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煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

ドラキュラ、脳を救う

2011-05-13 13:26:58 | 健康・病気

現在、脳梗塞急性期で最も有効な治療薬は
t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)。
ただし、この治療には時間の制約があり、
発症3時間以内に治療を開始する必要がある。
この時間を越えて治療を行うと、
高率に出血を起こす可能性が高いためだ。
また t-PA 自体にも神経毒性があると考えられている。
これに対して
発症9時間まで安全に治療ができると期待され、
それ自体も神経毒性を持たない血栓溶解薬が
開発中である。
その薬とは、デスモテプラーゼ。
日本でも昨年から臨床試験が行われている。
このデスモテプラーゼ、もともと
吸血コウモリの唾液中に含まれる酵素である。

5月9日付 Time.com

Vampire Bat Saliva Could Lead to Stroke Treatment 吸血コウモリの唾液が脳梗塞治療につながる

Vampirebat

By Meredith Melnick
 吸血コウモリは彼らの標的からできるだけ血液を得るために良く知られた裏ワザを持っている。それはそれらの唾液中に含まれるデスモテプラーゼ(DSPA)と呼ばれる酵素で、それによって標的の血液を固まりにくくし、サラサラ流れるようにする効果がある。私たちすべてにとってよいニュースは、脳梗塞を生じた脳の血栓を溶解させるのにもこのDSPAが使える可能性があるということだ。
 毎年米国民を襲う79万5千人の脳卒中のうち約87%は虚血性脳卒中(脳梗塞)であることが知られている。これは脳内の血管を閉塞する血栓によって生じ、十分な血流と酸素の運搬が阻害され、脳組織が死滅する。結果的に、麻痺、認知障害、あるいは言語障害などの後遺症を生ずる。(血管の破綻から出血を生ずる別のタイプの脳卒中は出血性脳卒中と呼ばれ、こちらははるかに高い死亡率を伴う)
 虚血性脳卒中に関して言うと、時間がきわめて重要である。組織プラスミノーゲン・アクチベータ(tPA)と呼ばれるタイプの血栓溶解薬は脳梗塞発症から3時間以内に投与しなければならない。その時間を過ぎると有害事象(脳損傷のリスク)がその有用性を上回る。多くの脳卒中の患者は十分迅速に治療を受けられないため、tPA はほんの一握りの患者でしか用いられていない。
 そんな状況下、吸血コウモリの唾液中の DSPA が登場してきた。米国心臓協会誌であるStroke 誌への報告では、DSPAの効果と tPA の組み換え型の効果とを比較したところ、DSPA が同じように有効であっただけでなく、治療までに時間が経っている患者にも有効である可能性があったという。

Scientific American の記事
これまでの報告で、DSPA は、フィブリン(血栓の枠組みを作る不溶性たんぱく)にさらされると、現在 FDA (米国食品医薬品局)が承認している血栓溶解薬 rt-PA より活性が高いことが示されている。脳細胞へのDSPA の効果を調べるために、オーストラリアの Monash University の Robert L Medcalf らはマウスの脳に DSPA と rt-PA の両者を注入した。DSPA はフィブリンを標的としたが、脳細胞障害を促進することが知られている二つの脳の受容体には作用しなかったことがわかった。そのため、DSPA は脳梗塞発症から9時間まで副作用なく投与できる可能性がこの研究者らによって示された。

 DSPA は2003年に初めて発見されたが、今、医師らはようやくそれからの薬剤を開発する段階に入ったところである(それはこう呼ばれる―Draculin 『ドラキュリン』!マジである)。2006年に Ohio State University Medical Center で行われたこの薬剤の最初の人体での臨床研究によって、安全であり、被験者に十分な耐容性が示された。同センターで現在行われている新たな全国的試験によって、この薬剤が脳梗塞患者で何らかの臨床的有益性を示すかどうかが究明されることになる。
 「Time is brain(時は脳なり)」と、この研究を代表する Ohio State University の Michel Torbey 医師は声明で述べている。「私たちは、脳梗塞発症後、患者がどんな時間に訪れてきても、彼らに治療の選択肢を与えたいと考えています。残念ながら、彼らが訪れるまでにかかった時間が長いほど有用な選択肢は少なくなってしまいます。なぜなら脳の中で障害がすでに起こってしまっているからです」

吸血コウモリが
獲物の血を飲みやすく、また消化しやすくするために、
その唾液中に血が固まらないようにする成分が
含まれていると考えられる。
数年前から脳梗塞の治療薬としての開発が期待されて
いたのだが、ようやく日の目を見ることになるのだろうか?

コメント
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