ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

「長治郎谷」ルートで劔岳へ:ダイジェスト2

2014年08月07日 00時00分59秒 | Weblog
極めてラッキーなことに、自分より先に岩稜を登攀している方がいた。
事前の調べで、最初のPEAKは左側から攻めれば良いことだけは分かっていたので、実際にはどうなのかと言うことを確証することができた。
「よし、できる。登れるぞ。」
そう思い、意を決した。

浮き石が多い。
何度か「ラ~ク! ラ~ク!」と叫んだが、後続者は幸いに誰もいなかった。
「ダメだ、もっと慎重に登らなきゃ・・・」
確実なルートファインディングは当然だが、落石を起こさずに登攀することも大切だ。

時間にすればわずか30分程度で頂なのだが、この30分がとてつもなく長く感じた。
それでも「こんな岩肌に・・・」と思わせる高山植物が目に入った。

ほんの刹那だが心が和んでくれた。
こんな時だからこそ、花はやっぱりありがたい存在だ。

最初のPEAKを越え、少し進むと人の姿が見えてきた。
「あれが剱の頂だ。こっちから来るとなんかよく分からないなぁ。」
そんなことを思いながら一歩一歩頂へと近づいて行く。
だが、その前にもう一度バリエーションルートを振り返ってみた。

「へぇーっ、俺でも登れたんだなぁ・・・」
しみじみと思った。

小屋をスタートし、休憩を入れてちょうど5時間のバリエーションルートだった。


山頂には15~6人の方はいただろうか。
しかしこんなピーカンに近い天候なのに、登頂者はこんなものか・・・。
日本海(富山湾)をバックにハイポーズ!
どんなに頑張っても所詮は自己満足だが、嬉しいものは素直に嬉しいものだ。

そうそう、小屋の友邦さんに連絡しなければ・・・。

「登頂したら小屋に電話してください。」と、二代目の佐伯友邦さんから言われていたのだ。
今まではその様なことは言われたことなど無かったのだが、そこが通常ルートと違う所以なのだろう。
もちろん心配してのことであり、先ずは小屋に連絡。
「そうですか。おめでとうございます。下山も慌てずに下りてください。」
本当にありがたい言葉だった。

まずはここでゆっくりと昼飯を食べよう!

「長治郎谷」ルートで劔岳へ:ダイジェスト1

2014年08月02日 00時11分36秒 | Weblog
先ずはダイジェスト的にレポート報告を・・・。

何よりも三日間好天に恵まれたことが嬉しい。
真夏の日差しの強さに参りそうにもなったが、三度目の劔岳でやっと絶景をこの目で見ることができた。

第一日目
昨年の夏と同じ室堂から立山を縦走して劔沢入りした。
「雄山」までは一般登山者の数が半端じゃなく多く、一向にペースがつかめずにいた。
雄山を過ぎれば閑散としたもので、大汝~別山まで終始マイペースで縦走。
別山から見た劔岳、そして明日登る予定の「長治郎谷」の雪渓を見た途端に緊張が走った。
ソロで挑戦する初めてのバリエーションルートだけに不安は大きかった。


剱沢に到着。
今夜の宿はいつもの「剱澤小屋」。
二代目の友邦さん、三代目の新平さん、そしてスタッフの方が自分のことを覚えていてくれた。(本当に嬉しかった)

夜はあまり眠れず朝を迎えた。
4時過ぎに朝食を食べ、5時に小屋を出発。
いきなり雪渓を500mほど下らなければならなかった。
つまり、下っただけ登攀する標高差が大きくなる。
ちょっと凹みそうにもなったが、今更嘆いても何の意味もない。
すべては自分で決めて行動に移したのだ。

標高差約1000mの長治郎谷。
日が差していない雪渓の部分は冷たい空気と風が心地よかった。


12本爪のアイゼンがよく利いてくれている。
まだピッケルの出番ではないが、徐々に斜度が増してくるのがわかった。
「ローペースでいい。ただ一歩一歩気を抜かずに登ろう」
そう決めて上を目指した。
100歩登ってはその場に立ち止まり息を整えた。
ずっとその繰り返し。
だから小休止は不要だった。

ほぼルートタイム通りに「熊の岩」へ着き、ここで初めて20分だけ休んだ。
「いやぁ~きつかった! ここからまだ1時間の急登攀か。斜度が増してるんだよなぁ」
そんな愚痴が出てしまった。
熊の岩から「長治郎のコル」までが雪渓となっている。
雪渓の最後の一時間が本当にきつかった。
斜度は約40°ほどだろう。
5月に登った北穂高岳のルートよりはまだましなのだが、なにせ今の季節は夏。
雪渓に太陽の日が当たると雪面が緩くなり、12本爪のアイゼンでも利きが悪くなってしまった。
キックステップがまともに利かないのだ。
ここで滑落したらそれこそ岩の壁に激突してしまうことは明らかだった。
ましてや二日前に、ここで滑落事故が起きてしまっている。
最後の雪渓はかなり慎重に登攀した。
そして遂に長治郎のコルに到達。
「いやぁ~きつーっ!」
しかし、登り切ったその先に見たものは、空の碧さだけではなかった。
岩稜地帯の向こう側にはもう一つの「碧い世界」があったのだ。


一瞬で疲れが吹き飛ぶほどの感動だった。
「海かぁ・・・ここから海が見えるんだ。知らなかった・・・」
心臓をバクバクさせる程きつかった登攀のご褒美は、3000mから見下ろす日本海の碧さだった。

煙草も吸った。行動食も食べた。
さて、ここからが技術だけでは登れないルートだ。
標識もペンキによる印も何もないのがバリエーションルートなのだ。

相棒の「モン太(モン次郎)」も一緒に登ろう!

登頂まで時間にして30分程度なのだが、浮き石が多く何度か踏み外してしまった。
頑なに三点支持を守り、数メートル登ってはルートを探した。
ホールドポイント、スタンスポイントを探すのは当たり前で、とにかく無事登頂に繋がるルートファインディングでなければならないわけで・・・。
もしルートファインディングをミスったら、登ってきたルートを下りなければならないか、そこからまた別の繋がることができるルートを見つけなければならない。
焦りが無かった訳ではないが、ペンキで印した○×や矢印がどれほどありがたいか、嫌という程感じた。