今日は朝から本格的な雪になっています。今日は雪の話題にしようかと思いましたが、雪や氷の話題は昨年冬に何度か書いており、やはり予定していた「重晶石3」にします。
重晶石の形のヴァリエーションも面白いものです。
Capnic,Romania 重晶石(Barite)
これは樹氷のように見える重晶石です。白い板状結晶の集合体が面白い形をしており、肉眼で見ると、光が反射してキラキラしています。ちょっと気になるのが下の写真の上部に付いている幾つかの小さな黒い部分です。それはよく見ると黒い針状結晶が放射状・半球状に付いております。それは何かの鉱物結晶のようですが、ラベルに書かれていなかったので、何かはっきりしません。小さな輝安鉱のようにも思えますが確定できません。
Mibladen,Morocco 重晶石・白鉛鉱(Barite/Cerussite)
これは白鉛鉱の母岩の上で花咲くピンク色の重晶石の華です。キラキラする白鉛鉱の結晶の上に可憐な重晶石が付いております。この白鉛鉱は長波ブラックライトで薄黄色に発色します。重晶石と白鉛鉱の共生体は他にもあり、この標本とは逆に重晶石の母岩に白鉛鉱の結晶が付いているものもあります。この二つは相性が良いようです。
Sobernhein Pfalz,Deutshland 重晶石(Barite)
これは球状の重晶石です。やはり重晶石にも球状集合体結晶がありました。どうしても鉱物界では球状の形が好まれるようです。それは自然の摂理のようです。
重晶石の成分は硫酸バリウムなので、胃のレントゲン検査の時に飲まされるものと同じと思うと敬遠してしまいますが、同じ成分でも、その結晶の形には愛着が湧いてしまうのはどうしてなのでしょうか?
今日は「重晶石2」です。
尾小屋鉱山の重晶石は白色板状の結晶集合体でした。それにはそれなりの良さがあるとは思いますが、重晶石にも透明感のある結晶や他にも様々なヴァリエーションがあります。
Northumberland Mine,Nye Co., Nevada,U.S.A. 重晶石(Barite)
上の写真は透明感のあるブラウン色の重晶石です。結晶の形もしっかりしており、トパーズの結晶のような印象も受けます。その透明感のある結晶にはクラックも入っており、そこにはレインボーも見て取れます。そのレインボーは水晶に見られる光の干渉色とは違った質感があり、非常に美しく見えます。この標本では他にも幾つものレインボーを見る事ができます。
Capnic Romania 産 重晶石(Barite)
これも薄いブラウン色の透明感のある結晶です。斜方晶系らしいしっかりした結晶です。重晶石は比重が大きく、そのサイズの割に重く感じられます。それを持ってみると、その重量感と共に所有したいという願望がでてくる標本だと思います。
Dos de Mayo Province,Huanuco Department,Peru 重晶石(Barite)
これはバラの花のような形に結晶した板状結晶集合体です。重晶石には「砂漠のバラ」と呼ばれるものもありますが、このように透明感のあるバラの花状のものも存在します。この標本は「石の華」と言って良い標本だと思います。
今日は透明感のある重晶石を取り上げました。
明日に続きます。
今朝のWeb版北国新聞で「加賀温泉郷の地底カルデラ 直径10キロ、530万年以上前の火山跡」という記事を興味深く読みました。
その記事では「山代、片山津、山中、粟津の加賀温泉郷の直径10キロにも及ぶ巨大カルデラが存在する」とあり、金大の研究グループが「重力異常」の測定と解析で、ほぼ円状で深さ1~2.6キロのカルデラと結論付けた、とありました。「加賀温泉郷の四温泉の熱源は30万~40万年前に火山活動を始めた白山と関係ない事はわかっていた。」とも書いてありました。
そのカルデラの範囲には小松市菩提町が南端で入っています。それは小松、加賀市にまたがる巨大なサイズです。
このエリアはもともと温泉地でしたから、火山に関係しているとは思っていましたが、私はてっきり広く白山の影響に因るものと思っていましたので、その認識の変更を迫られました。もっと言うと、石的には菩提や那谷のメノウや赤瀬のオパール等の成因にも係ってくる新発見になる可能性も見えて来ます。
火山と温泉と鉱物は密接に関っています。その巨大カルデラの存在は無視できません。
