ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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仮晶1

2012-12-19 11:07:50 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「仮晶1」です。

仮晶(pseudomorph)とは鉱物の結晶形が保たれた まま、中身が別の鉱物によって置き換わる事です。過去に「かぶりもの」の話題で一度書きました。鉱物は環境変化(温度・圧力・化学的状態の変化)により、その外形を保ったまま、別の鉱物になる事があります。そのような仮晶も魅力的な鉱物です。

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Las plumas,Paso del Indio,Chubut,Argentina 産 メノウ(霰石後の仮晶)

これはメノウ化した霰石後の仮晶です。上が切断面を合わせたもので下が切断面です。この切断面を見ていると何となく根尾の菊花石の模様に似ているような気がします。菊花石の成因には諸説ありますが、私はこの標本と同じように、それはメノウ化した霰石後の仮晶説だとするのが正しいような気がします。

仮晶は面白い現象です。他にも魅力的な鉱物がたくさんあります。

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ロシア Karlia地方 産 グレンドン石(Glendonite)

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キルギスタン産 グレンドン石(Glendonite)

上のイガグリのような形状の鉱物はグレンドン石(玄能石)です。この鉱物の成因はまだ謎が残っているものの、それは0℃付近の低い水温で生成されるイカ石(Ikaite)が方解石化したもののようです。上のような茶色の鉱物が風化すると下のような白い鉱物に変身するようです。仮晶のさらなる変身です。鉱物の姿もそれは仮の姿であると考えると何か意味深いものを感じてしまいます。

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Corocoro,Lapaz Bolivia 産 霰石後の自然銅

これは何となく人工的に成形された銅のように見えてしまいますが、実は霰石後の自然銅という仮晶です。規則正しい六角柱状の霰石の結晶の形も不思議ですが、その仮晶としての銅も自然に出来たものとは思えない驚きがあります。本当に自然は不思議だと思います。

仮晶はまだ続きます。

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孔雀石3

2012-12-18 12:35:42 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「孔雀石3」とします。

ただし、鉱物の孔雀石(Malachite)ではなく、水石の世界の孔雀石です。それは銅の二次鉱物であるマラカイトとは全く別の石(岩石)です。

有名なのは菊花石で有名な岐阜県根尾の下大須の赤倉山の孔雀石です。華麗な光沢・色彩・模様が特徴的で、磨かれた石には色鮮やかな孔雀が羽を広げたような美しい模様の斑紋が石面に現れます。

観賞石としての孔雀石は高価で、そこそこの値段になっており、現物が無いので写真が撮れません。私はどちらかというと原石好きという事もあり、根尾孔雀石の原石ならあります。

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根尾孔雀石

これは根尾孔雀石の板状の原石の表裏の写真です。原石のままでは分かりずらいかも知れませんが、孔雀石独特の斑紋の模様が見て取れます。

水石の世界の孔雀石は根尾以外の産地のものもあるようです。秋田五城目や群馬県のものや他にもいくつかあるようです。

そうそう、白山孔雀石もあります。今、手元に現物が無いので写真が撮れません。白山孔雀石は白山紋石のひとつで、透明度のある緑色の母岩に小形球状の紋が美しく現れます。これは岩石的には球果流紋岩なのですが、どうも根尾孔雀石とは違った種類の岩石だと思います。

白山紋石の特徴は紋が流れずにはっきりしているところで、手取川独特の石だと思います。紋石は他にも沢山種類がありますが、どうしても白山紋石に愛着が湧いてしまうのはなぜでしょうか?

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鉱物画3

2012-12-17 11:42:12 | 日記・エッセイ・コラム

鉱物画は現代でも描かれています。

すぐに思いつくのはやはり瀬戸 照さんでしょうか。瀬戸さんの写実的な細密画には魅せられます。瀬戸さんの描く石には表情があって、その石ならではの個性?というものまで感じられます。すぐれた肖像画には描かれている人の人格までもが表現されているように、瀬戸さんの描く石には石格?のようなものまで感じられます。

現代の鉱物画はまさしくアートの世界で存在します。

他にも野中ユリ、建石修志、斉藤修、まりのるうにい、鴻池朋子、いとうひろあき、等々、アートの世界で鉱物画を描かれている画家たちがいらっしゃいます。

漫画家にもますむらひろし、たむらしげる、がいらっしゃいます。

アニメーションではフランスのメビウス(ジャン・ジロー)が思いつきます。

そういえば、宮沢賢治の鉱物画はあるのでしょうか?宮沢賢治は石好きな童話作家として有名でしたが、宮沢賢治の描いた鉱物画の存在が気になりました。そして、調べてみました。

私が期待したのは宮沢賢治が描いた水晶の鉱物画です。宮沢賢治は文学者ですが、多才な人だったので、もしかすると水晶を描いていて、その絵が残っているはずだと思いました。

ところがなかなか見つかりません。そして、見つかったのはこれです。

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宮沢賢治がスケッチした「岩石の風化」

これは「宮沢賢治 科学の世界 教材絵図の研究」(1984年筑摩書房 高村毅一・宮城一男 編)という書籍に載っていたものです。これは宮沢賢治が羅須地人協会での講義に使った手製の教材絵図の一部です。農芸化学を中心とした内容だったので土壌・地質分野の絵図として残っているものです。

