東京公演の千秋楽となる10月12日、
世田谷パブリックシアターに
舞台『オ―デュボンの祈り』を観に行った。
原作は同題名の伊坂幸太郎氏のデビュー小説。
脚本:和田憲明、演出:ラサール石井、主演:吉沢悠。
吉沢演じる主人公・伊藤はコンビニ強盗に失敗。
と、ある男に導かれ
仙台の沖合にある見知らぬ島 “荻島” にたどりついた。
江戸時代より外界から孤立していたというこの島の住人は
奇妙な人間ばかりだった。
嘘しか言わない画家や、島の法律として殺人を許された男、
さらには、人語を話し未来のことがわかる案山子・優午など…。
伊藤が島にやって来た翌日、
案山子の優午は何者かの手によってバラバラにされ、
頭を持ち去られて死んでいた。
未来がわかっていたはずの優午はなぜむざむざ殺されたのか?
そして昔から島に伝わる言い伝え、
『この島には、大切なものが最初から欠けている』。
一体この島に欠けているものは何なのか?
伊藤はこれらの謎を解き明かそうと島中を奔走する。
舞台では大がかりな装置による場面転換はなく、
刻々と変化する場面や回想が
工夫を凝らした演出で表現されてゆく。
畳みかけるようなセリフの応酬と効果音が続き、
劇中にBGMは一切使われない。
複雑な人物像やつながりの理解はやや困難である。
正味2時間30分と長い本作品には、
シュールな雰囲気がちりばめられている。
ただ全体的に物語の展開はドラマ性に欠けるため、
小林隆氏の癒し声でのセリフが続く場面では
うかつにも睡魔に襲われてしまった(おいおいっ!)。
そして問題の “大切なもの” もついに劇終盤で
明らかとされることとなるのだが、
そのオチには、あ、そうなのふーん、てな感じ。とはいえ、
全体的には独特な雰囲気がよく表現されていたようだ。
なお、殺された案山子役は筒井道隆だったのだが、
この人、この舞台でも、テレビ同様、一貫して抑揚のない
(得意の)棒読み風セリフ回しだった。
ま、なんといっても案山子なので、それなりに
味が出せてると言えるのかも。
テレビで多彩な役を演じ分けてきた吉沢悠は、
本作品でも膨大なセリフで主役をしっかりとこなしていた。
彼は今クールのドラマ、キムタクの『南極大陸』にも
出演予定とのことである。
今後大いに期待できる俳優の一人だろう。
今回の舞台、一つ注文があるとすれば、
世田谷パブリックシアターは客席数が約600と多く、
もう少し小さい劇場の方が舞台と観客の一体感が
得られて良かったのではないかと思う。
10月19日以降、札幌、大阪、仙台で公演があるそうなので、
機会のある方には是非ご覧いただきたい。
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