米国中間選挙は大方の予想通りとなった。下院民主党が多数派となり、上院は大接戦で未だ確定していない議席が二つある。選挙の争点はイラク戦争であり、選挙民のメッセージは変化を求めた。それが具体的にどんな政策かは今後主要メディアの分析を注目してみたい。
ともあれ、今回の中間選挙で共和党選挙参謀のカール・ローブの戦略は果たして機能したのか個人的に非常に興味がある。彼の基本方針は争点を曖昧にして選挙区の個別事情にフォーカスする選挙戦術だったと私は思う。
大統領の支持率が30%台を低迷している事を考えれば、そんな状態で上院を接戦に持ち込めたのはダメージ・コントロールが機能したとも言えなくない。しかし、同時に実施された人工中絶やゲイ・マリッジ禁止法案では非常に保守的な投票結果だったことを考えるとやはり敗北したというべきだろう。
特に民主党の予備選で敗れた元民主党の大物リーバーマン氏が独立党で出馬し、共和党支持層の票を得て当選したのが非常に印象的だ。しかし今後も民主党と同一会派で活動するという。つまり民意は保守優勢だけどブッシュ大統領だけはダメ(ABB:Anybody But Bush)であった。
今回、中間選挙は実質ブッシュ大統領の信任投票となり、中間選挙としては非常に高い投票率だった。ABBの思いが強い民主党支持層の投票率が特に高かったと思われる。しかし米国民は何故2004年大統領選で同じ結論を出せなかったのだろうか。私は天邪鬼的にタカ派が現実主義に化けるのを期待したが、そうは思えない。出口調査で得られた民意の詳しい分析が出始めたので、その結果を待ちたい。
もう一つ、注目したいのが選挙戦で、又、新たにITが活用された。前回CRM(顧客管理ソフト)が使われたと報告したが、今回共和党が中西部の数州でテレマーケッティング技術を使ったと報じられている。コンピュータを使って自動的に世論調査や商品の売込みをするソフトウエアを利用したらしい。
顧客から電話するきっかけは異なるが、身近な例で航空券を購入する場合コンピュータが発するガイダンスに従って目的のチケットを買う手順と似ている。最初に特定の政策に反対か賛成かイエス・ノーを答え、答えに応じて相手が納得するテーマを選びながら候補者の宣伝に誘導していく。
テレマーケティングを実施したオハイオ州の政治団体の2人はP&Gのマーケティング部門の退職者だそうだ。運動期間中200万世帯に電話をし、20万-30万ドルの費用ですんだという。果たして効果があったのかどうかまだ評価が定まっていないが、今後日本でもコンピュータが選挙に益々利用されるのではないかと思う。■