ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

阿弥陀岳:やっぱり稜線は楽しい♪

2018年05月30日 00時03分17秒 | Weblog
中岳の下りはいきなりの急斜面となっていた。

「う~ん・・・記憶がない・・・」
正直、全くと言ってよいほどこのルートの記憶がなかった。
まだ雪山を始めて間もない頃で、ただついて行くだけで精一杯だった。
そして「嫌だな・・・なんでついて来ちゃったんだろう俺は・・・」
そんな思いを抱いていたことだけは覚えている。


南側がスパッと切れ落ちた稜線ルート。
ここはAM君に先行させた。
この程度のリッジであれば、左に寄りすぎない限りは問題はないだろう。

自分もすぐ後を追い、今度は自分が先行した。
「このルートって結構面白いかもね♪ なんか時間をかけて歩きたい気分だよ。」
「僕もそう思います。なんか楽しいですね。」
リッジである以上は危険であることには違いないのだが、赤岳や横岳縦走にはない状況に新鮮さを感じずにはいられなかった。


ふり返った。
完全なナイフリッジだ。
楽しいことはいいことだが、集中して進まなければならない。
今は残雪期、いつどこで雪のブロックと共に体ごと崩れ落ちるかわからないのだ。



中岳を過ぎてからの稜線ルートがこれほどだったとは・・・。
天候に恵まれていることも要因の一つではあるが、このルートがこれほど楽しいとは・・・。
「今日は赤岳は(登らなくても)いいかな・・・」
などと考えてしまうほど充実したリッジの縦走だ。


もうすぐ阿弥陀岳東陵の取り付き口というポイントで一服した。
「もう少し手前まで行けばはっきりと分かるだろうけど、あのあたりからダブルで行ってみよう。」
と言い、中腹手前を指さした。

ダブルとは「ダブルアックス」のことであり、ピッケルを2本用いて登攀するということ。
本来であれば1本でも登れるのだが、一部区間だけかなりの急勾配となっている。
その区間だけダブルで登ることに決めていた。
これは後々の為の練習であり、今回の阿弥陀岳はそれにはもってこいの山だと考えていた。


今度は北側が切れ落ちたリッジとなった。
そしていよいよ東陵が目の前に迫ってきた。
「一時間で登れるか・・・。焦らず行こう。」

阿弥陀岳:中岳へ

2018年05月28日 00時02分23秒 | Weblog
赤岳と中岳・阿弥陀岳方面への分岐点までもうすぐというところまできて、遂に阿弥陀岳東陵に日が差してきた。
正確には「差してきてしまった」と言った方がこの時の気持ちだった。


決して慌てることはないが、できるだけ早い時間帯に東陵ルートを攻めたい。
攻めなければ斜面の雪の緩みは進むばかりだ。
「先ずは分岐点。でもって中岳までは少し急ごうか。」
「そうですね。そのほうが安心できますね。」


一度日が当たり始めると、あっという間に東斜面は日の光で覆われた。
そして中岳にも差し始めた。
「予定では10時までには阿弥陀に登りたい。途中アクシデントがなければ行ける・・・はずだ。」


8時前には分岐点に到着できた。
水分と行動食のみを補給しすぐに中岳へと向かった。

ジグザグに下って行く。
トレースがはっきりと残っており、おそらくは昨日小屋の手前ですれ違った人のものだろうと推測した。


中岳手前のコルでアタックザックを下ろし、二度目の休憩らしい休憩を取った。
本来であれば少しでも早く東陵に取り付きたいのだが、中岳を越えて東陵に辿り着くまで稜線を進まなければならない。
取り付くまではまだ先だけに、体力の温存を図った。

休憩を済ませ歩き始めると、ふいに後頭部あたりに暖かさを感じた。
振り向けば太陽が・・・。

「おぉ~眩しいね。今日は暑くなりそうだ。」

中岳へのルートは単調な一本道で、ただダラダラと登って行くだけ。
そう大して時間は要さなかったが、その先が待っている。

時折ふり返れば、今度は富士のお山がはっきりと目視できた。

赤岳と権現岳との間にすっぽりと収まっている富士山。
凛々しくも見事な容姿であるが、もう登るつもりはない。
何度か登ってはいるが、あまりの単調さに辟易してしまったというのが本音だ。
難易度、危険度共に中レベルであり、しかも登山者の数の多さに言葉を失ってしまった。
「静けさも何もあったもんじゃないな。勘弁して欲しい。」
自分もその登山者の一人であるにも関わらず、良い思い出はない。
確かに山頂からの眺めは抜群であったが、登山技術においては頑張れば子供でも登れるという程度だ。
「富士は遠くから見るだけに限る。」
これが下山後の結論だった。


