安定の中の混迷
長期政権で失業率は低く、この国の現状は安定しているように見える。大企業は内部留保を積み上げ、欧米に倣い経営者層の報酬を拡大してきた。人手不足という割に従業員の給料は上がらず、厚生年金や介護保険料、健康保険料の乗率は上がるばかりだから可処分所得はなお増えない。消費税も遂に10%まで上がる。庶民に好景気の実感はない。要は静かに密かに格差が増大してきているのだ。
大騒ぎして政治改革と小選挙区制にして20年が過ぎ、幼稚な政党が天下を取ったお陰で、その後半端な政権でも選挙に勝ち続けて鼻高々。財界は儲けのためなら悪魔とでも手を組むグローバル化信奉。トランプ米国大統領の荒療治で、苦境に立たされた中国共産党は、手のひら返しでわが国に秋波を送る。この機に乗じてこの国の政権は習近平を国賓で招くと言う。これに政治家も政治評論家も誰も異議を挟まない。
先の参院選で「れいわ新選組」が多くの票を取ったことで、次の衆院選の目玉政党に躍進した感があるが、徹底的に体が不自由で、まともに政治活動ができそうもない議員を立てて、「重度障碍者も国会に」と良い事のように言うけれど、間違った卑怯なやり方だと思う。そんな政党が衆院選で躍進するならこの国は本当に亡ぶ。
自民党の野党時代には総裁まで務めた谷垣禎一さんなど、自転車事故で大けがをされたことで車いす生活となり、周囲の復帰への期待はありながら後継に託すと政界を引退された。車いす程度であれば議員活動に問題ないと思うけれど、自身の価値観で十分な活動ができないと思えば、実績のある政治家でさえ身を引くのが国会である。
この国で国政選挙をしても何も変わらないから、投票率は遂に50%を切っている。深刻な民主政治の危機だと思うけれど、政治家や評論家から抜本的な改革案は出てこない。現状容認である。既得権者側の人間は兎に角変革は嫌なのだ。米国でさえトランプ大統領のような異端児は当初徹底的に叩かれた。低賃金で雇える移民や中国との貿易で儲けていた連中からの移民の人権と自由貿易を盾にした反発である。しかし、米国ではすでに党派を超えて中国叩きには賛同が多くなった。分かっていないのは日本の財界であり、政界である。
野党との政権交代はなくとも、自民党内で三角大福中や安竹宮のように競い合う人材数多あれば、切磋琢磨も修正も可能だが、1強などと安定に見えて、実は混迷しているのだ。「N国」だ「れいわ」だという素人が跋扈し始める。
「れいわ新選組」など全く関心がなく、選挙の際に公約もよく見ていなかったけど、批判するならその根拠は必要である。「消費税を0」は兎も角、「奨学金はチャラ」とあるけれど、返済することが前提でしかも無利子で借りたものを返さなくてよいとするなど、どこかの国の条約不履行に似て、その一事でもっても信用できない。