深夜に寒さで目が覚めてしまった。
時計を見ると12時を少しまわった頃だった。
「さて、もう少し着込んで寝るか。それともついでに用を足してしまおうか・・・」
朝まではもたないと思い意を決してシュラフから抜け出したが、途端に更なる寒さに襲われた。
重い鉄の扉を開けたが、当然のことながら雪が吹き込んでくる。
「ズボッ ギュー」
寝る前に入り口付近の雪かきをしたとはいえ、積雪は軽く膝上まできていた。
明け方にはどれくらい積もってしまっているのだろうか。
不安な思いであったが、その思いをかき消すほど用を足したくて仕方がなかった。
スッキリしたところで小屋の周囲を歩いてみた。
参った!
完全に腰まで埋もれてしまっている。
「これ、絶対にまずいぞ。朝になって小屋から出られなくなる。」
震える体であったが、再度入り口周辺だけ除雪をした。
おかげで逆に体が暖まった。
朝起きるのは8時を予定している。
無理に早く起きることはない。
何故なら、この積雪ではオジカ沢の頭へも茂倉岳方面へも足を伸ばすことはおそらく無理であろうという推測によるものだ。
ついでながら、もし他の登山者が登ってくれていればラッセルが楽になるだろうという他人任せの考えもあった。
「他人任せ」については少々後ろめたさはあったが、早く出発してしまうと下山も早過ぎてしまうということになる。
焦らず10頃の小屋発とした。
まだまだゆっくりと眠れるなぁという安心感、そして除雪をしたという二重の安心感もあってか、ぐっすりと眠ることができた。
8時丁度に起床し、真っ先に入り口を確認した。
「ドッヒャ~! なんじゃこれは・・・」
人一人が何とか通れる幅はあったが、除雪をしておいた部分の両サイドには自分の背丈以上の雪が積もっていた。
「危なかったなぁ・・・。除雪しておいて正解だったね。」
これにはお互い苦笑いをするしかなかった。
外に出て山頂方面を確認した。
小屋のあたりではあまり感じることのない強風が見て取れた。
天候は問題ないが、積雪と風に悩まされそうな一日となりそうだった。
朝食を済ませメインの大型ザックを小屋にデポし、アタックザックのみでスタートした。
既に数人の登山者が先行しており、その分少しは楽になりそうだったが現実はきつかった。
持参しているギアはアイゼン、ピッケル、ストックのみで、ワカンは持ってこなかった。
トレースはあるものの膝上まで埋もれながらのいきなりの急登攀となった。
ほんの少しルートから外れればご覧の通りで、すっぽりと腰まで埋もれてしまう。
このまま山頂まで同じような状況であればかなり厳しい登攀となることは明らかだった。
「天気は文句なしなんだけどなぁ・・・」
大汗をかきながら登り続けたが、このようなラッセルは幸いにそう長くはなかった。
標高を稼ぐにつれ、埋もれるのは腰から膝上、そして膝くらいまでとなり足取りもかなり楽になってくれた。
おそらくは風のおかげであろうと思う。
標高が高くなるほど風が強くなり、その強風のせいで雪が飛ばされてしまったのだろう。
見上げればトレースの浅さがそれを証明していた。
「ここまで来ればもう大丈夫だろう。でも山頂から先の一ノ倉と茂倉へのルートがどうなっているのかはわからないなぁ。登ってから確認するしかないね。」
できることなら茂倉岳方面まで行ってみたい。
その思いは強くあるが、安全第一とするならば決して無理をしてはならない。
「行きたい・・・でもなぁ・・・」
そんなことをずっと考えながら登り続けていると、やっと肩の小屋が見えてきた。
このポイントから肩の小屋までは直線距離にすれば100mもないが、昨日のホワイトアウトの時は前方の左ルートではなく、右側の僅かに高くなっている部分の真下辺りでどうにもならなくなってしまった。
一日が過ぎ、今のルート上の雪面は比較的固いが、あの時はブリザードにも近い状況だったし、下山を決めたことは間違いではないと思っている。
雪山の恐ろしさと素晴らしさは、それなりには分かっているつもりだ。
問題は「それなりに」ということであり、すべてを知っている訳ではない。
もちろん無理にすべてを体験する必要など無く、やばいと思ったなら即諦めて下山すれば良いだけのこと。
それが長く安全に楽しむ最大のコツだろう。
時計を見ると12時を少しまわった頃だった。
「さて、もう少し着込んで寝るか。それともついでに用を足してしまおうか・・・」
朝まではもたないと思い意を決してシュラフから抜け出したが、途端に更なる寒さに襲われた。
重い鉄の扉を開けたが、当然のことながら雪が吹き込んでくる。
「ズボッ ギュー」
寝る前に入り口付近の雪かきをしたとはいえ、積雪は軽く膝上まできていた。
明け方にはどれくらい積もってしまっているのだろうか。
不安な思いであったが、その思いをかき消すほど用を足したくて仕方がなかった。
スッキリしたところで小屋の周囲を歩いてみた。
参った!
完全に腰まで埋もれてしまっている。
「これ、絶対にまずいぞ。朝になって小屋から出られなくなる。」
震える体であったが、再度入り口周辺だけ除雪をした。
おかげで逆に体が暖まった。
朝起きるのは8時を予定している。
無理に早く起きることはない。
何故なら、この積雪ではオジカ沢の頭へも茂倉岳方面へも足を伸ばすことはおそらく無理であろうという推測によるものだ。
ついでながら、もし他の登山者が登ってくれていればラッセルが楽になるだろうという他人任せの考えもあった。
「他人任せ」については少々後ろめたさはあったが、早く出発してしまうと下山も早過ぎてしまうということになる。
焦らず10頃の小屋発とした。
まだまだゆっくりと眠れるなぁという安心感、そして除雪をしたという二重の安心感もあってか、ぐっすりと眠ることができた。
8時丁度に起床し、真っ先に入り口を確認した。
「ドッヒャ~! なんじゃこれは・・・」
人一人が何とか通れる幅はあったが、除雪をしておいた部分の両サイドには自分の背丈以上の雪が積もっていた。
「危なかったなぁ・・・。除雪しておいて正解だったね。」
これにはお互い苦笑いをするしかなかった。
外に出て山頂方面を確認した。
小屋のあたりではあまり感じることのない強風が見て取れた。
天候は問題ないが、積雪と風に悩まされそうな一日となりそうだった。
朝食を済ませメインの大型ザックを小屋にデポし、アタックザックのみでスタートした。
既に数人の登山者が先行しており、その分少しは楽になりそうだったが現実はきつかった。
持参しているギアはアイゼン、ピッケル、ストックのみで、ワカンは持ってこなかった。
トレースはあるものの膝上まで埋もれながらのいきなりの急登攀となった。
ほんの少しルートから外れればご覧の通りで、すっぽりと腰まで埋もれてしまう。
このまま山頂まで同じような状況であればかなり厳しい登攀となることは明らかだった。
「天気は文句なしなんだけどなぁ・・・」
大汗をかきながら登り続けたが、このようなラッセルは幸いにそう長くはなかった。
標高を稼ぐにつれ、埋もれるのは腰から膝上、そして膝くらいまでとなり足取りもかなり楽になってくれた。
おそらくは風のおかげであろうと思う。
標高が高くなるほど風が強くなり、その強風のせいで雪が飛ばされてしまったのだろう。
見上げればトレースの浅さがそれを証明していた。
「ここまで来ればもう大丈夫だろう。でも山頂から先の一ノ倉と茂倉へのルートがどうなっているのかはわからないなぁ。登ってから確認するしかないね。」
できることなら茂倉岳方面まで行ってみたい。
その思いは強くあるが、安全第一とするならば決して無理をしてはならない。
「行きたい・・・でもなぁ・・・」
そんなことをずっと考えながら登り続けていると、やっと肩の小屋が見えてきた。
このポイントから肩の小屋までは直線距離にすれば100mもないが、昨日のホワイトアウトの時は前方の左ルートではなく、右側の僅かに高くなっている部分の真下辺りでどうにもならなくなってしまった。
一日が過ぎ、今のルート上の雪面は比較的固いが、あの時はブリザードにも近い状況だったし、下山を決めたことは間違いではないと思っている。
雪山の恐ろしさと素晴らしさは、それなりには分かっているつもりだ。
問題は「それなりに」ということであり、すべてを知っている訳ではない。
もちろん無理にすべてを体験する必要など無く、やばいと思ったなら即諦めて下山すれば良いだけのこと。
それが長く安全に楽しむ最大のコツだろう。