中岳山頂手前からの富士山。



8時30分。
中岳に登頂。
遂に阿弥陀岳東陵が眼前に迫ってきた。
当然南陵壁も見える。
どのあたりで滑落してしまったのだろう・・・。
ご冥福を祈り、自身への戒めとすることしかできない。

真下には東陵ルートへと向かう稜線が見えた。
たっぷりと雪はあったが、片側はスパッと切れ落ちているポイントもある。
もう一度気を引き締め直さなければならない。

W杯日本代表候補決まる! が・・・

2018年05月20日 23時47分21秒 | Weblog
西野ジャパンとなりまだ日は浅い。
しかしW杯までの限られた僅かな日々において悠長に選考を考えている時間は無いのが現実だ。

先日W杯に向けた代表候補のメンバー発表があった。
各メディアはここぞとばかりに予想メンバーを挙げていたが、はっきり言ってどこも「似たり寄ったり」って感じがした。
経験値、外国人選手に対して当たり負けをしない、早さ、テクニック、複数ポジションをこなせるか等々基準は多くあるだろう。
自分の様な素人でもある程度は予測できるし、自分なりの選考基準もある。

しかしいざ蓋を開けてみて驚きだった。
“サプライズ”・・・・・ほぼ無し。
「そりゃぁ苦労はしたんだろうけど・・・なんで?」と言うのが率直な気持ちだった。
ただのネームバリューなのか・・・ それとも経験値を重視したのか・・・。
「何故○○が落ちたんだ。何故○○が選ばれたんだ。」
と、実名を挙げる事はしないが、本音を言えば守備重視の代表候補の様な気がしてならない。

サッカーは点取り合戦であり、点を取らなければ勝てないスポーツである。
(そんなことは監督であれば百も承知であり、自分のような奴に言われたくもないだろう)
もし、守備重視という自分の考えが当たっているとすればだが、何故そうしたのか。
答えは簡単だ。
W杯予選の対戦国を見ればある意味そうせざるを得ない。
固く守って数少ない隙を狙ってのカウンター攻撃をしかけ、ドローに持ち込む。
あわよくば勝利。

だが、しかし・・・、今大会ほど予選突破が厳しい大会はないと考える。
それは自分にでも分かる。
それでも「勝ち」に行くためにロシアまで行くのだ。

自分だってポジティブに考えたい。
このかつてない厳しい状況でもそう考えたい。
だから、やっぱり愛してるぜサッカー日本代表!

阿弥陀岳:樹林帯を越えて

2018年05月17日 23時59分46秒 | Weblog
厳冬期用のシュラフを用いているとはいえ、珍しく夜間は暖かく冷えや足下の寒さを感じることはなかった。

午前3時10分に起床。
「思っていたよりぐっすり眠れたな・・・」
率直な気持ちである。
テントから顔だけを出し夜空を見上げた。
月は見えなかったが、枝や葉の隙間から星が輝いているのがはっきりと見て取れた。
「よっしゃ、行ける!」
そう思うと体はごく自然に体内から目覚めてくるようだった。

お湯を沸かし目覚めの珈琲。
そしてFDの雑炊と餅しゃぶで朝食だ。
今日は長丁場となりそうなので十分にカロリーは摂取しなければならない。
本来であればビタミン類も必要なのだが、登山の場合栄養バランスはそれなりに制限されてしまう。
そこで登山の時に限っては「マルチビタミン剤」を服用している。
単に野菜不足を補うためであり、腹こそ満たされないが重宝しているサプリメントだ。

アタックザックの中身を確認。
ポケットの中を確認。
「残置無し、OK。」
外へ出てアイゼンを装着した。
「この前爪も限界だなぁ。そろそろこいつもお役ご免か。」
ふと寂しい思いに駆られた。
このアイゼンともかなりの雪山に登った。
そしてかなりの危険を共にしてきた。
そう考えると登山のギアというものはすべてに愛着が湧く。
「やっぱ捨てられないなぁ・・・だから女房にあれこれ言われるんだよなぁ・・・」

