夜はそれなりに冷えた。
この時期は春秋用のシュラフだが、毎回「できればもうワンランク上のものが欲しい」と思えることが多い。
それが分かっていただけに厚着をして寝ることで寒さを凌いだ。
翌早朝3時30分に起床。
先ずは目覚ましの珈琲を一杯飲む。
テントの外は真っ暗闇だったが、テントから顔だけを出すと、ところどころポツリポツリとテントに明かりが灯っていた。
ごく簡単だが雑炊で腹を満たし、珈琲をもう一杯飲んだ。
もうすぐ出発時刻の5時となる。
外へ出て寒さに慣らそうとしたが、想定していた以上の寒さだった。
幸いにここは風はない・・・が、標高を上げるに連れてどう変わって行くのかが懸念された。
5時、予定通りテン場を出発。
先ずは涸沢小屋へと向かい、樹林帯の中を通過してパノラマロードへと合流する。
初めからパノラマロードを利用するのが一般的なのだろうが、少しでも時間短縮を狙ってのコース選択だった。
「奥穂高岳」の指標。
知っているコースとは言え、この暗闇の中では指標はありがたい存在だ。
すぐに涸沢小屋に着いた。
すでに小屋には明かりが点いており、朝食の準備で忙しそうだった。
出発の準備をしている人たちもいた。
自分たちと同じ奥穂方面へ登るのだろうか、それとも北穂高岳?
あるいは天候を見計らって日の出やアルペングリューエンを見るための人もいるだろう。
画像では確認しにくいが、涸沢のテントの明かりが僅かに目視できた。
小屋を過ぎて樹林帯の中へと突入した。
昼間であれば朱色や黄色に染まった紅葉の世界を突っ切っていることになるのだが、ヘッドランプに照らされているのはごく限られた範囲のみ。
紅葉を愛でるのは下山の時までお預けだ。
N君の手とカメラが影になって写っている(笑)。
スタートして間もないだけに、体はまだ出来上がっていない。
そして少し肌寒かった。
本来なら今は紅葉の世界にいる。
「帰りが楽しみです」とN君。
それなりの急斜面を登ってはいるが、「ここ(樹林帯)抜けるのにこんなに時間がかかったかな?」とも感じていた。
早いとこここを抜け岩場へと辿り着きたい。
つまり視界の効くルートへと出たかったのだ。
おそらく時間的にはもうすぐ夜が明ける。
少しでも明るくなり、そして視界が効くルートへと出ればモティべーションも上がってくるというものだ。
まだかまだかと思いながらもやっと樹林帯を抜け、ザイテングラードが見えるポイントまで登ってきた。
ここから本来であれば右へと逸れパノラマロードへ合流するのだが、このまま直進することにしていた。
つまり三角形状における最短ルートで登山道に合流することになる。
真正面に「涸沢槍」が見えた。
左端にはザイテングラードが見えている。
そろそろヘッデンともおさらばだろうか・・・。
このまま岩場を登り続けることになるのだが、朝日を背にすることになるので、日の出の瞬間的な輝きを見逃したくはなかった。
足元に注意しながら頻繁に振り返り日の出の様子を伺った。
「まだか・・・もうすぐだろう・・・」
何度も思いながら登る。
そしてやっとその時が・・・。
北アルプスに夜明けがきた。
休憩がてら日の出を堪能させてもらった。
寒さも忘れてしばし見とれるN君。
何故か横を向いてしまっている自分。
おそらくこの時「アルペングリューエン」が気になって仕方がなかったのだと思う。
**********************************
[ちょっと一息]
モルゲンロートとは登山用語に類するもので、一般的には朝日が岩の山肌に当たり、その当たった部分が赤みを帯びて輝いて見えることを言う。
しかし、モルゲン(Morgen)=朝、ロート(rot)=赤という意味なので直訳すれば「赤い朝」となる。
嘗て意味を調べた時に分かったことだが、本来は「アルペングリューエン(Alphengluehen)」と言うべきなのではないかと疑問を抱いている。
アルペン=山・山脈、グリューエン=燃える、と言う意味なので、どちらかと言えばアルペングリューエンの方が正しいような気がする。
更には、モルゲンロートは赤く染まった雲を意味しているらしいが、いつのまにかモルゲンロートの方が日本では岩肌が赤く染まることを意味していることに定着したらしい。
いずれにせよ、自分の中ではモルゲンロートではなく「アルペングリューエン」で落ち着いている。
**********************************
朝日の方をチラ見ながらも、ずっと気にしていたのが吊り尾根方面の岩肌だった。
徐々に色濃く染まって来るのが分かった。
初めは金色っぽく、そして少しずつ赤みを帯びてくる。
遂に・・・
見事なまでのアルペングリューエン。
眩しすぎてサングラス無しでは直視できない程だった。
自分たちは今、アルペングリューエンの真っ只中にいることになる。
気象条件が揃えばそれはいつでも可能なことだが、そうは滅多に遭遇しないタイミングに感動しっぱなしだった。
山肌が赤に染まったのはほんの刹那だった。
太陽はすぐにまた雲の中へと隠れてしまった。
ごく数分だけの自然現象だったが、いやが上にも気分は高まった。
これから先のザイテングラード、奥穂高岳、馬の背、ロバの耳、そしてジャンダルム。
難所は続くーよーどーこまーでーも~♪
などとお気軽なことは言ってられないコースだが、この雄大な大自然の恵みに感謝してラストジャンダルムとしたい思いは一層強くなった。
この時期は春秋用のシュラフだが、毎回「できればもうワンランク上のものが欲しい」と思えることが多い。
それが分かっていただけに厚着をして寝ることで寒さを凌いだ。
翌早朝3時30分に起床。
先ずは目覚ましの珈琲を一杯飲む。
テントの外は真っ暗闇だったが、テントから顔だけを出すと、ところどころポツリポツリとテントに明かりが灯っていた。
ごく簡単だが雑炊で腹を満たし、珈琲をもう一杯飲んだ。
もうすぐ出発時刻の5時となる。
外へ出て寒さに慣らそうとしたが、想定していた以上の寒さだった。
幸いにここは風はない・・・が、標高を上げるに連れてどう変わって行くのかが懸念された。
5時、予定通りテン場を出発。
先ずは涸沢小屋へと向かい、樹林帯の中を通過してパノラマロードへと合流する。
初めからパノラマロードを利用するのが一般的なのだろうが、少しでも時間短縮を狙ってのコース選択だった。
「奥穂高岳」の指標。
知っているコースとは言え、この暗闇の中では指標はありがたい存在だ。
すぐに涸沢小屋に着いた。
すでに小屋には明かりが点いており、朝食の準備で忙しそうだった。
出発の準備をしている人たちもいた。
自分たちと同じ奥穂方面へ登るのだろうか、それとも北穂高岳?
