ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

ラストジャンダルム「下るよりは楽だが・・・」

2021年06月29日 22時17分00秒 | Weblog
難易度が高い危険な岩稜地帯を通過する場合、一般的には下るよりも登る方が難しさは少ないと言われている。
理由は多々あるが、自分自身でもその通りだと体感している。
身体の向き(上りの場合、フェイスインの体勢が多い)、ホールド・スタンスポイントの見つけやすさなどが主な理由だろうか。

さて、次はN君が馬の背を登る。
コース取りは自分の動きを見てある程度は分かっているだろうから、あとは三点支持の基本を守りゆっくりと確実に進めばよい。


取り付き口。
ナイフリッジに至るまでは特に問題はないだろう。


核心部に近づく。
上から写真を撮っている自分が立っている場所も、実を言えばかなり危険な場所だ。(笑)


さぁここからは尚のこと慎重にゆっくりと。


核心部の側壁に来た。
足(靴)が置ける幅は10㎝も無い。両腕を有効に使って登る。


そうそう、三点支持を守れば大丈夫!


そこに手がかかればあとは足を上げてナイフリッジに戻るだけ。
もう少しだ。

やっと少しだけ落ち着けるポイントに到着。
ちょっと笑顔のN君。

「どうだった、馬の背の登りは?」
「最初がいきなり下りだったので、それよりは落ち着いて越せました。でもやっぱり凄いところですね。」

ここからは奥穂高岳までまぁまぁ安心して歩けるリッジ。
景色を堪能しながら進むことができる。
この先にも危険地帯はあるのだが、今までと比較すればたいしたところではない。
そういった気持ちのゆとりが出たせいか、思い出したように急に右脇腹の痛みを感じ始めた。
「もう大丈夫。気の緩みさへ持たなければあとは楽だ。できるだけ痛みが出ないような動きをして下山しよう。」
そう決めた。

下山時は奥穂の山頂で小休止だけを取り、穂高岳山荘へ向かうことにした。
時刻はとっくに正午を過ぎてしまっている。
お互いいい加減腹が空いているし、風のない場所でのんびりと座って昼食を食べたかった。

ラストジャンダルム「馬の背を堪能する」

2021年06月22日 20時52分12秒 | Weblog
約二ヶ月もの間ほったらかしとなっていたブログ。
理由は多々あるのだが、決して怠けていただけではない。
それでも中にはアップを楽しみにしてくれていた方もいると思いたいので、この場をかりてお詫び申し上げます。
大変申し訳ありませんでした。

一つ追加として、「いいね」「応援」「続き希望」などのアイコンが何故かクリックできなくなってしまっている。
せっかく自分のブログにクリックしていただいても、していただいた方のブログにクリックできない状態。
更にはコメントを頂いてもそれに対する返信がコメントできない状態。
理由が分からない。
単に環境が古いせいなのか、それともなんらなの故障なのか・・・。
それらのこと、併せてお詫び申し上げます。

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初めてこの難関ルートを縦走したのは26歳の時。
膝の手術を終え、抜糸して一週間程で挑んだ覚えがある。
あまりにも若かりし頃で、たいした経験もないのに勢いだけでベテランについて行っただけの縦走だった。
何度かこのルートを縦走することで経験を積み、「怖さ」は「慣れ」へと変わっていった。
もちろん良い意味での「慣れ」である。
そして今日、いよいよラストの馬の背となった。
一挙手一投足じっくりとこの難区間を味わおう。


馬の背取り付き口。
昔から記されている「ウマノセ」の白いペンキ文字が目に入った。
「これを見るのも最後か・・・な」
何故かふと笑みがこぼれた。


ナイフリッジへと取り付く。
怖さは微塵もなかった。
このナイフリッジが愛おしくさへ感じた。


馬の背核心部。
今将にど真ん中にいる。
手が岩肌に触れる度にその感触を確かめた。
嬉しさと淋しさとか混沌としていた。


最大の難所へと取り付く。
難所であるはずなのにここでも怖さは全く無かった。
「これで最後、今日が最後。だから楽しく、そして集中。」
これだけは出発前から決めていたことだった。


「○○さ~ん」と呼ばれ振り向いてポーズ。
これも良き思い出かな。


ここだけは絶対に手を離してはだめ。
即滑落となるピンポイント。
いや、だからこそ堪能したい。
今ここにいるということを体感したいと切に願った。


馬の背の難所区間、ほぼ終了。
ちょっとだけ振り返ってみた。
「ふぅ~」と小さくため息が出たが、安堵感からのため息ではなかった。
「終わってしまったなぁ」とでも言えばよいのか、ゆっくりと堪能したつもりであったが、あっという間の馬の背で、どこか「ほんとうにこれで終わってしまったのか・・・」とも思った。


奥穂高岳が見えるポイントまで来た。

感傷に浸っている余裕はない。
この後N君が控えている。
気持ちを切り換え、アドバイスと写真撮影の開始だ。