AM君も装着を済ませ、スタート前の一服。
じゃぁ俺も・・・ってことで一服をした。
「天候は問題なし。良い感じで登れると思うよ。」

午前5時丁度、テント場を出発した。

ヘッドライトの明かりを頼りに緩やかに雪道を上る。
徐々に勾配がきつくなってくるが、このルートは慣れたルートであり、いくつカーブを曲がると直線ルートになるか、そして峠まであとどれくらいかは熟知している。

中山峠に着く頃には空は白み始め、横岳の稜線がはっきりと見えてきた。

約40分ほどで行者小屋に到着した。
テントが一張りあった。
まだ就寝中のようであったので大きな音だけは出さないよう注意しながら小休止を取った。


この先暫くは樹林帯のルートとなる。
雪山ならではの、しかも樹林帯ならではの一定しないルートだ。
もちろんある程度は決まってはいるルートなのだが、安全性を確保できさへすればどこでもルートになってしまうのが雪山の特徴でもある。
だから一年前と全く同じルートであることの方が稀だ。

予想通りトレースは勝手気ままな感じで続いていた。
トレースの分岐もあった。
コンパスで方向だけを確認しながら登り続けたが、途中途中で見覚えのあるポイントがあった。


暑くなってきたこともあり、AM君はジャケットを脱いでいる。
自分もどうするか迷ったが、もう少し様子を見て体感できめることにした。

「ここさへ抜ければルートは安定するから頑張ろう。」
と、AM君に言ったつもりなのだが、自身への励みでもあった。
「こんなに斜度きつかったかな?」
何度も登っているルートではあったが、あまり踏み固められていない積雪の深さに体力が奪われそうだった。

やっとのこと樹林帯を抜け視界が広がった。
目の前の「文三郎尾根」を見上げた。
空が碧い。
風もない。
文句のつけようがない雪山登山日和に嬉しさがこみ上げてくる。

今登攀しているポイントはおそらくはネット状の階段になっているところだ。
しかしながら何度も何度も通っているこのルート、未だかつて夏に通ったことがない。
だから地図と資料を見て憶測で考えるほかなかった。

「ここを登り切ったら少しフラットになっているポイントがあるからそこで一本入れよう。」
実を言えばかなり汗をかいている。
喉も渇き始めたし、ジャケットを脱ぐか中間着を薄手にしようかと考えていた。

ふとふり返ってみた。
見事である。

見事なまでに雪を纏った北アルプス連峰が一望できた。
総延長距離は分からないがそれをほぼ一望できているわけだ。


ややアップの画像。

幾たびと思うことがある。
大自然は美しい。
しかし厳しくもあり時に牙を剝く。
だからその美しさは厳しさの中からしか生まれてこない。

尚のこと雪山は美しい。

しばし北アルプスに見とれてしまったが、先を急いだ。
「よっしゃ、一服するか!」
安心して座れそうなポイントで休んだ。
まだ腹は空いていなかったが水分・塩水だけは摂った


2500mを越えた早朝の雪山にいだかれ、北アルプスを見ながら煙草をふかす。
空は蒼く風もない。

今、俺はなんと贅沢なひとときを過ごしているのだろう。

阿弥陀岳:月明かりの下で

2018年05月15日 00時45分37秒 | Weblog
テントサイトが樹林帯の中であれば風を防いでくれるが、今夜はほぼ無風であり針葉樹林の細い葉が揺れる音が聞こえてくる程度だ。
また時折「ドサッ!」という音と共に、枝に積もっていた水分を多く含んだ雪がテントに落ちてくる。

静かである。
初めて経験する静けさではないが、深夜の家の中とは違う静けさを感じる。


テントから一歩出て上を見上げると、ちょうどシラビソの樹の隙間から月が見えた。
枝先がごく僅かに揺れているのが分かった。
コーヒーカップを手に煙草を吸いながら少し歩いてみると、自分たちのテントの灯りがやけに明るいことに気付いた。
雪面であること、つまり周囲が白一色であることが尚のことテントの灯るさを増しているのだろう。


