穂高岳山荘を後にし、ザイテングラードを下り始めた。
「まぁ2時間もあればだから、4時くらいにはテン場かな。」
「そうですね。ゆっくり行きましょう。」
またあの苦いニュースを思い出した。
途中何度も「どのポイントで滑落したのだろうか・・・」と考えてしまった。
こんな場所で人が簡単に亡くなってしまうことの現実。
それが登山の怖さでもある。
あまり考えすぎないようにはしたが、「ここか・・・このあたりか・・・」と、つい思い出してしまった。
景色の良いところで「ハイ、ポーズ」
下るに連れ岩肌以外のものが目立つようになってきた。
這松の緑。
そして朱や黄色の紅葉だった。
「そっか、今は紅葉の時季だったんだっけ・・・」
「岩ばかり見ていたような気がしますね。すっかり忘れてましたよ(笑)」
そう、涸沢はまだ紅葉の季節なのだ。
自分たちが出発する数日前に腹ペコ山男さんも涸沢へと足を運んだようで、まだ何とか見頃であるという現地情報を得ていた。
今回の山行だって、ジャンに登ることだけが目的ではない。
せっかくこの時季に涸沢まで行くからには紅葉を愛でることも大きな目的なのだ。
下山ルートは「パノラマロード」を下った。
すると見事な朱色が目に入ってきた。
「いやぁ~鮮やかだね!」
「ここに来てやっと緊張がほぐれたような気がします。」
AM君の言う通りだ。
ザイテンの登りから始まり、奥穂高岳へ。
そこからは全く気が抜けないジャンの往復。
そしてまたザイテン。
休憩時間も含めれば7時間近くも岩ばかり見ていたことになる。
近づいて見てみると、葉はややチリチリ状態になりかけている。
紅葉もあと数日で終わってしまうのではないだろうか。
ギリギリ間に合ったようだ。
朱、黄、緑が入り交じっている。
標高を下げるに連れ紅葉ポイントが増えてきた。
ふり返るとまた違った鮮やかさを見せてくれた。
涸沢小屋周辺の紅葉。
今朝はあの真っ只中を突っ切るようにして登っていったのだが、まだ暗く残念ながら愛でるには至らなかった。
「いいもんだね、自然は。時間があればここで珈琲もいいかもね。」
「手つかずの自然は贅沢ですよね。」
お互い危険から解放されたという安堵感があった。
時々立ち止まりこの贅沢な景色を、忘れてしまっていた色を堪能しながら歩いた。
テン場に帰ってきた。
「おめでとう! 頑張ったね。」
そう言ってガッチリと握手を交わした。
「来年の夏は劔だよ。」
「ホントですか? 自分なんかが大丈夫ですか?」
「大丈夫。間違いなく登れるよ。それに俺が一緒だし。」
これは決して下駄を履かせたお世辞でもなく、自分自身の驕りでもない。
今日の彼の動きやメンタル状態を見ての判断だった。
それに自分自身も何としても彼を登らせてあげたいという思いがあった。
今夜はヘッデンを灯しながらテントの外で夕食を食べることにした。
準備だけを済ませ、18時に活動開始。
明日は上高地まで戻るだけだから少々夜更かししても問題はないだろう。
体を伸ばしてちょっとだけ寝ることにした。
登山靴を脱いだ時の開放感は格別だった。
「まぁ2時間もあればだから、4時くらいにはテン場かな。」
「そうですね。ゆっくり行きましょう。」
またあの苦いニュースを思い出した。
途中何度も「どのポイントで滑落したのだろうか・・・」と考えてしまった。
こんな場所で人が簡単に亡くなってしまうことの現実。
それが登山の怖さでもある。
あまり考えすぎないようにはしたが、「ここか・・・このあたりか・・・」と、つい思い出してしまった。
景色の良いところで「ハイ、ポーズ」
下るに連れ岩肌以外のものが目立つようになってきた。
這松の緑。
そして朱や黄色の紅葉だった。
「そっか、今は紅葉の時季だったんだっけ・・・」
「岩ばかり見ていたような気がしますね。すっかり忘れてましたよ(笑)」
そう、涸沢はまだ紅葉の季節なのだ。
自分たちが出発する数日前に腹ペコ山男さんも涸沢へと足を運んだようで、まだ何とか見頃であるという現地情報を得ていた。
今回の山行だって、ジャンに登ることだけが目的ではない。
せっかくこの時季に涸沢まで行くからには紅葉を愛でることも大きな目的なのだ。
下山ルートは「パノラマロード」を下った。
すると見事な朱色が目に入ってきた。
「いやぁ~鮮やかだね!」
「ここに来てやっと緊張がほぐれたような気がします。」
AM君の言う通りだ。
ザイテンの登りから始まり、奥穂高岳へ。
そこからは全く気が抜けないジャンの往復。
そしてまたザイテン。
休憩時間も含めれば7時間近くも岩ばかり見ていたことになる。
近づいて見てみると、葉はややチリチリ状態になりかけている。
紅葉もあと数日で終わってしまうのではないだろうか。
ギリギリ間に合ったようだ。
朱、黄、緑が入り交じっている。
標高を下げるに連れ紅葉ポイントが増えてきた。
ふり返るとまた違った鮮やかさを見せてくれた。
涸沢小屋周辺の紅葉。
今朝はあの真っ只中を突っ切るようにして登っていったのだが、まだ暗く残念ながら愛でるには至らなかった。
「いいもんだね、自然は。時間があればここで珈琲もいいかもね。」
「手つかずの自然は贅沢ですよね。」
お互い危険から解放されたという安堵感があった。
時々立ち止まりこの贅沢な景色を、忘れてしまっていた色を堪能しながら歩いた。
テン場に帰ってきた。
「おめでとう! 頑張ったね。」
そう言ってガッチリと握手を交わした。
「来年の夏は劔だよ。」
「ホントですか? 自分なんかが大丈夫ですか?」
「大丈夫。間違いなく登れるよ。それに俺が一緒だし。」
これは決して下駄を履かせたお世辞でもなく、自分自身の驕りでもない。
今日の彼の動きやメンタル状態を見ての判断だった。
それに自分自身も何としても彼を登らせてあげたいという思いがあった。
今夜はヘッデンを灯しながらテントの外で夕食を食べることにした。
準備だけを済ませ、18時に活動開始。
明日は上高地まで戻るだけだから少々夜更かししても問題はないだろう。
体を伸ばしてちょっとだけ寝ることにした。
登山靴を脱いだ時の開放感は格別だった。