巨大カルデラと言うと、阿蘇カルデラをすぐ想起します。さらに近くでは立山カルデラもあります。カルデラは火山の活動によってできた大きな凹地の事ですが、地表ではっきり分かるものもあれば、地底に埋もれているものもあります。アメリカのイエローストーンも巨大カルデラであるというTV番組を見た事があります。今回の身近な加賀温泉郷の地底カルデラの存在も非常に興味深い存在です。
カルデラは火山活動の結果できます。火山と温泉は密接な関係があります。温泉とある種の鉱物も密接な関係があります。そのいい例は立山カルデラの玉滴石だと思います。
熱水鉱床も火成鉱床の一種で、地下の熱水に因るものです。そのような環境下で出来る鉱物は数多くあります。
今回の加賀温泉郷の巨大カルデラの発見が、様々な分野にどのような影響を与えるのか?目が離せません。
今日は「重晶石1」です。
かつての尾小屋鉱山を代表する鉱物は黄銅鉱や紫水晶だと思います。それらともう一つ忘れてはならないのが、やはり重晶石だと思います。
尾小屋鉱山産の重晶石の名品は東京の国立科学博物館で見た事があります。それは櫻井コレクションのひとつでした。その写真を探しましたが見つかりません。
もうひとつの名品は尾小屋鉱山資料館に展示してある重晶石です。
石川県 小松市 尾小屋鉱山 産 重晶石(Barite)
この重晶石は花が咲いたような立派な結晶で、展示品の中でも一際存在感があります。
それらの名品と共に私が一目置いているのが十二ヶ滝の近くの「花・水・樹」で見た重晶石です。
石川県 小松市 尾小屋鉱山 産 重晶石(Barite)
この重晶石も尾小屋鉱山産らしい特徴を持つ立派な重晶石だと思います。
もしかすると、このエリアの民家等には、他にも尾小屋鉱山産の様々な鉱物標本が眠っているかも知れません。それらの中には貴重なお宝があるかも知れません。そのようなお宝の存在も気になる存在です。
現在、お店にある尾小屋鉱山産重晶石の一つはこれです。
石川県 小松市 尾小屋鉱山 産 重晶石(Barite)
標本的には普通のものです。ただ、尾小屋鉱山産の重晶石は鉱物コレクターにとっては必携の標本のひとつだと思います。
私の名古屋時代に名古屋ミネラルショーで出会ったNさんというおじいさんがおっしゃった言葉を今でもしっかり憶えています。それは私の出身地が小松である事をお話しすると、Nさんは「重晶石で有名な尾小屋鉱山がある所ですね!」とおっしゃいました。その時、 「尾小屋鉱山は重晶石なのか!」と思ってしまいましたが、その言葉は忘れられません。
そのNさんのご自宅に一度伺った事があります。Nさんはハイレベルな鉱物コレクターでした。特に方解石のコレクションには圧倒されました。多数の方解石が家の中に溢れるように飾られていました。鉱物コレクターの凄まじい情熱を感じた訪問だったと思い出します。
「重晶石」は続きます。
今日は「仮晶2」です。
ある鉱物がその外形を保ったまま他の鉱物に置き換わったものを仮晶といいますが、仮晶にもいくつかのタイプがあります。
ひとつは化学反応により異なる化学組成の鉱物に変化した置換仮晶です。
アメリカ産 黄鉄鉱後の針鉄鉱
これは黄鉄鉱らしいキューブ状の結晶が酸化して針鉄鉱に置換しております。日本の武石や升石も同じ黄鉄鉱仮晶です。
栃木県日光市足尾町庚申川 産 桜石(Cerasite)
これは桜石です。有名な京都府亀岡市桜天神の桜石ではありませんが、これも桜石です。桜石も良く知られているように雲母と緑泥石の混合物で菫青石仮晶です。母岩はホルンフェルスという変成岩の一種であり、堆積岩がマグマに接触する事による変成作用で出来たとされています。
これらの置換仮晶とは別タイプの仮晶もあります。
宮城県仙台市青葉区郷六 産 高温石英(High Quartz)
愛媛県上浮穴郡久万高原町千本峠 産 高温石英(High Quartz)
上の二つは相変化により鉱物種が変化したパラモルフ(Paramorph,Allomorph)というタイプです。高温石英後の石英になっております。水晶に代表される石英は二酸化珪素という化学組成で構成された鉱物ですが、温度と圧力の変化にともない幾つか(8形態の結晶構造があるらしい)の多形があります。高温石英は577℃(573℃?)以上の高温状態で成長した石英です。577℃(573℃?)以下では普通の石英に戻ってしまうので上の標本は高温石英の仮晶です。それは柱面の無いソロバン玉(六角錐を二つ重ねた形)の形を残したまま低温石英になっています。面白いのは紫色のものもある事です。仮晶のアメシストと言えると思います。
仮晶の面白さは変化にあります。鉱物といえども、その姿は永遠の姿ではありません。
「万物は流転する。」古代ギリシアのヘラクレイトスの言葉を思い出します。