時刻はまだ19時をまわったばかり。
眠るには少し早すぎる。
「ちょっと小屋の方に行ってくる」と言い残し歩いた。

アイゼンは外しているが、「ギュッ ギュッ」という雪を踏み固める音が響いた。
小屋の窓から漏れている灯り、そして月明かりのおかげでヘッドランプは不要だった。
小屋の屋根の上にはオリオン座が「これでもか」と言わんばかりに目映かった。
そして何よりも驚いたことは寒さを殆ど感じなかったことだ。
もちろんダウンジャケットは着てはいるが、体の芯から震えが来るような寒さではなかった。
グローブも不要だった。


ふり返ってみると、雪を纏った阿弥陀岳がぼんやりと見ることができた。
長く滞在していれば必ず見ることができる風景なのだろうが、今夜は本当にラッキーだ。

外のベンチに腰を下ろしもう一本煙草を吸った。
明日のことを考えるのだが、あの滑落死亡事故のニュースが頭を掠める。
「違うルートなんだから大丈夫・・・のはずだ。」
自信を持ってそう言いきることに抵抗を感じた。
登山であれば危険はつきもの。
雪山であればそれは尚更である。
ただ、人が亡くなったばかりの同じ山に登ることにどこか気が引けた。

考えれば考えるほど滅入りそうだった。
「こんな静かな月明かりの夜にもったいない」
そうも思えた。

明日は3時に起床予定。
「やっぱり無理にでも早く寝よう」

テントへと戻る道すがら、ちょうど阿弥陀岳の上に月が重なって見えた。
もったいない風景だと思いシャッターを押したが、一眼レフであればもっと良い写真が撮れるのだろう。


さて寝るべか。

阿弥陀岳:なんちゃってステーキ

2018年05月11日 23時22分39秒 | Weblog
この日は暖かく、テントの中は更に過ごしやすかった。
手袋をして夕食の準備をする必要のないことがことのほか楽で、調理活動がスムーズにできた。

夕食のメインディッシュは海鮮鍋だが、前回の時にやった「ちょい焼き肉」が忘れられず、今回も同様に肉料理を先に食べてからとした。


先ずは粗挽きウィンナーを炒めてパクリ。
空きっ腹には最高に美味い一品だ。

続いて・・・と言ってもこれで終わりになるが、「なんちゃってステーキ」の登場。
AM君には「今日はステーキを用意してあるから期待してくれ!」などと言ったが、まさか上ヒレとか国産黒毛和牛の特上サーロインといった代物ではない。

単なる厚切りベーコンだ(笑)。
しかし侮るなかれ。
これがまた美味いのなんのって!
軽く焼くだけでOKで、タレも何も一切不要。
雪山テントの中で食べるとなれば贅沢料理に変身なのだ。


「美味いッス♪」
狭いテントの中はすぐにいい匂いで溢れた。

さて海鮮鍋の登場だが、第一弾はいつもの野菜中心の鍋。

スープの味は「あごだし汁」といって、おそらくはトビウオが原材料となっている。
サッパリとした味付けだがコクがあってこれまた美味なり。


朝食昼食とごく簡単に済ませただけに、この海鮮鍋は大正解だった。

第二弾はエビをメインにした魚介類をこれでもかと鍋に入れた。

明日は丸一日の登攀と縦走になるから目一杯食っておこう。

〆のおじやで腹十分目となった。

外はすっかり日が落ち、ヘッデン無しでは歩けないのだが、月明かりのおかげで白い雪が暗闇の中に不気味なほど綺麗に浮き出ていた。

食後の珈琲はテントの外に出て飲んだ。
飲みながら明日の予定を確認した。
「滑落事故があった南陵ルートじゃないから大丈夫だけど、東斜面の雪の緩みがどうなるかは分からない。分からないだけに早めに攻めよう。」

東陵の一部区間だけはかなり斜度がきついため、ダブルアックスを予定している。
ピッケル一本でも可能な登攀ルートではあるが、ダブルアックスの練習にはもってこいのコースだ。
AM君の技術レベルアップと経験値を高めるためにもダブルで登攀する予定でいる。

