結婚は人生の墓場。
結婚生活は忍耐の連続。
結婚式が過ぎればロマンスは衰退の一途…
そして高まる浮気の危機。
結婚式のスピーチでは口が裂けても言えない
ネガティブに語られる結婚生活の一側面。
しかし、何十年たっても新鮮で刺激的な
パートナーシップを維持しているカップルが
存在するのもまた事実。
そんな結婚生活の成否も
科学的根拠に裏打ちされているとしたら…
The Science of a Happy Marriage 幸せな結婚の科学
By Tara Parker-Pope
世の中の男と女…誘惑をはねつける輩もいれば、パートナーを裏切る輩もいるのはなぜなのか?
この答えを見出そうと、コミットメント(男女の結びつき、詳細は Mr K が後記 )の科学に焦点を当てた研究が増加している。結婚の安定性に影響を及ぼすとみられる生物学的要因から、パートナー以外の人とたわむれた後の心理的反応に至るまで、科学者によって様々な研究が行われている。
彼らの知見によれば、生来誘惑に抵抗性の強い人が存在する一方で、男女は自分たちの関係を守りコミットメントの気持ちを高めるよう鍛えることもできる可能性があるという。
遺伝的因子が果たしてコミットメントや夫婦間の安定性に影響を及ぼすかどうかという疑問が最近の研究によって提起されている。スウェーデンのカロリンスカ研究所の生物学者、Hasse Walum 氏は、bonding hormone(結びつけホルモン)と言われる脳の化学物質 vasopressin(バソプレシン)の調節に関係する遺伝子について詳しく調べる目的で 552組の双生児を対象に研究した。
全体的に、この遺伝子に変異を持っている男性は結婚する頻度が低い傾向にあり、結婚している場合でも深刻な結婚上の問題やふさわしくない妻を持っている頻度が高かった。その遺伝子変異の2つのコピーを持っている男性ではその約3分の1が過去一年以内に重大な関係の危機を経験しており、この割合は変異を持っていない男性の2倍であった。
この遺伝形質はしばしば “fidelity gene(貞節遺伝子)”と呼ばれているが、Walum 氏はそれは誤った名称だと言う。彼の研究は貞節にではなく夫婦間の安定性に焦点を当てているからである。「男性における将来の行動の予測にこの情報を用いるのは困難です」と、彼は語る。現在、彼らは今回の知見の再現性に取り組んでおり、女性においても同様の調査を行っているところである。
このようにコミットメントに影響を及ぼす遺伝的な違いが存在する可能性がある一方、脳は誘惑に耐えるよう鍛えることができる可能性を示唆する研究もある。
モントリオールの McGill University の心理学者 John Lydon 氏が主導する一連のユニークな研究では、まじめな交際をしている人が誘惑を前にしてどのように反応するかを見ている。ある研究では、強く結ばれている既婚の男女に一連の写真を用いて異性の人たちの魅力を評価してもらった。当然のことながら、彼らは一般的に魅力的とみなされている人たちを最も高く評価した。
その後、彼らは同じような写真を見せられ、その人間が彼らに会うことに興味を持っていると聞かされた。そういった状況になると、参加者たちは一貫してその写真を最初の時より悪く評価した。
関係を脅かしかねない人に誘惑されようとする時、彼らは無意識に自分にこう言い聞かせていたと思われる。「そんなに素敵ではない」と。「より強く結ばれている人ほど、二人の関係を脅かすよその人を魅力的に感じないのです」と、Lydon 博士は言う。
しかし、この McGill 大学の研究では浮気の危機への反応の仕方に性差があることも示されている。300人の異性愛の男女を対象にした研究で、魅力的と感じる人とのいちゃつきの会話を想像して浮気心を持った人が半数に認められた。他方、残りの半数の人は単に通常の出会いを想像した。
その後で、被験者たちは LO_AL や THR__T などの穴埋め問題を完成するよう求められた。
被験者たちには知らされていないが、この単語はコミットメントについての潜在意識を明らかにする心理学的検査になっている。(同様の単語完成パズルは偏見や既成概念についての潜在意識を調べるのに用いられる)
通常の出会いを想像していた被験者では一定の傾向は見られなかった。しかし、いちゃついた空想を心に抱いた人たちでは男女間で違いが見られた。このグループでは、男性はあまり意味のない単語、LOCAL (局所?)と THROAT (喉?)でこのパズルを完成させる傾向が見られた。しかし、いちゃつきを想像していた女性では、LOYAL(誠実な) と THREAT (脅威)を選択する傾向がはるかに強かった。このことは、予行練習によってコミットメントに対する意識下の懸念が誘導されたことを示唆している。 もちろん、このことから必ずしも現実の世界での行動が予測されるわけではない。しかし、この明確な反応の差から、女性には、男女関係の脅威について注意を喚起する一種の早期警報システムのようなものが備わっている可能性があると、研究者たちは考えている。
