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米国中間選挙のメッセージ

2006-11-15 22:47:38 | 国際・政治

中間選挙のメッセージは何であったか、米国の選挙民は何を考えて投票したのか、選挙後の報道を注目して来た。その中で目に付いたのは中道が戻ってきたという記事が主要メディアの記事に散見されたことだ。

2004年ブッシュは浮動票よりも共和党の主力である宗教右派に確実に投票させる戦略をとり、民主党候補と基本的な価値観で激しく対立した。その結果、「分断されたアメリカ」といわれたように両陣営の対立が深まる一方、中道派の厚みがなくなり影響力がなくなったといわれた。カール・ローブの戦略がまんまと当たり価値観(Value)が争点になり主教右派の支持が決め手になった。

今回、最終的に勝負を決めたのは右でも左でもない中道派の票が共和党から民主党に流れた為といわれている。ならば、この中道派の人達は何を考えて投票したか。イラク戦争が争点といわれたが、出口調査では直前の暴露された汚職とセックス・スキャンダルが最大関心事であったという。

Pew Research Centerの出口調査を基にした分析は米国選挙民の政治志向がそれほど変わった訳ではないという見方で、全てはデータに基づくものなので説得力がある。詳細は下記を参照いただきたいが、この後要点を紹介する。

http://pewresearch.org/obdeck/?ObDeckID=88

民主・共和支持者が夫々に投票した比率は9割あり以前の選挙とそう変わらなかった。しかし独立派(共和・民主以外の政党支持)の民主党候補への投票が14%増加した。切り口を変えて保守・リベラルで分類するとそのどちらでもない中庸派の民主党候補への投票が前回比10%増加と際立って増えたという。つまり独立派、言い換えると中道の票が勝負を決めた。

その他の特徴として、クリントン時代に比べ中間選挙は大統領に関係ないと答えた選挙民が60%もいたのに、今回39%に減ったのが大統領の信任投票といわれた所以である。一方で共和・民主・独立支持の投票比率は363826で、この差は前回より民主党支持の投票率が高かったのが理由だという。

皮肉なのは、2004年はキリスト教右派の手堅い投票(私は公明党的と称した)が勝敗を決したが、今回は教会に全くもしくは滅多に行かない人達の票が2004年より19-23%多く民主に流れたのが決定的だった。つまり信心深い人達は民主・共和どちらにせよ投票行動に変化がなかった。

総合すると2大政党の支持率は拮抗しており新たな政治的地殻変動が起こっている訳ではない。全米で投票された絶対数(人気投票)は民主・共和ほぼ変わらない。それにも係わらず、先の日本の総選挙と同じく小選挙区効果で民主党圧勝に繋がった。正直、意外な感じだ。

米国民はイラク戦争が泥沼に入りブッシュ政権に不満を持っているが、彼らが保守からリベラルに変わっていると思わないほうが良いというメッセージだ。今度の結果でヒラリーが次の大統領選で有利になったと考えないほうがいいという根拠もこの辺にある。

ということで今回の選挙のメッセージは、政治家に対し「エーカゲンニセー」とダメだししたもので、米国民の政党支持傾向に変化はなかった、其処まで心変わりはしてないということだ。戦争には飽き飽きした、イデオロギーじゃない、身を正して何とかしてくれということのようだ。

しかし、その結果として政治は動く。最新号のタイムによるとイラク戦争などの外交政策はパパ・ブッシュ周辺にいたベーカー等のリアリスト(現実主義者)の手に渡った。キッシンジャーの名前まで出てきている。イラク戦争はイラン・シリアまで巻き込んだ分かりにくい外交駆け引き(多分日本は苦手)に転換する可能性が極めて高い。しかしテロにそれが通じるかどうかは又別の話。■

コメント
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