ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

猛暑の劔岳:長治郎の頭へ戻る

2018年09月28日 00時22分17秒 | Weblog
ザレた斜面を逆方向に進むが、一歩一歩がかなり厳しい。
「ズズズー」という音を立てながら細かな岩が足元から崩れ落ちて行く。
思わず何度か倒れそうになりながら来たルートを戻った。


見覚えのあるピンポイントが幾つかあり、そのポイントを頼りに進む。
しかし、ところどころ記憶があやふやであり、「はて、どっちだったかな・・・」と立ち止まっては確認しながらの帰路であった。

体は中から火照っている。
キンキンに冷えた冷水をがぶ飲みするか、服を着たままでプールの中に飛び込んでしまいたい思いだった。

大きな残雪の塊のポイントへと来た。

「おぉ~気持ちいい~!」
写真では唇だけを雪面に付けているが、頬や両腕などを押しつけて真夏の雪の冷たさに歓喜していた。(ホントに気持ちよかった!)

再びザレたポイントのトラバースとなった。

足幅は十分にあるがここは落ちたらアウトだ。
慎重に進む。
そして一つ気になったのが落石だった。
当然自然落石であるが、ここで岩が落ちてきたら避けきれるものではない。
避けようとするならば体のバランスを失い、滑落してしまうだろう。
時々顔を上げ「来るなよ」と祈る思いで進んだ。


ここは来すぎてしまったポイントで、去年もこのポイントで立ち往生してしまった。
しかし、ここは少し戻って上を目指せばよいことは分かっていた。(焦らない焦らない)

長治郎のコルまではまだある。
分かってはいたが、ここから僅かに見ることができる遠くの山脈(やまなみ)に見とれてしまった。
立山方面だけではなく、北アルプス南部の峰々が見渡すことができたのだ。


(「俺は何て山奥まで来たんだろう。」)
バリエーションルートは確かに怖い。
何が起きても不思議ではない怖さがある。
だが、この山深さをどう表現すればいいのか。
ほぼ3000メートル近い標高で、周囲はすべて岩稜群に囲まれている。
何という山奥なんだと実感できる。

などと感傷に浸っている場合ではない。
とにかく先ずはコルへ戻らねば。

フィックススリングのあるポイントまで来た。
ここまで来ればコルまでほんの少しだ。


ここは掌で圧をかけて登ったところだ。
だからここの段差を下る時には、右側にはホールドポイントが無い。

AM君、慎重に段差を下った。
よっしゃ、無事通過だ。

なんとかコルへと下り、一息ついた。
「あまり思い出したくないなぁ」と言いながら裏剱の岩壁を見上げた。
そう、あの落石を起こしてしまったポイントだ。
神経質にはなりたくはなかったが、自分にとってはそれほど嫌な出来事だった。

コルから振り返り、通ってきたルートを振り返った。

赤の実線を往復したのだが、去年とはかなり違うルートとなった。
それがバリエーションルートであることの証だが、もし来年の夏、三度ここを訪れたとしても、今日のルートで越えることができるのかどうか、何の確証もない。
一つ言えることは、長治郎の頭を越えるための候補ルートが一つ増えたということだ。
決して無駄ではない。