阿弥陀岳:大汗ダラダラ

2018年05月03日 22時06分29秒 | Weblog
3月26日の朝、眩しい日差しで目が覚めた。
この季節、八ヶ岳の麓の朝は気温がまだ低く車中は氷点下だった。
それでもフロントガラスの向こう側には青空が広がっている。
「絶好の登山日和だね。」
珈琲を飲みながら出発の準備を整えた。

体はまだ完全には起きてはいなかったが、天候に恵まれていることで気持ちは高揚している。
今日の予定は美濃戸口をスタートし、赤岳鉱泉小屋に向かうだけ。
そこにテントを設営してしまえば後は夕食までのんびりとできる。
だから慌てて出発を急ぐこともない。

9時過ぎに美濃戸口を出発したが、去年の同じ時期と比べればコース上の雪は少なかった。
周囲も同じであり、雪不足による若干の不安がよぎる。

美濃戸に着き休憩した。
朝食を兼ねて30分の休憩を取ったが、日差しが強くまだ歩き始めて1時間ほどなのに大汗をかいていた。
それでも汗冷えを感じることはなく、珍しいほど恵まれた好天だ。

ひたすらのんびりと歩く、一歩一歩ゆっくりと登る。
樹林帯の中は無風状態で暑さが厳しく、アルパインジャケットを脱いで歩いた。


徐々にルートの積雪も増え思わずニンマリとしてしまったが、先日(春分の日)の降雪がなかったらどうなっていただろうか・・・。
明日の天気も先ず問題はなく、あとは雪の状態だけが心配であっただけに降雪はありがたかった。

もう一本休憩を取り、この時も30分ほど休んだ。
「暑いね。でも嬉しいね。」
会話も弾むほどの天気の良さだが、この大汗には参った。
贅沢を言ったらきりはないが、吹雪かれるよりは遙かにましだろう。


テント場まであと1時間ほどとなりアイゼンを装着した。
実はこのアイゼン、今季でお役ご免となる予定である。
前爪がかなり短くなってしまい、キックステップやフロントポインティングをする際に十分に爪が効いてくれない危険な状態となってしまったのだ。
雪山シーズンを通して数回は研がなければならない為、爪が短くなってしまうことは仕方のないことであるが、このアイゼンとの思い出は数知れず。
思い入れの強いものであるだけに捨てることはできないだろうなぁ。


大同心が見えてきた。
ここまで来れば小屋までもうすぐだ。
ザックは重いが心は軽い。
でもやっぱりきついなぁ(笑)。


13時過ぎ、やっと鉱泉小屋に到着した。
早くザックを下ろしたい思いだったが、目の前の横岳縦走ルートをしばらく見ていた。
先日の降雪により森林限界線より上の降雪状況が気になって仕方がなかったのだ。

途中ですれ違った人たちにその都度確認したところ、雪はそれなりにあり十分だが日の当たる斜面についてはできるだけ早い時間帯に登った方がいいでしょうとのことだった。
つまりそれだけ直射日光による雪の緩みが危険ということだ。
AM君とも話し合い、本来予定していた「赤岳(地蔵尾根)→ 阿弥陀岳(東陵)」を逆コースとし、「阿弥陀岳 → 赤岳」に変更した。

今回の縦走コースにおいて最も斜度が厳しいのが阿弥陀岳の東陵であり、その東陵の斜面が真っ先に日が当たることになる。
故に、先ずはその東陵の斜面を早い時間帯に越えてしまう方が安全であろう。

雪の阿弥陀岳には若い頃登ったことがある。
しかし、ただついていくのが精一杯でルートの記憶は殆ど無い。
だから初めての雪の阿弥陀岳と言っても過言ではない。

さて、テント場に着いた。
設営場所を決め受付を済ませた。
幸い跡地を利用することができ、雪面は十分に固まっていたので仕上げをする程度で済んだ。
カンナで木材の表面を薄く削るように、スコップで雪面を削りできるだけ平面に仕上げた。


我が家の完成! 

「さぁて落ち着いて珈琲を飲もうか」
一服しながら珈琲を飲んだが、この時も暑さを感じていた。
夜から明け方にかけてどれだけ冷え込むかは分からないが、まだダウンジャケットを着込む必要は感じない。
薄手のミドルシャツだけで過ごすことができるし、指先がかじかむこともない。
夕食の準備までのんびりとできる。