あるいは天候を見計らって日の出やアルペングリューエンを見るための人もいるだろう。
画像では確認しにくいが、涸沢のテントの明かりが僅かに目視できた。
小屋を過ぎて樹林帯の中へと突入した。
昼間であれば朱色や黄色に染まった紅葉の世界を突っ切っていることになるのだが、ヘッドランプに照らされているのはごく限られた範囲のみ。
紅葉を愛でるのは下山の時までお預けだ。
N君の手とカメラが影になって写っている(笑)。
スタートして間もないだけに、体はまだ出来上がっていない。
そして少し肌寒かった。
本来なら今は紅葉の世界にいる。
「帰りが楽しみです」とN君。
それなりの急斜面を登ってはいるが、「ここ(樹林帯)抜けるのにこんなに時間がかかったかな?」とも感じていた。
早いとこここを抜け岩場へと辿り着きたい。
つまり視界の効くルートへと出たかったのだ。
おそらく時間的にはもうすぐ夜が明ける。
少しでも明るくなり、そして視界が効くルートへと出ればモティべーションも上がってくるというものだ。
まだかまだかと思いながらもやっと樹林帯を抜け、ザイテングラードが見えるポイントまで登ってきた。
ここから本来であれば右へと逸れパノラマロードへ合流するのだが、このまま直進することにしていた。
つまり三角形状における最短ルートで登山道に合流することになる。
真正面に「涸沢槍」が見えた。
左端にはザイテングラードが見えている。
そろそろヘッデンともおさらばだろうか・・・。
このまま岩場を登り続けることになるのだが、朝日を背にすることになるので、日の出の瞬間的な輝きを見逃したくはなかった。
足元に注意しながら頻繁に振り返り日の出の様子を伺った。
「まだか・・・もうすぐだろう・・・」
何度も思いながら登る。
そしてやっとその時が・・・。
北アルプスに夜明けがきた。
休憩がてら日の出を堪能させてもらった。
寒さも忘れてしばし見とれるN君。
何故か横を向いてしまっている自分。
おそらくこの時「アルペングリューエン」が気になって仕方がなかったのだと思う。
**********************************
[ちょっと一息]
モルゲンロートとは登山用語に類するもので、一般的には朝日が岩の山肌に当たり、その当たった部分が赤みを帯びて輝いて見えることを言う。
しかし、モルゲン(Morgen)=朝、ロート(rot)=赤という意味なので直訳すれば「赤い朝」となる。
嘗て意味を調べた時に分かったことだが、本来は「アルペングリューエン(Alphengluehen)」と言うべきなのではないかと疑問を抱いている。
アルペン=山・山脈、グリューエン=燃える、と言う意味なので、どちらかと言えばアルペングリューエンの方が正しいような気がする。
更には、モルゲンロートは赤く染まった雲を意味しているらしいが、いつのまにかモルゲンロートの方が日本では岩肌が赤く染まることを意味していることに定着したらしい。
いずれにせよ、自分の中ではモルゲンロートではなく「アルペングリューエン」で落ち着いている。
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朝日の方をチラ見ながらも、ずっと気にしていたのが吊り尾根方面の岩肌だった。
徐々に色濃く染まって来るのが分かった。
初めは金色っぽく、そして少しずつ赤みを帯びてくる。
遂に・・・
見事なまでのアルペングリューエン。
眩しすぎてサングラス無しでは直視できない程だった。
自分たちは今、アルペングリューエンの真っ只中にいることになる。
気象条件が揃えばそれはいつでも可能なことだが、そうは滅多に遭遇しないタイミングに感動しっぱなしだった。
山肌が赤に染まったのはほんの刹那だった。
太陽はすぐにまた雲の中へと隠れてしまった。
ごく数分だけの自然現象だったが、いやが上にも気分は高まった。
これから先のザイテングラード、奥穂高岳、馬の背、ロバの耳、そしてジャンダルム。
難所は続くーよーどーこまーでーも~♪
などとお気軽なことは言ってられないコースだが、この雄大な大自然の恵みに感謝してラストジャンダルムとしたい思いは一層強くなった。