MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

辛く(から・つら)くても快感?

2011-09-12 16:32:27 | 科学

MrK はピリ辛系に特に弱い。
ひと口食べただけで動悸はするわ、
汗は大量に噴き出すわ…
刺激物に対する感受性が異常に高いのだろうが、
それはどこからくるものなのか。
どうやら種々の刺激物に対して特異的に反応する
レセプターとイオンチャネルが
細胞膜に存在しているらしいのである。
その機能に個人差があるのかも知れない。

9月6日付 Washington Post 電子版

How your harsh reaction to horseradish may lead to new pain-managing medicines どのようにしてセイヨウワサビ(horseradish)に対する強烈な反応が新たな疼痛管理医学につながるのか

Horseradish

チリ・ペパーの刺激は進化した防御メカニズムである。

By Ivan Amato
 今度みなさんがセイヨウワサビ(horseradish)を体験されるとき―それは、ご存知のように、ガブッと食べた大きすぎたひと塊の植物の辛味によって頭全体が津波に襲われたようになり、涙がちょちょ切れてヒャーとなる瞬間―この苦悶の瞬間が、一部の生物学者によって、まさしく天然型催涙ガスへの短時間の曝露に他ならないと表現されていることを考えてみてほしい。
 セイヨウワサビの主要な化学性刺激物である allyl isothiocyanate(イソチオシアン酸アリル)は、口に火がついたようになるチリ・ペパーに含まれる化学物質であり催涙ガスの作用物質や唐辛子催涙スプレーに含まれる capsaicin(カプサイシン)同様、ひとの口、のど、鼻、副鼻腔、顔、目の同じ知覚細胞の同じクラスの化学的受容体を刺激する。
 ここ数年、科学者たちはこれらの感覚の根底にある生物学的機序を明らかにしてきた。彼らの発見は新たな疼痛管理医学につながるだけでなく、タバコにメントールを加えることで常習となりやすくなるかどうかを理解する手がかりとなると彼らは言う。
 しかし私たちがそこに至る前に、一体私たちはどのようにして、またなぜそのような化学物質を知ることになったのかについて考察する必要がある。とどのつまりはこうである:進化が私たち人間を含めた動物に、環境中の有害な化学物質に対する重要な防御手段を与えた。一方、逃げる能力がないことからずる賢くならざるを得なかった植物は、少なくとも植物の種の散布に手を貸さない動物に食べられることを防ぐ目的で化学的防御を発展させた。
 例えばあなたがセイヨウワサビの植物で、小さな虫があなたの根の重要な部分を食べ始めたとする。あなたは自分を守るために逃げも隠れもできない。しかし、もしあなたが賢い植物なら、ひと齧りすると、その齧られたひと口分の根の中に含まれるイソチオシアン酸アリルによって威圧的な『食べるべからず』命令を出す酵素反応がもたらされることに力を入れることだろう。それは、ピリ辛のマスタード・オイルに含まれるのと同じ舌をヒリヒリさせる成分である。
 セイヨウワサビ、マスタード、わさび、種々のコショウ、ニンニク、たまねぎ、あるいはその他の野菜が、これらの化学物質の防御を進化させてきたが、これは一方で動物の側も、被害を受けたり死に至ったりしうる環境中の化学物質を感知し対応する能力を発達させてきたことがその理由の一部である。これは私たちの『身体からそれを遠ざける』反応を説明している:つまり、即時性のくしゃみ、気道の収縮遮断、咳の発作、流涙などである。進化と関連して、植物は、自身の種を撒き散らす成功率を高めるためにこれらの反応をうまく利用してきた。チリ・ペパーは、自分のカプサイシンによって、チリの種をその排泄物を介して上手に撒き散らしてくれる特定の鳥たちから拒絶されないよう巧妙な手段をとっていることを覚えておいていただきたい。
 ピリピリするような食べ物、催涙ガス、そしてさらにうがい薬にいたるまで、Transient Receptor Potential channels(TRP チャネル)と呼ばれる小さな孔のゲートを広げることで快感帯を刺激することも同じように行われるのである。それらはとりわけ、口、鼻、のど、目そして顔のすべての感覚細胞のいたるところに存在する。これらの小孔が開くと細胞は脳に信号を送る傾向を示すが、これによって脳は、くしゃみ、咳、流涙あるいはその他の化学物質を排除するような行動を起こさせる。
