北海道新聞 06/03 16:00
弟子屈のアイヌ民俗資料館訪問
【弟子屈】アイヌ民族の暮らしや文化を伝える町立「屈斜路コタンアイヌ民俗資料館」。新緑がまぶしい季節を迎え、湖畔の散策と合わせて楽しめる同館を訪ねた。(山本忠彦)
同館は、1982年に屈斜路湖南岸の屈斜路市街にオープン。伝統的な衣装や生活民具など450点あまりを常設展示する。アイヌ民族とゆかりのある地元町民から寄贈、寄託された資料が多いという。
チセ再現
本年度から、チセ(住居)内部の再現コーナーを設けた。2畳ほどのスペースにキナ(ゴザ)を敷き、シントコ(食料や酒などを入れた容器)、エトゥヌプ(片口)、トゥキ(杯)などを配置。係員に申し出れば、一部展示品はふれることができる。地元の女性グループが作製した衣装の試着もでき、片岡佑平学芸員(30)は「アイヌ文化を少しでも身近に感じてほしい」と話す。
クマの霊送り映像
コタンの生活を支えた狩猟については、弓や矢、小刀といった道具を展示。アイヌの人々は和琴半島にエゾシカの群れを追い込んで狩りをしていたとされ、その様子をジオラマ模型で見ることができる。ヒグマの霊送りのスライド上映(約9分間)は、屈斜路湖畔で40年ほど前に行われた儀式の貴重な記録だ。外国人客のために、昨年から英語の字幕による儀式の解説を加えた。
武四郎の地図
幕末に屈斜路湖畔のコタンに滞在した探検家松浦武四郎に関する資料も並ぶ。武四郎が作った地図「東西蝦夷山川地理取調図(とうざいえぞさんせんちりとりしらべず)」の部分図を一枚につなぎあわせた複製(町民から寄託)は、縦2.4メートル、横3.6メートルと見応えがある。
同館では、かつて和琴半島にあった旧和琴博物館の資料約6500点(アイヌ関連は約300点)を所蔵する。旧和琴博物館は、釧路市立博物館の初代館長・故片岡新助さんが1956年に開設。92年の閉館後、多くの収蔵品が町に移管されたためだ。民俗資料館では一部を常設展示しており、アイヌの衣装やタマサイ(首飾り)、ニンカリ(耳飾り)といった装飾品などが目を引く。
町の元学芸員永田等さん(69)は「片岡新助さんが昭和30年ごろまで収集した資料の一部と思われる。入手場所や年代は不明だが、民具の多くは道東各地のコタンに由来するものではないか」と推測する。
釧路市出身の建築家・故毛綱毅曠(もづなきこう)さんがデザインした民俗資料館の建物自体も見どころだ。ユニークな外観を眺めながら湖畔を散策すると、近くに和琴半島が見える。エゾシカ猟のジオラマを思い出しながら、かつてのアイヌの人々の暮らしを想像するのも面白い。
<メモ>
弟子屈町屈斜路市街1の14。午前9時~午後5時。10月31日まで無休。11月から4月下旬までは冬季休館。高校生以上420円、小中学生280円。問い合わせは同館(電)015・484・2128へ
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/311492
弟子屈のアイヌ民俗資料館訪問
【弟子屈】アイヌ民族の暮らしや文化を伝える町立「屈斜路コタンアイヌ民俗資料館」。新緑がまぶしい季節を迎え、湖畔の散策と合わせて楽しめる同館を訪ねた。(山本忠彦)
同館は、1982年に屈斜路湖南岸の屈斜路市街にオープン。伝統的な衣装や生活民具など450点あまりを常設展示する。アイヌ民族とゆかりのある地元町民から寄贈、寄託された資料が多いという。
チセ再現
本年度から、チセ(住居)内部の再現コーナーを設けた。2畳ほどのスペースにキナ(ゴザ)を敷き、シントコ(食料や酒などを入れた容器)、エトゥヌプ(片口)、トゥキ(杯)などを配置。係員に申し出れば、一部展示品はふれることができる。地元の女性グループが作製した衣装の試着もでき、片岡佑平学芸員(30)は「アイヌ文化を少しでも身近に感じてほしい」と話す。
クマの霊送り映像
コタンの生活を支えた狩猟については、弓や矢、小刀といった道具を展示。アイヌの人々は和琴半島にエゾシカの群れを追い込んで狩りをしていたとされ、その様子をジオラマ模型で見ることができる。ヒグマの霊送りのスライド上映(約9分間)は、屈斜路湖畔で40年ほど前に行われた儀式の貴重な記録だ。外国人客のために、昨年から英語の字幕による儀式の解説を加えた。
武四郎の地図
幕末に屈斜路湖畔のコタンに滞在した探検家松浦武四郎に関する資料も並ぶ。武四郎が作った地図「東西蝦夷山川地理取調図(とうざいえぞさんせんちりとりしらべず)」の部分図を一枚につなぎあわせた複製(町民から寄託)は、縦2.4メートル、横3.6メートルと見応えがある。
同館では、かつて和琴半島にあった旧和琴博物館の資料約6500点(アイヌ関連は約300点)を所蔵する。旧和琴博物館は、釧路市立博物館の初代館長・故片岡新助さんが1956年に開設。92年の閉館後、多くの収蔵品が町に移管されたためだ。民俗資料館では一部を常設展示しており、アイヌの衣装やタマサイ(首飾り)、ニンカリ(耳飾り)といった装飾品などが目を引く。
町の元学芸員永田等さん(69)は「片岡新助さんが昭和30年ごろまで収集した資料の一部と思われる。入手場所や年代は不明だが、民具の多くは道東各地のコタンに由来するものではないか」と推測する。
釧路市出身の建築家・故毛綱毅曠(もづなきこう)さんがデザインした民俗資料館の建物自体も見どころだ。ユニークな外観を眺めながら湖畔を散策すると、近くに和琴半島が見える。エゾシカ猟のジオラマを思い出しながら、かつてのアイヌの人々の暮らしを想像するのも面白い。
<メモ>
弟子屈町屈斜路市街1の14。午前9時~午後5時。10月31日まで無休。11月から4月下旬までは冬季休館。高校生以上420円、小中学生280円。問い合わせは同館(電)015・484・2128へ
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/311492