昨年末から新年にかけて救急患者の
受け入れ拒否の報道が連続した。
昨年12月25日には89歳の女性が29病院から
受け入れを拒否され、1時間43分後にようやく
病院に搬送されたものの、出血性ショックで死亡した。
年が明けた1月2日、大阪府で5病院から受け入れを
断られた交通外傷の49歳の男性が、
約1時間後に搬入された病院で、その約2時間後に
大動脈損傷で死亡。
1月6日、宮城県の重度熱傷の88才の女性が
受け入れ要請を4病院で5回断られ、
1時間後に病院に収容されたが、1月8日に死亡した。
これら受け入れを断った病院にはそれぞれに事情があり、
単なる診療拒否ではなかったのだろう。
安易に『たらい回し』と表現すべきでない、との意見にも
一理ある。
そもそも問題点は現在のわが国の救急医療システムにあると
考えられるからだ。
救急患者の立て込みがちな、この寒い季節には
いつでもどこでも、こういうことが起こってもおかしくない。
重症救急患者を扱う三次救急施設は最後の砦であり、
本来、救急患者の受け入れを拒むことは許されないはずである。
しかし、そのような病院に重症患者が集中した場合、
臨機応変に対応できるだけの、
マンパワーが備わっているかといわれると、
現実には、はなはだ淋しいものがある。
それだけ大きな病院なら、一人や二人の重症患者に対応中でも、
さらに別のスタッフを緊急招集すれば
新たな重症患者にも応じることができるだろう、と
世間の人は考えるかもしれない。
しかし、そのような病院も日中は通常の診療をこなさなければ
ならないのである。
際限なく非番スタッフまで動員すれば、疲弊を招き、
さらに勤務医の立ち去りを助長するだろう。
もう一つの問題は救急患者の選別(トリアージ)にあると
考えられる。
三次救急施設は本来、重症患者だけを診るべきであり、
そのトリアージは救急隊が行うのではなく、
理想的には、まず搬送された二次救急施設で行われるべきだ。
しかし、このトリアージのための受け入れすら断られるのは
前述の、三次救急施設の受け入れ拒否の可能性による。
ひとたび、二次救急施設に搬入されてしまうと、
その患者に集中治療が必要と判断された場合、
今度は転送先をさがす負担はその施設にのしかかる。
もし、受け入れ先が見つからないまま重症化したり
不幸な転帰をとった場合、その責任が追求されることもあるだろう。
冒頭の3例は、おそらくそのような理由もあって
医療機関がトリアージを回避した結果、
救急隊の立ち往生が生じたと考えられる。
トリアージ、搬送先探しを救急隊にすべて負わせるべきでは
ないのは明らかだ。しかし、より確かなネットワークを持っているのは
行政の一端にある救急隊の方だろう。
もう何年も前から言われていることだが、
各医療機関と救急隊・消防本部間の一層の連携強化を図り、
一体となってトリアージを行うべきだ。
と同時に、設備、マンパワーを備えた三次救急施設の充実を
図らなければ、日本の救急医療の崩壊は避けられないと
思うのだ。(まじめな話題で、すみまっしぇん)