ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

猛暑の劔岳:4度目の登攀ルート

2018年09月29日 00時40分35秒 | Weblog
長治郎のコルから見上げたルートは、登るのは今回で四回目となる。
だが決して慣れているわけではない。
何故ならここはバリエーションルート。
毎回同じ状況であるとは限らない。
分かっているつもりではあったが、初めてここを登攀した時よりも緊張感が走っていた。
すべてはあの落石が原因だった。

慎重に攻めた。
手で握る岩の状態や足をかけるポイントの状態など、一箇所一箇所を確認して登った。


あの落石の件は忘れることはできないだろう。
でも今は一挙手一投足に集中すべきだ。
どのあたりでやってしまったのか・・・。
気になることではあったが、先ずは今の行動に集中だ。

握り拳ほどの小岩が崩れ落ちる。
「ラ~ク!」と下にいるAM君に声を掛ける。
「大丈夫で~す!」
ホッとする間もなく、再び小岩の落石。
何度か起きてしまったが、問題はなかった。

少し間をおいてAM君が登ってきた。

やはりどうしても小岩が落ちる。

この区間はスタカット方式で登った。
自分が先行し、後からAM君が続く形だ。
落石に対する安全対策として二人の間に少し間隔を置くことが良いと判断した。


AM君も時々小岩や小石を落としてしまっていた。
「オッケー! 大丈夫だからそのままマイペースで来て!」
「了解です」
いいペースで登ってきている。


長治郎のコルがだんだんと遠くになってきた。


もうほんの少し登れば危険地帯が終わる。
そうすれば僅かだがフラット気味の稜線ルートになる。

時間にして20分程度だったろうか。
やっと危険地帯を抜けることができた。
「いやぁー厳しいですね。ザイルを使わないとはいえ自分一人ではとても無理でした。バリエーションって判断が本当に難しいと思いました。」
AM君の本音だろう。
挑戦する意義も楽しみも、そして難しさも通常ルートとはかけ離れている。


下っている時には気付かなかったが、小さな「ケルン」を見つけた。

自分の足元あたりに石が積まれているのがケルン。
おそらくは誰かが積み上げたものだろうが、実はこのケルン、画像からは分かり難いが自分の立っているポイントからはかなり離れた場所に積まれていた。

ケルンの方に行くに連れ、立っていられる面積が徐々に狭くなっており、実際に積まれている場所は人一人がやっと立っていられるくらいの面積しかなかった。
もちろん両サイドは断崖絶壁である。
「こりゃぁチキンゲームだな(笑)」
と言いつつ、自分も一つだけ小石を積み上げた。
足が竦むことはなかった。
そのことが嬉しかったこともあり、今日久々に笑ったような気がした。