ルートロストしてしまった方は自分たちの後を付いてくる形となった。
それは別にいいのだが、他にいた3人グループの人達も「自分たちも初めてなので一緒にいいですか?」と言ってきた。
特に断る理由はないのだが、「何か頼られてるなぁ・・・」というのが正直なことろだった。
「剱は何度目なんですか?」と聞かれ「たぶん14回くらいだと思います。でもいろんなルートから登頂しているので、この別山尾根ルートはその半分くらいです。」と答えた。
「ベテランだぁ~」と言われたので「いえいえ、失敗と怪我の数だけはベテランです。」と笑って返した。
今回は登頂まではAM君に先陣をきってもらっている。
経験値を高めてもらうためである。
先ずは梯子を渡り、岩壁に取り付きながら巻く。
うん、いい調子だ。そうそうマイペースでね。
高巻きを終えたところで自分がスタートした。
前剱の門を過ぎ、ややトラバース。
もう一ヵ所のクサリ場を登れば程なくして「平蔵の頭」へと辿り着く。
後から付いてきている人達にはごく簡単に状況を説明してはいるが、三点支持さへしっかりとしていれば大丈夫とだけ言ってある。
「何か俺、とんでもなく頼られているけどいいのかな? 俺なんかでいいのか?」
こっそりとAM君に言ったが「他にいませんよ」と言われた。
もちろん頼られていることが嫌なのではない。
ただ「何かあったら・・・」という思いがどうしても拭いきれなかった。
AM君が平蔵の頭を登る。
登り切ったところで自分が続いた。
後の人達にはホールド・スタンスポイントだけを良く見ていてほしいと伝えた。
そして(「どうか滑落だけはしないでくれよ。俺責任持てないから」)と、切に願った。
頭に登ると「平蔵谷」が見えた。
赤い矢印が下山予定のコース。
「下山はあそこだよ。どのイルンゼの間を通るかは行ってみなけりゃわからないけどね。」
「えっ、本当にあんなところを下りるんですか? 大丈夫なんですか?」
と聞いてきたのは若い3人グループの一人だった。
ニヤッとだけ笑って答えた。
平蔵谷は二度登ったことがある。
だが下りるのは初めてだ。
不安はないと言ったら嘘になる。
平蔵の頭を下りる。
「ルンゼをうまく利用してください。」と言い残し先に下りたのはいいが、途中で「ルンゼって何ですか?」と聞かれ、思わずずっこけて落ちそうになってしまった。
「溝です。この溝にはよく見ればスタンス・ホールドポイントがあるから大丈夫です。」
そう答えたのはいいが、「ルンゼ」の意味を知らない人達を先導することが怖くなってきた。
平蔵谷の雪渓が間近に見えた。
「やっぱりか・・・」
見事なまでの亀裂(シュルンド)が走っていた。
幸い目視できるシュルンドは一本だけだったが、ここからではその深さがどれ程のものなのかまでは分からなかった。
「AM君、ほら、あれ・・・。巻いて下りられればいいけど、最悪の場合ザイルで壁を下りるしかないと思うからそのつもりでいてほしい。」
「了解です。でも深さが分からないですね。」
彼も彼なりに不安なのだろう。
一応20メートルのザイルを持ってはきたが、果たして・・・。
本峰南壁、タテバイとAⅢの間あたりであろうと思われるポイントにあるでかいシュルンド。
あそこさへ越えれば楽になる。
そう信じたい。
それは別にいいのだが、他にいた3人グループの人達も「自分たちも初めてなので一緒にいいですか?」と言ってきた。
特に断る理由はないのだが、「何か頼られてるなぁ・・・」というのが正直なことろだった。
「剱は何度目なんですか?」と聞かれ「たぶん14回くらいだと思います。でもいろんなルートから登頂しているので、この別山尾根ルートはその半分くらいです。」と答えた。
「ベテランだぁ~」と言われたので「いえいえ、失敗と怪我の数だけはベテランです。」と笑って返した。
今回は登頂まではAM君に先陣をきってもらっている。
経験値を高めてもらうためである。
先ずは梯子を渡り、岩壁に取り付きながら巻く。
うん、いい調子だ。そうそうマイペースでね。
高巻きを終えたところで自分がスタートした。
前剱の門を過ぎ、ややトラバース。
もう一ヵ所のクサリ場を登れば程なくして「平蔵の頭」へと辿り着く。
後から付いてきている人達にはごく簡単に状況を説明してはいるが、三点支持さへしっかりとしていれば大丈夫とだけ言ってある。
「何か俺、とんでもなく頼られているけどいいのかな? 俺なんかでいいのか?」
こっそりとAM君に言ったが「他にいませんよ」と言われた。
もちろん頼られていることが嫌なのではない。
ただ「何かあったら・・・」という思いがどうしても拭いきれなかった。
AM君が平蔵の頭を登る。
登り切ったところで自分が続いた。
後の人達にはホールド・スタンスポイントだけを良く見ていてほしいと伝えた。
そして(「どうか滑落だけはしないでくれよ。俺責任持てないから」)と、切に願った。
頭に登ると「平蔵谷」が見えた。
赤い矢印が下山予定のコース。
「下山はあそこだよ。どのイルンゼの間を通るかは行ってみなけりゃわからないけどね。」
「えっ、本当にあんなところを下りるんですか? 大丈夫なんですか?」
と聞いてきたのは若い3人グループの一人だった。
ニヤッとだけ笑って答えた。
平蔵谷は二度登ったことがある。
だが下りるのは初めてだ。
不安はないと言ったら嘘になる。
平蔵の頭を下りる。
「ルンゼをうまく利用してください。」と言い残し先に下りたのはいいが、途中で「ルンゼって何ですか?」と聞かれ、思わずずっこけて落ちそうになってしまった。
「溝です。この溝にはよく見ればスタンス・ホールドポイントがあるから大丈夫です。」
そう答えたのはいいが、「ルンゼ」の意味を知らない人達を先導することが怖くなってきた。
平蔵谷の雪渓が間近に見えた。
「やっぱりか・・・」
見事なまでの亀裂(シュルンド)が走っていた。
幸い目視できるシュルンドは一本だけだったが、ここからではその深さがどれ程のものなのかまでは分からなかった。
「AM君、ほら、あれ・・・。巻いて下りられればいいけど、最悪の場合ザイルで壁を下りるしかないと思うからそのつもりでいてほしい。」
「了解です。でも深さが分からないですね。」
彼も彼なりに不安なのだろう。
一応20メートルのザイルを持ってはきたが、果たして・・・。
本峰南壁、タテバイとAⅢの間あたりであろうと思われるポイントにあるでかいシュルンド。
あそこさへ越えれば楽になる。
そう信じたい。