さすらい人の独り言

山登り、日々の独り言。
「新潟からの山旅」別館
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東京西洋美術館 常設展

2008年11月25日 | 雑感
今回の東京行きでは、デジカメには、暗い所にも対応できる35mmレンズをつけて行きました。

現在、国立西洋美術館では、デンマークの画家「ハンマースホイ」の展覧会を行っていますが、展覧会を二つ続けてみてきたので、これはパスする予定でした。

美術館の前庭には、ロダンの彫刻が並んでいます。

ロダン作「カレーの市民」

中世百年戦争の時代、イギリス国王が1347年に英仏海峡を越えて同市を包囲した際、ウスターシュは、他の5人の地位の高いカレー市民と共に人質としてイギリス国王の陣営に赴き、カレー市と市民の生命を救ったというエピソードに基づく彫刻です。

首に縄を巻いて裸足で、苦悩に満ちた顔つきで市の門を出て行く群像を表現したため、英雄的な像を期待していたカレー市当局は拒否し、序幕式が行われたのは、完成後7年後だったとのことです。



ロダン作「考える人」

「地獄の門」の上部に飾られて、思索にふけるダンテを表したものですが、人類共通の普遍的な人間像となっています。



ロダン作「地獄の門」

新しく建設される予定のパリの装飾美術館のための入口の門扉の制作を依頼されたことが製作のきっかけになっています。フィレンツェ洗礼堂のギベルティの「天国の門」にならって、こちらは「地獄の門」。「考える人」を含め、この「地獄の門」の一部になるはずの多くの独立した彫刻が作られていきます。

結局、ロダンの生前には鋳造されずに終わりました。1920年代になって漸く鋳造が実現し、最近の鋳造を含め現在世界に七つのブロンズが存在するとのことです。パリのロダン美術館のものは見ましたが、後の5つはどこにあるのだろう。



ロダン作「アダム」

「地獄の門」の左右に次の「エヴァ」と対で並べられる予定だったそうです。



ロダン作「エヴァ」

人類の苦悩を表現しているようです。

モデルが妊娠していることが判って、頭部と両足は未完成のままになってしまいましたが、ブールデルが石膏像に基づく大理石像を完成させ、このブロンズ像は、それをもとに作成されたとのこと。楽園追放の際に、神は罰として、女性には出産の苦しみを与えたというので、エピソード的には、妊婦でもあっているような気もしますが。



ブールデル作「弓を引くヘラクレス」

ロダンの彫刻が人間の肉体を忠実に再現しようとしたのに対し、ブールデルの彫刻は、筋肉を最大限までみなぎらせてエネルギーを発散させようとしていますね。

これらの彫刻は、昔から見慣れたものですが、久しぶりの再会でした。

以前は、大気汚染のために緑青が浮き出ていたのですが、きれいになっていました。錆び止めの表面加工を施したのでしょうかね。

予定していたのは前庭までだったのですが、常設展示はやっているのかなと受付をのぞくと、本日無料とありました。

受付からチケットをもらって、常設展示室へ入りました。

国立西洋美術館の常設展示室は、毎月第2・4土曜日と文化の日は無料とのことです。

また、常設展示室では、三脚・ストロボを使用しなければ、写真撮影可能のため、このような美術館での撮影の練習を行うことができました。

以下は、常設展示物の中から目についたものです。



第一室には、彫刻が並べられていました。照明は少し暗めのため、感度もISO800まであげての撮影です。

ロダン作「接吻」

ダンテの神曲中の悲恋に基づいていますが、元の話とは離れて、清純で熱烈な愛の勝利を謳っています。



ロダン作「うずくまる女」

これも「地獄の門」の一部を構成する彫刻です。



ロダン作「オルフェウス」

妻の死によって、絶望にうちふるえて竪琴をかきならすオルフェウスを表現しています。



ロダン作「説教する洗礼者ヨハネ」



カルポー作「ナポリの漁師の少年」

微笑みながら貝の響きに耳を澄ませている11歳の漁師の少年を表現しているとのこと。この作家については、詳しいことは知りません。



さて、二階にあがると、絵画が並んでいます。14世紀あたりの古い時代の絵が並んでいますが、やはり親しみやすいのは印象派を中心とした近代の絵ですね。

ルノワール作「アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)」

ドラクロワの「アルジェの女たち」の影響下に書かれた絵で、初期の代表作です。この後に、ルノアールは、印象派の色彩に富んだ絵を描くようになっていきます。



ルノワール作「帽子の女」

柔らかな質感で色彩に富んだ絵は、これぞルノワールといったものですね。



モネ「舟遊び」

戸外の光の光の中にたたずむ婦人像というのもモネの絵の主要な題材になっています。



モネ「睡蓮」

モネといえば睡蓮。睡蓮を描いた多くの作品の中でも、最も優れたものの一つだそうです。



ロセッティ作「愛の杯」

ロセッティは、19世紀後半のイギリスの画家で、ラファエルを芸術の頂点とするアカデミーに反対して、ルネサンス初期の画家に戻ろうとする運動を唱えて、「ラファエル前派」を名乗りました。

ラファエル前派には、文学的指向が強く、ダンテの神曲や、アーサー王伝説、神話、聖書などを主題に取り上げています。

この「愛の杯」は、戦に行ってしまった騎士のために乾杯しているものと考えられるようです。



モロー作「ピエタ」

死せるキリストを抱く悲しみのマリアを描いています。

モローは、象徴派に属するフランスの画家です。小さめの画が多いですが、精密に書き込まれた画の世界に引き込まれます。

この他にも、クルベやゴーガンの絵もあって、楽しめました。

撮影条件も、ホワイトバランスをいじくる必要があったかとも考えますが、記念撮影と思えばこれで良いのかもしれませんね。

常設展示は、無料開放日でなくとも、特別展と比べれば料金は安いのにもかかわらず、入館者が少ないのは不思議です。西洋美術館の他に、国立博物館や近代美術館には、珠玉の作品が並んでいますので、機会を作ってでも出かける価値があります。
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