ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

猛暑の劔岳:もう一度岩壁へ

2018年09月26日 23時49分19秒 | Weblog
昼飯を何にするかと、今日の出発直前まで決めかねていた。
「おそらくはかなり汗をかくだろうなぁ・・・」
そう思い、最終的には「しょっぱさ」を優先してカップ麺に決めた。


とにかく空腹だった。
早朝5時出発というのは何度も経験しているが、4時というのは殆ど記憶にない。
たった1時間早まっただけだが、それだけ朝食も早く食べなければならない。
3時前の朝食など半ば無理矢理腹に詰め込むといった感じだったが、行動開始から既に8時間以上経過している訳だし、いい加減空腹だった。


カップ麺にして大正解だった。
この醤油味のしょっぱさがたまらなく美味かった。
AM君は味つけご飯。
自分はカップ麺だけでは少々足りなかったこともあり、昨日の行動食の余りでもある菓子パンを食べた。
何とか腹の虫は治まってくれたようだった(笑)。


長治郎雪渓を眼下に食後の珈琲のなんと美味いことか!

しかしながら、食べている時も頭の中は復路のルートのこととついさっきの立ちすくみのことで一杯だった。
あれだけの落石を起こしてしまったという「罪悪感」の様なものが頭から離れない。
決して意図的ではないにせよ「とんでもないことをしてしまった」という思いだ。
AM君にはできるだけ悟られないよう平静を装っていたが、自ずと無口になってしまっていたような気がする。

「さぁて、そろそろ戻らないとね。」
そう言ってアタックザックを背負った。
帰る前にモアイ像の前で記念写真を一枚。


写真を撮り終えすぐにスタートしようとしたのだが、何故かもう一度北方稜線を見たくなった。
つまり、再度あの崖っぷちに立ってみようと思ったのだ。
理由は二つ。
一つは小窓の王とバンドをもう一度見たかったこと。
そしてもう一つは「まだ足は竦むのか・・・」。
それをどうしても確認しておきたかった。


やや恐る恐る崖っぷちに近づいた。
小窓の王を見るふりをしてはいたが、気になったのはむしろ足元の50メートルの崖だった。
ゆっくりと真下を見下ろした。
どことなくではあったがやはり下半身に力が入らなかった。
それでも最初の時程の震えの様なものは無かった。
(「大丈夫か・・・行けるか・・・。」)
不安が払拭されたわけではないが、いつまでもこの場に留まっている訳には行かない。
「帰らなければ」
それだけだった。

もう一度長治郎の頭を越え、あの現場を越え剱の頂を目指す。
そしてヨコバイを越えて平蔵谷の急雪渓を下る。
最後は剱沢雪渓の登攀だ。

難所はまだ前半を終えたばかりだ。