職場仲間が体調不良となり、ソロで「燕岳」へ登ってきた。
一緒に登れなかったのは残念だが、病だけに致し方ない。
今回はテント泊のため、ザックは60リットルの大型。
シュラフも冬季用の「♯0」を持参。
水は山荘で購入できるものの、ザックの重さはそれなりとなった。
10月20日(土)。
21時までの勤務が終了し、22時頃出発した。
登山口の「中房温泉」に到着したのが午前2時頃だった。
車中泊をし、目覚めたのが6時40分。
「おっと、寝過ごした!」
あわてて朝食を腹に詰め込み、軽くストレッチをして7時40分スタート。
正直言ってスタート時はかなりモチベーションが低かった。
目標はあくまでも燕岳。
そして山頂でドリップ珈琲を飲むことなのだが、登れども登れども樹林帯の中。
お手頃な北アルプスと聞いてはいたが、どうにもテンションが上がってくれない。
それでも、途中で知り合った若いご夫婦と仲良くなり、各休憩ポイントで会話が弾んだ。
「合戦小屋」には11時に到着。
ここまで休憩を含めて3時間20分ほど。
この重さのザックでほぼルートタイム通りだからまずまずだろうか。
先に到着していたご夫婦から「一緒に撮りませんか?」と誘われ、ハイポーズ!
おかげで元気をいただいた。感謝感謝!
ここからまた樹林帯か・・・と思いきや、20分ほど登ったところで急に前方の視界が開けた。
「あっ、あれって・・・槍だ! 槍じゃないか!」
今まで低迷していたテンションが一気にヒートアップ。
まったくもっていい加減なものだ(笑)。
登れば登るほどに槍の全容が見えてくる。
「東鎌尾根」までも目視できるようになってきた。
途中ですれ違った人が「山頂からはもっと凄い景色が見られますよ。頑張ってくださいね。」と励まされ、更に足取りは軽くなった。
合戦小屋で30分も休憩してしまったが、燕山荘には12時40分に到着。
すぐにテント泊の受付をしようとしたのだが、ここから見える絶景にしばし言葉を失った。
大天井、槍、穂高連峰の表銀座はもちろん、水晶、鷲羽の裏銀座、燕の東手には後立山連峰まで、180°北アルプスの峰々、稜線群を見渡すことができた。
そしておそらくは燕の陰になっているだけで、間違いなく「劔岳」も見えているはずだ。
何故なんだろう、自然と涙が出てしまった。
俺ってこんなに涙腺が脆かっただろうか・・・。
目の前に広がる山脈に感動しただけではない。
他に理由があるはずなのだが、その訳が自分でもわからなかった。
ただごく自然と涙が流れてしまった。
まったくもって恥ずかしい限りだ。
受付を済ませ、まずは昼食をと予定していたのだが、食事をするのも惜しいほどの絶景だった。
ベンチでお湯を沸かし珈琲を飲んで終わり。
それで十分過ぎるほど満足してしまった。
今日のテント場はガラガラ状態。
「お好きな場所に張ってください。」と言われていたので、できるだけ風を防いでくれて、できるだけ水平な場所を選んだ。
結果として「燕岳」を一望できる場所となった。
写真に写っている左手が自分のテントで、右手は二人組の方のテント。
その二人組の方は、「大天井岳」に行っており留守だったが、煙草がきっかけでいろいろと話をすることができた。
夕食まであと数時間の予定だったが3時のおやつ代わりにカップ麺を食べた。
本来は夜食用にと思い持参してきたものなのだが、午後の3時ともなればいい加減空腹に勝てなかった。
「美味い!」
山頂で食べるラーメンて、どうしてこうも美味いんだろう♪
何度食べても食べ飽きることがない(笑)。
夕方の17時頃には、西に日が沈み始めた。
方角としては水晶や三俣蓮華などの雲ノ平方面だろう。
オレンジ色に染まった空と、次第にシルエットになって行く裏銀座の山脈は美しかった。
しかし、いつまでも感動ばかりしてはいられない。
日が落ちたとたんに急激に気温が下がり始めたのだ。
分かっていたこととは言え、手がかじかむほどの寒さとなった。
急ぎテントに戻り夕食を作り始めた。
今夜のメニューは「洋風中華ごった煮」。
自分でも料理名の意味がよく分からないのだが、材料は以下の通り。
*人参
*じゃがいも
*ウィンナーソーセージ
*水餃子
*中華スープ(お湯を注ぐだけのやつ)
*固形コンソメ
いたって簡単なのだが、かじかむ手でナイフを用い具材を切る時だけは慎重だ。
こんなところで指を切るなど、余計な怪我だけは避けたい。
FDのごはんもちょうどいい頃。
調理時間は25分ほどで終了。
外で食べてもよかったのだが、風が強くなってきておりテント内でディナーとした。
単に中華味だけでもいいのだが、コンソメを入れることで味に「コク」が出た。
まぁ、それだけのことで「洋風」と呼んだだけなのだが(笑)。
具材もたくさん入れたので「おかず兼スープ」と言ったところだろうか。
体が芯から温まってきた。
ちょっと量を多めに作ってしまったこともあり、とにかく腹が一杯。
後片付けも終わる頃には、外はすっかり暗闇。
テントから顔を出し、空を見上げれば満天の星空。
山荘に行き酒を買ってきたが、眼下には「安曇野市」の夜景が広がっていた。
とにかく寒い。
風もあるし、19時の段階でおそらくは既に氷点下となっているだろう。
テントの中は比較的暖かかった。
もちろんそれなりに防寒対策をしてきている。
シュラフは初登場の「モンベルULSSダウンハガー♯0」、シュラフカバー、フリース、ダウンジャケット、アルパイン用ソックス、ネックウォーマー、イヤーウォーマー、手袋3種、そして貼るタイプのカイロ。
これに酒が入れば体内からも暖まることができようってもの。
シュラフに入り缶酎ハイを一本・・・二本・・・で終わり。
時刻は20時を過ぎている。
そろそろ寝ようかと思ったのだが、どうにも足先だけが寒かった。
シュラフ内にカイロを貼り、これでホッカホッカだよ♪
フライシートはかなりピンと張ったつもりだったが、2700メートルでの強い夜風にばたついている音がする。
それもいつしか心地よい音となり眠りについた。