別の McGill 大学の研究ではそのような脅威に対する反応の仕方の男女間での違いを明らかにしている。一つの研究では、被験者と待機室でいちゃつき相手として(無名の?)魅力的な俳優や女優が動員された。その後で被験者たちは自身の男女関係について、特に、時間に遅れるとか、電話をかけ忘れるなど、パートナーの良からぬ行動に対してどのように反応するかを評価する質問を受けた。
きっちりいちゃついていた男性はパートナーの良からぬ行動に対し寛容さが小さく、魅力的な女優が男性のコミットメントを一時的に壊しかけたことを示唆していた。しかし、いちゃついた女性の方はより寛大であり、男性を弁護する傾向にあった。これは、男女関係について論じる場合、あらかじめ浮気心を持ったことがその関係に保護的に反応する引き金になったことを示唆する。
「この研究の男性たちもコミットメントを持っていたとは思いますが、女性の方は一種の危機管理のプランを持っていたのでしょう。すなわち魅力的な代替者が警報ベルを鳴らすのです」と、Lydon 博士は言う。「女性は気づかぬうちにそれを脅威としてコード化するのです。これは男性には見られないことです」
問題は、果たして人は誘惑に抵抗するよう訓練できるのか、ということだ。別の研究では、デートをするような恋愛関係にある男子学生に、ガールフレンドがいない週末に魅力的な女性と出会うことを想像するよう促した。その後、この男子学生の一部には次の文章を完成してもらい危機管理のプランを作ってもらった。『When she approaches me, I will ____________ to protect my relationship.』(彼女が私に言い寄ってきたら、自分の交際関係を守るために私は_____するだろう)
誘惑者として行動してもらうのに本物の女性を連れてくることはできないため、4つの部屋のうち2つに魅力的な女性のサブリミナル・イメージを盛り込んだバーチャル・リアリティ・ゲームを作成した。誘惑への抵抗を準備していた男性は一定時間の25%、その部屋に自然に惹きつけられたが、それ以外の男性では、その数字は62%だった。
とはいえ、男女のカップルをつなぎとめているのは愛や貞節の感情ではないかもしれない。むしろ、皆さんの恋愛関係のレベルは、どの程度パートナーがあなたの生活を高めてくれ、皆さんの視野を拡げてくれるかに依存しているのかもしれない。この概念は Stony Brook University の心理学・人間関係学の研究者 Arthur Aron 氏が “self-expansion”(自己拡大)と呼んでいるものである。
この質を測るためには、カップルは一連の質問を受ける必要がある:あなたのパートナーはどれほど多く刺激的な経験の源を与えてくれますか?パートナーを知ることがどれほどあなたをよりよい人間に成長させてくれますか?あなたのパートナーはどれほどあなた自身の可能性を広げる手段となってくれますか?
この Stony Brook 大の研究者らは自己拡大を刺激する行動を用いて実験を行った。一部のカップルには日常的なありふれた課題が与えられる一方、別の一部のカップルはお互いを結びつけられ、マット上を這って、頭で発泡スチロール製の円柱を押すという意味のない運動に参加してもらった。この実験は操作されており、カップルたちは最初の2回の試みでは時間制限内に成功しないが、3度目にはすれすれでやり遂げ、多くの称賛を受けるように仕組まれていた。
カップルたちはこの実験の前後で男女関係のテストを受けた。共同で達成を経験しなかった人たちに比べ、挑戦的な活動に参加した人たちは、愛情度も二人の関係の満足度もともにより増大していたのである。
今、研究者たちは、自己拡大が男女関係にどの程度影響を及ぼすかを調べる一連の研究に取りかかっている。未知の場所を探索したり新しいことにトライしたるするカップルは自己拡大感が引き出され、コミットメントのレベルが高まるだろうと理論づけている。
「他人が自分の一部になることで、人間関係が始まり、それによって自分が拡げられてゆくのです」と、Aron 博士は言う。「恋に落ちた人が一晩中起きていて話をするのはそのためですし、実際にそれによって興奮を感ずるのです。やりがいがあり、刺激的なことに一緒に取り組むことで、カップルはその関係を取り戻すことができると私たちは考えています」
『コミットメント』とは簡単に訳せば『関わり合い』という
ことになるのであろうが、この単語はもっと意味の深い言葉で、
『自分の心の方向を決め、目標に対して自分のすべてを
捧げようとする決意』。
これを男女の関係で用いるなら、
『自分の強い意思で相手と全力で関わろうと心に
決めること』。
日本人には簡単には理解できない言葉であるが、
『当初(機械的に?)デートを重ねていた時と違って
相手のことを限りなくいとおしく思えてきたその状態』
と言えばわかりやすいだろうか?(違うだろ!)
この記事によれば、男性ではこのコミットメントの
維持力が女性に比べて弱いようで。
女性には危機管理能力があるが、男性には乏しいらしい。
このように男女間のコミットメントを保つには
女性に負うところが大きいのかもしれないが
男性には種々の誘惑に打ち勝つ精神力と
共に生きるという強い決意を持つことが
求められると思うのだ。