中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

診断士のひとり言1

2009年06月01日 | Weblog
中小企業施策のあり方

 2009年度補正予算が29日に成立したことを受けて、5月30日の日本経済新聞に、その内容が解説されていた。一部にはバラマキ混在との批判もある一方、景気の底割れを回避する効果を期待して、一定の評価を与える専門家もいる。今回の補正予算は、まさにこの未曾有の大不況対策であって、雇用対策や金融対策としての中小企業の資金繰り支援などが中心である。ただ、中小企業施策では必ずしもほんとうに必要とするところにお金が回らないとの批判は絶えない。

 当然である。危ない会社にたとえ国のお金といえど軽々に融資することはできない。新東京銀行なども、融資の焦げ付きを減らすため慎重な融資姿勢に転じている。2009年3月期決算によれば、経費68億円に対して不良債権処理に93億円掛けており、最終損益は105億円の赤字。不良債権残高は334億円にのぼるからである。(数字は、同じ日の日本経済新聞による)

 今回の補正予算の中小企業の資金繰り支援策は、各地の信用保証協会*1)による緊急保証制度の保証枠を20兆円から30兆円に拡大。これは、昨年10月の制度開始から29日までの承諾実績が10兆8,000億円で、景気回復にはなお時間がかかるとの見通しから、枠を十分に広げて景気の変動に備えるというもの。日本政策金融公庫や商工組合中央金庫による低利融資「セフティーネット貸付」も融資枠を10兆円から15兆4,000億円に増やした。すなわち、合計15兆4,000億円の枠拡大になる。今回の補正予算額は中小企業資金繰り支援に1兆5,400億円とあるから、単純に考えて、融資拡大枠の10%を焦げ付き等の費用に見込んでいるのではないか。信用保証協会は代位弁済リスクを保険で埋めており、この予算の使われ方の詳細は実はよく知らないのだけれど、今年4月20日のNHK「クローズアップ現代」“貸し渋り”は防げたのか~検証・中小企業金融支援~ で信用保証協会の焦げ付き額が2兆円、保証枠の約8%になるような報道がされていたので、ほぼ符合する話だ。

 中小企業診断士に限らないけれど、経営コンサルタントの仕事の一部に、クライアント企業が金融機関から融資を受ける手続き支援や、経営革新など国の各種中小企業施策による優遇施策を受けるための支援業務がある。しかし、融資を受けられるようにした、で終わりではなく、融資を受けて新たに行った投資から適正な利潤が得られるように経営支援することが本当の意味の中小企業支援である。公的資金が焦げ付くことは、当然税金の無駄使いになるけれど、当事者である融資を受けた企業も悲惨なことになっている筈である。

 そんなことを考えていると、公的資金の焦げ付きを少なくするために、国はコンサルタントの国家資格者である中小企業診断士をもっともっと活用すべきという思いに至る。公的業務日当3万円の中小企業診断士を年間100日、1万人規模(独立診断士はそんなに居ないと思うけれど)で動員しても、費用は年間で300億円。1兆5,000億円の2%に過ぎない。中小企業診断士による融資先や信用保証先企業のフォローを国の資金で行っても、焦げ付き等を10%減らせれば、差し引き1,200億円の節減になる。

 焦げ付きリスクを少なく見積もれるようになれば、より多くの中小企業が救済されることにも繋がるわけで、ほんとうにお金を必要とするところにもお金が回りやすくなるのではないか。このような方向性こそが真の中小企業支援施策である。

  *1)信用保証協会:中小企業が市中金融機関から融資を受ける際に、その債
務を保証することで、中小企業の資金繰りの円滑化を図る公益法人。全国に52存在する。事業者が何らかの理由で返済が困難になった場合、信用保証協会は金融機関に対してその債務を肩代わり(代位弁済)する。信用保証協会は代位弁済した額を事業者から回収する。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする