“MONSTER”
と言っても決しておどろおどろしい怪物のことではない。
この時季の雪山でしか出会えない「樹氷」の別称。
山形県の蔵王スキー場へ行き、山頂へリフトに乗って行けばすぐに見ることができるのだが、それじゃ簡単すぎる。
是非とも登って登って会いに行きたいと、この目で見たいと計画を立てた。
福島県と山形県との県境にある、お馴染みの吾妻連峰。
その中の一つにある「西大巓(にしだいてん)」。
標高はおよそ2000メートル弱。
この山に登れば360°の展望、そしてスキー場とは一味も二味も違った大自然の樹氷に会うことができるのだ。
この計画は一年前からあたためておいたのだが、日程が取れず延びに延びてしまった。
何としても今季中には実行したいと思っていた。
この計画をモンベルおやまゆうえん店のスタッフの方に話してみると、お互いに日程さえ合えばOKとのこと。
是非とも一緒に! ってな訳で、2月下旬に決行と相成った。
メンバーはモンベルおやまゆうえん店スタッフのK島さんとIさんと自分の3名。
気心知れた仲であり、この上なく楽しみだ♪
早朝5時に集合し、K島さんの車で東北自動車道を北上。
一路「グランデコスノーリゾート」へと向かった。
途中コンビニへ寄り朝食などを購入したのだが、不意に不思議な感覚に襲われた。
「へぇ~、Iさんもコンビニに寄るんだ。へぇ~食べ物を買うんだ・・・。」
買い物をするために寄ったのだから買うのは当たり前だとわかりきっているのに、何のことはない当たり前の行動が、ことのほか新鮮でならなかったのだ。
いつもはモンベル店でしか会ったことがなく、たとえ冗談話に花が咲いたとしても客とスタッフとの関係が崩れることはなかった。
その関係が初めて違ったものとなった訳である。
そのことが自分にとって微笑ましいほどに新鮮で可笑しくもあったのだ。
車中でもそうだった。
お店では話したことのない話題で盛り上がり、今まで知ることの無かったK島さんやIさんの素顔を垣間見ることができた。
8時前にはスキー場に到着。
車から降りすぐに空を見上げる。
「今日は大丈夫かな・・・。頼むよ!」と祈った。
駐車場からセンターハウスまではほぼアイスバーン状態。
「おっとっと」とは口にこそ出さなかったが、スリップしかけた。
休憩室でセットアップ完了。
あとはゴンドラリフトとクワッドリフトを乗り継いでゲレンデのPEAKまで行く。
ゴンドラリフトのスタート。
モンスターへの期待に会話が弾むひとときだ。
ゲレンデの上の方はまだガスがかかっているが、次第に東の方から青空が見え始めてきている。
「いいねいいね!」みんな笑顔だ。
クワッドリフトに乗り換える。
自分たちの影がはっきりと雪原に映し出されてきた。
「いいぞいいぞ!」ますます笑顔になる。
ゲレンデのPEAKに到着し、最終的な身支度とギアを装着した。
一応アイゼンとピッケルは持ってきたが、今日はたぶん「スノーシュー」だけで大丈夫だろう。
と、ここでミドルウェアを一枚脱いだ。
しばらくはピーカンが続くだろうし、登攀開始早々は最も汗をかくことも分かっている。
アルパインジャケットを脱ぎ、いつもと違ったミドルを一枚脱いだ。
ジャジャ~ン!!!
赤だよ赤!
十年以上は着たことのないカラーだ(笑)。
かなり恥ずかしかったのだが、今日は思い切って着てみた。
そう、かなり思い切ってのことだ(笑)。
このジャケット、今年の元旦にモンベルおやまゆうえん店の福袋の中に入っていた物で、それなりに値が張る代物だ。
どうしようかと随分と悩んだのだが、「今日だけ特別」と意を決して着用。
しかし、着ている間はずっと上半身がむずかゆい思いだった。