この本には49枚の絵図が載っていますが、テーマが農芸化学のものだけに、探している水晶の絵図はありません。

宮沢賢治の水晶の鉱物画、調べ方が足りないのか?そもそも存在しないのか?不明です。


宮沢賢治科学の世界―教材絵図の研究 (1984年)
宮沢 賢治
筑摩書房
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鉱物画2

2012-12-16 11:37:14 | 日記・エッセイ・コラム

昨日は閉店間際に小学生のお客さんが重なりました。一人は金沢の小学3年生男子で既に鉱物マニアです。もう一人は富山の小学2年生男子で化石に興味があるようです。二人はこれから同じ時間を過ごし、恐らく、今後も様々な場面で再会していくのだろうと思ってしまいました。鉱物趣味の未来は彼らが担います。昨日の出会いを憶えていてくれたら幸せです。

さて、今日は「鉱物画2」です。

「鉱物画」が気になり始め、自宅の書庫の本棚から「鉱物画」が載っている古書を探してきました。

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J.G.Heck Iconographic Encyclpædia

これは19世紀半ばあたりに描かれた博物系版画を収録した素材集のような本の中に載っていた鉱物画です。この本には絵の説明は詳しく載っておりません。この本には宇宙から植物や動物や人体解剖図、等々、森羅万象の絵が白黒のイラストで載っており、鉱物標本もしっかり載っておりました。白黒版画の鉱物画も良いものだと思いました。

鉱物画は日本にもありました。

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名古屋市東山植物園 「伊藤圭介の生涯とその業績」

これは幕末から明治期に活躍した植物学者である伊藤圭介の「日本鉱物図説雑纂」に載っている鉱物図です。平成15年に発行された生誕二百年記念の本の中にありました。鉱物画としての出来は欧米の鉱物画と比べると少し寂しい気がしてしまいます。

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西尾市岩瀬文庫 「本草図説 七」

これは愛知県西尾市にある岩瀬文庫所蔵の「本草図説 七」の中の「金石土類」の中に出ている水晶の鉱物画です。江戸時代には水晶は石英と呼ばれていた事が分かります。日本の本草学は明治期に遅れた学問であるとして終焉を迎えたのですが、学問としてではなく、歴史的なアートとして見ると鉱物画としては非常に面白いと思います。

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女子理科化学鉱物教科書 鉱物

これは明治43年に発行された教科書に載っていた水晶の鉱物画です。この教科書は名古屋の古書展で入手したものです。明治の時代には江戸時代の本草学から近代科学への飛躍があった事が分かります。この古書にはこの教科書の持ち主の書き込みがあったりして、持ち主の几帳面な性格をうかがい知る事ができます。この時代から昭和初期、さらに終戦から昭和20年代は鉱物学的には面白い時期です。鉱物標本の世界でも古典的名品が続出した時代だったと思います。

鉱物画から鉱物標本の世界の歴史を探る事も一興ありだと思いました。

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鉱物画1

2012-12-15 12:28:54 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「鉱物画1」です。

先日、オヨヨ書林せせらぎ通り店からヤフオフで鉱物の本が出ているという情報を頂き、オークションに参加しました。その結果は、教えて頂いた孔雀石の表紙の洋書は落とせませんでしたが、同じ人が出していた別のドイツ語の本を落札できました。

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「インゼル文庫No.54」(ドイツ 1930年代)

上の写真がその古書です。まず、水晶をアール・デコ調にデザインした表紙が気に入りました。そして、鉱物の博物画の出来が素晴らしかったので非常にうれしくなりました。佐々木さん、貴重な情報、ありがとうございました。

今日は「鉱物画1」です。

「鉱物画」は鉱物を描いた博物画の事です。岩絵の具で描いた絵や、貴石のサザレで描かれた宝石画や、メノウ等に見られる描かれた絵のような模様の事ではありません。

「博物画」は図鑑絵とも言われ、博物図鑑などに印刷された挿絵のことです。写真が登場する以前は観察対象の姿を詳細に記録するために絵が描かれていました。植物画や動物画に大別されますが、中には鉱物を描いた鉱物画も存在します。

鉱物画は美しい!と思います。上の写真からもお分かり頂けると思いますが、古書の印刷面ながら、その鉱物画には鉱物独特の材質感や透明感までもが描かれています。そこには絵画的なスーパーリアリズムがあり、テクニカルイラストレーションとも繋がりのある説明性や抽象化があります。

このような鉱物画を見ていると鉱物画のコレクターがいても不思議ではない、と思いました。実際、少し調べたでけでもWeb上では高価な鉱物画の世界を見つける事ができました。

私は鉱物コレクターですが、これまで意識して鉱物画を見ていませんでした。鉱物を描いた「切手」等の存在は知っていましたし、図鑑そのものが好きでしたので、鉱物画には多少の興味はあったかもしれませんが、これまでアート的な視点では捉えていませんでした。

今回、あらためて鉱物画を見直して思った事は、「これはアートである!」という事です。もしかすると、鉱物コレクションの延長線上に必然的に存在するものかも知れません。

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