 「痛みを感じるところにはすべて TRP チャネルが存在します」と Yale School of Medicine の薬理学教授 Sven-Eric Jordt 氏はいう。
 このことから次世代の鎮痛薬を開発しようとしている人たちにとってこれらの受容体は魅力的なものとなっている。
 Jordt 氏は炎症、関節炎あるいはその他の慢性疼痛疾患において TRP チャネルがどのような役割を果たしているのかを研究してきた。
 彼はまた、喫煙との関連についても調べている。
 「メントールは喉やその他の部位において痛みや煙に対する刺激性の反応を抑制することを私たちは発見しています」と、Jordt 氏は言う。「メントールは人がより多く煙を吸うことを可能にするため、人がタバコの常習になる手助けをしていることになっているのかもしれません」
 彼によると2年前に法制化された Family Smoking Prevention and Control Act(家族の喫煙予防とタバコ規制法)は食品医薬品局に風味をつけたタバコを禁止する権限を与えたが、少なくとも当分の間、免除されているのだという。メントールと TRP チャネルとの間の相互作用についての科学的理解が不完全なままであることがその理由の一部である。
 喘息と TRPA1 と呼ばれるレセプターチャネルとの間に関係があることも Jordt 氏は推測している。
 「TRPA1 チャネルに欠損があるマウスは喘息にならないのです」と彼は言い、さらにこれらの特異的なチャネルは新しい喘息の治療の魅力的なターゲットとなっていると付け加えた。
 「15年前は TRP チャネルが何であるかわかっていませんでした」とノースカロライナ州 Winston-Salem にある Wake Forest University の感覚生理学者 Wayne Silver 氏は言う。「今、私たちは至るところでそれを見つけています」
 これらのレセプターは私たちの日常でもよく知られるものとなっている。
 「私の息子は毎朝うがい薬を使っており、毎朝くしゃみをします」と、Silver 氏は実例を挙げる。
 チモールやメチルサリチル酸などの刺激性のうがい薬は、約30ある既知の TRP チャネルのうち、TRPA1 と TRPV1 の2つを開くように作用する。一方、ユーカリプトールやメントールなどその他のうがい薬の成分は TRPM8 チャネルを開く作用があるが、このチャネルは低温に対しても反応する。このようにして、これらの “クールな” 化学物質は、より刺激性の強い活性成分がうがい効果を発揮するまでの時間を稼いでいる。
 「私たちの体内の感覚はこれらのレセプターに依るところが大きく、快感や痛みに影響を及ぼします」 St. Louis にある Washington University Pain Center の生化学者 Gina Story 氏はそのように言う。彼女らはこれらのレセプターの分布の性差について研究している。彼女の知見によって、いずれはなぜ『男と女はサーモスタットをめぐって言い争うのか』が説明されることになるだろう。

『唐辛子やワサビなどの刺激物で痛みを感じる』
『ピリ辛を食べた直後にはぬるいお茶でも熱く感じる』
『ドライアイスや氷を触ると痛みを感じる』など、
日常感覚にまつわるこれらの体験は
感覚機能に関与する
TRP(Transient Receptor Potential)チャネルファミリーが
関係しているようである。
このチャネルが感覚細胞に存在することが初めて
発見されたのは1997年のことである。
TRP スーパーファミリーは哺乳類では6つのサブファミリーを
構成し、それぞれ複雑な機能を持っているという。
感覚だけでなく、細胞の分化・増殖、炎症などにも
役割がある他、同性愛やハゲなどにも関わっている可能性が
示唆されている。
記事中にあるように新たな鎮痛薬の開発のターゲットにも
なっている。
TRP チャネル機能の一層の解明が期待されるところである。

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