防止」、(9)「未然防止」、(10)「潜在トラブルの顕在化」、(11)「QCD(品質・コスト・納期)に基づく管理」、(12)「重点指向」、(13)「事実に基づく管理」、(14)「リーダーシップ」、(15)「全員参加」、(16)「人間性尊重」、(17)「教育・訓練の重視」
企業活動における教育は、仕事のやり方を教える技能教育に留まらず、自主性と自分の意思を持って仕事に取り組む事を指導すべきだ。そのためにはこのTQM教育は最適であり、その一環としてのQCサークル活動や改善提案活動は、問題発見・解決能力の向上に有効で、自分の頭で仕事を考えることの訓練となっていた。
しかし、これらの活動にマンネリ化も見られるようになった1990年代に入り、バブルが弾けると共にISO9000、14000、IT化、ESG*註3)などへの取り組みが加速した。賃金を抑えるための能力主義、成果主義が幅を利かせ、企業の従業員教育への投資は抑えられた。
しかし、TQMの活動は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)や「見える化」もその範疇として、品質経営手法としてやはり普遍性が高い。その基本は大切にしながら新しい時代にあったやり方、業種業態に応じたやり方など活動方法の改善・改革も志向すべきであろう。
また、外資の流入で否定された戦後わが国の高度経済成長を支えた終身雇用・年功序列などの制度は、働く人々が安心して働ける環境においてこそ創造力はより発揮できるとして、評価の見直しもある。成果・能力主義への偏重は品質経営にはそぐわないと言える。
*註1)文藝春秋2018年2月号「大企業の品質偽装はトップの責任だ」(本稿「品質経営を考える」その3参照。
*註2)中條武志、山田秀両氏の編著による、日科技連出版社「TQMの基本」2006年刊
経営の品質を評価する時、その企業が「人」を大切にし、その能力を十二分に発揮できるような経営を行っているかがポイントである。
長く企業に勤め、大企業同士の合併も、外資系企業への出向も経験したが、企業業績は、その企業で働く人々の能力や成果の総和であるということに気付かされたものだ。
品質を経営の中核とする品質経営では、人間性尊重がキーワードとなり、そのためには労働諸条件、働く環境の整備と共に教育が重要であり、従業員の能力を高めることこそ企業価値を高める最良の方策である。
コマツの坂根正弘氏は、企業価値を最大化するための活動にTQM(総合的品質管理)があると述べておられた*註1)が、TQMの教科書*註2)によればTQMの考え方に17の原則がある。これらそれぞれの原則について、従業員全員に周知することができれば品質経営の達成は近いであろう。
(1)「マーケットイン」、(2)「後工程はお客様」、(3)「品質第一」、(4)「プロセス重視」、(5)「標準化」、(6)「源流管理」、(7)「PDCAサイクル」、(8)「再発防止」、(9)「未然防止」、(10)「潜在トラブルの顕在化」、(11)「QCD(品質・コスト・納期)に基づく管理」、(12)「重点指向」、(13)「事実に基づく管理」、(14)「リーダーシップ」、(15)「全員参加」、(16)「人間性尊重」、(17)「教育・訓練の重視」
企業活動における教育は、仕事のやり方を教える技能教育に留まらず、自主性と自分の意思を持って仕事に取り組む事を指導すべきだ。そのためにはこのTQM教育は最適であり、その一環としてのQCサークル活動や改善提案活動は、問題発見・解決能力の向上に有効で、自分の頭で仕事を考えることの訓練となっていた。
しかし、これらの活動にマンネリ化も見られるようになった1990年代に入り、バブルが弾けると共にISO9000、14000、IT化、ESG*註3)などへの取り組みが加速した。賃金を抑えるための能力主義、成果主義が幅を利かせ、企業の従業員教育への投資は抑えられた。
しかし、TQMの活動は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)や「見える化」もその範疇として、品質経営手法としてやはり普遍性が高い。その基本は大切にしながら新しい時代にあったやり方、業種業態に応じたやり方など活動方法の改善・改革も志向すべきであろう。
また、外資の流入で否定された戦後わが国の高度経済成長を支えた終身雇用・年功序列などの制度は、働く人々が安心して働ける環境においてこそ創造力はより発揮できるとして、評価の見直しもある。成果・能力主義への偏重は品質経営にはそぐわないと言える。
*註1)文藝春秋2018年2月号「大企業の品質偽装はトップの責任だ」(本稿「品質経営を考える」その3参照。
*註2)中條武志、山田秀両氏の編著による、日科技連出版社「TQMの基本」2006年刊