コロナ対応は喜劇？

イタリア喜劇
冷静に考えると人類は新型コロナウィルスを巡って喜劇を演じているかもしれない。昨日９日付のウォールストリートジャーナル（ＷＳＪ）電子版は「コロナ対応失敗のイタリア、世界に与える希望」といういかにも皮肉っぽい題名の記事を掲載していた。

副題「ルール嫌いの国民と機能不全の官僚制度、それでも峠は越えたか」を見ただけで内容が読めた。ここに来てイタリアのコロナ感染がピークを打ち抑制される見通しが出て来た。こんないい加減なイタリアでもコロナ対応が出来るのなら、苦労している他の国も何とかなりそうだ。いかにも皮肉っぽく見下げた記事だと笑えた。

ところがところが、今朝のロイター電子ニュースは「イタリア、新型コロナ死者・感染者の増加ペース加速」という真反対の記事を掲載していた。「ウワッ、ナニコレ」と思ったが、事態は１日遅れで暗転したようだ。ＷＳＪが記事を投稿している間に感染者数が５日ぶりに増えたということのようだ。イタリアの仕返し？

私には多少の心当たりがあった。というのはヨーロッパのコロナ感染がロックダウン効果で落ち着き始めたと報じられ、それを受けてイタリアの人達が街に出て大騒ぎする姿を報じるニュースを見ていたからだ。昨日の今日ではＷＳＪは恥をかかされた、イタリアはバカにされても仕方なかった、本当に昔からの喜劇を見るようだった。

だが、貴重な教訓を残してくれたともいえる。コロナ感染は一旦ピークを打っても第二波・第三波が来る、油断せずに対応策を続けよということだ。日本は出だし上手く対処したと思うが、３連休で緩みが出て東京を中心に感染が急増し遂に緊急事態が宣言された。模範生の北海道でもここに来て感染者数が増え始めたという。

米大統領選
世界最悪のコロナ騒ぎで米国内が揺れている最中に、民主党のサンダース氏が大統領予備選から降りることになった。いよいよ本命のバイデン氏が実質的な民主党候補に決まり動き始めた。バイデン氏は依然として人気投票でトランプ氏を上回っているが、ポイントはサンダースの支持者がどの位投票してくれるかだろう。

ところが、本来なら１面のトップを飾るこのニュースが、トランプ大統領のコロナ発言が毎日ヘッドラインを飾り、断トツの注目度を浴びている。コロナがどんな選挙運動よりも効果的なアピールになる。非常時は余程失敗しない限り現役が優勢なのが通例だが、トランプ大統領に非常時のリーダーとしての資質が問われている。

何しろ米国は断トツでコロナ感染・死亡が発生している。もはや中国など目じゃない。ＮＹは世界最悪の感染地帯だが、今選挙したらクオモＮＹ知事は大統領になると言われる程に注目され人気がある。ＣＮＮを見れば毎日彼の演説が聞こえる、トランプより露出度が高いかも知れない。普通なら絶対あり得ないことだ。

そして日本は
いよいよ緊急事態宣言され東京など７都府県が指定された。２４時間どこかでコロナ報道を見かける。なので見る。違和感があるのはニュースバラエティ番組で、政府の対応策を巡って賛成反対で激論が交わされのをしばしば見ることだ。今回も政府と都の意見調整に手間取ったと報じられた。国民はマスコミを通じて毎日勉強している様なもので、我が家でも連日テレビを見ながら食事時に討論が始まる。

主にネット情報の影響を受ける家内は政府の対応を非難する意見が多く、私には過激と感じることがしばしばある。最も重要なのは死者を減らすことで、その視点から各国の対応を比較し優劣を論じるべきだと私は信じる。この基本となる考えがズレたままの議論はテレビ番組でも家庭討論でもかみ合わない。

昨日ドイツの優れたテスト方法を見習えと議論する昼のニュースバラエティ番組を見て、それでドイツは死者数２０００人以上になったのを日本は見習えというのか、そこまで掘り下げないとただテスト数を増やすだけになる。思わず番組に何が最も重要か明確にして議論しろとテレビ局に投稿した。勿論、返事はなかった。

一方、昨日のテレビ朝日の昼のニュースバラエティ番組で若い男性アナウンサーが、「最も重要なのは死者を減らすこと」と明確に言い切ったことだ。その瞬間に他の出演者の発言が止まった（ように聞こえた）。テレ朝にもいるんだと感心し救われた気分になった。この基本だけはテレビ局や人が変わっても守って欲しい。

コロナ対応のアプローチは一通りではないと思うが、基本がしっかりしてれば迷走し喜劇或いは悲劇になることはないと思った。日本は世界でも珍しい緩やかな対応策と言われるが、言い換えると「日本式民主主義システム」が試されていると考える。心配なのはもっと緩やかなスウェーデンで感染拡大の傾向が出ていると聞く。喜劇で終わるか、悲劇で終わるか、１か月後には緊急事態宣言後の結果が出て来る。■