前夜は殆ど眠れなかったこともあり、この夜は20時過ぎには眠りに就いてしまった。
予定起床時刻は3時30分。
やや遅れてしまったが4時前には起床。
早速外へ出てみた。
空が白み始め、徐々に碧みがはっきりと確認できるようになってきた。
「よっしゃ、行ける!」
小さく呟き拳を握りしめた。
この時はもう迷いはなく、通常ルートでの登攀などは頭の片隅にも無かった。
朝食用と昼食用の弁当を頂き、最終パッキングをした。
「水、行動食、救急セット、雨具、中間着よ~し。メット、ピッケル、アイゼンOK」
軽く準備運動をし、小屋をスタートした。
まだヘッデンは必要だった。
雪渓沿いに夏道を下って行くが、昨年の同じ時期と違うのは雪渓の雪解けが多いということだ。
この先スノーブリッジが出ているらしいので、今年は先ず夏道を下って行くしかない。
なるほど、確かに去年の同じ時期にこれは無かった。
やはり雪解けの量は今年の方がやや激しい。
ということはだ、雪渓全体の雪の緩みやクレパスやシュルンド、見えないスノーブリッジなどが多く存在する可能性が高いと言うことだ。
日が高くなり、雪渓に当たるようになってきた。
スプーンカットの表面がガンメタリック調に光彩陸離し始めた。
まだ表面は固く、アイゼンの爪が程よく噛んでくれているが、時間が経つにつれ緩くなってくることは明らかだ。
特に平蔵谷のラストは斜度が相当厳しいらしいし、できるだけ早い時間帯に雪渓を登り終えたい。
ここの下り斜面は良く覚えており、平蔵の出会いが近いということだ。
腹も空いてきた。
そろそろ朝食にしようかと思っていたが、適当に腰を下ろせるポイントが無くもう少し下ることにした。
平蔵の出会いに到着。
ここまで約30分程だが、この先は全面登攀斜面であり、勾配は徐々にきつくなってくる。
やはり朝食はここで済ませた方が良いだろう。
幸い腰を下ろせるだけの岩が頭を覗かせていた。
エスビット(固形燃料)でみそ汁一杯分のお湯を沸かした。
弁当はとっくに冷たくなってしまっていたが、温かいみそ汁が嬉しい。
食べながらふと思った。
初めて劔岳を目指そうと下調べをしていた頃、地図に記された別山尾根ルート以外のルートには一切目もくれなかった。
そんな気持ちのゆとりがなかったのだ。
だから去年の長治郎谷も今年の平蔵谷も夢のまた夢のようなルートだった。
ましてや単独で挑もうなどあり得ないことだった。
食事を済ませ一服し、仕上げにBCAAを飲んでみた。
普段も必ず持ち歩いてはいる物なのだが、雪山以外ではそう滅多に口にすることはない。
「今日は年に一度のスペシャルだしね。」
ちょっと苦笑いをしながら久しぶりのBCAAを味わった。
タイムスケジュールでは、平蔵谷は休憩を含めて約3時間で登攀を終える予定でいる。
途中にアクシデントがなければ・・・・、自分の体力がもってくれれば・・・、天候が良ければ・・・。
いろいろな条件はあるが、あくまでも予定は予定であり、心臓をバクバクさせての登攀だけはやめておこう。
去年の長治郎谷で懲りたしね(笑)。
ゆっくりと200歩登っては約30秒の休憩。
暫くはそれを繰り返して登攀を続けた。
たとえ「あと100歩行ける」と思っても、200歩で必ず一息は入れた。
「おっ、これっていいかも♪」
まだ登攀開始30分にも至っていなかったが、体が楽に感じた。
もちろんそれは斜度がそれほどではなかったということでもあるのだが・・・。
そんなことを考えていると、早速お出ましだ。
「こんなに早々とお目にかかってしまうのか・・・。」
中央寄りは空洞になっているかも知れないという不安はあったので、ここは小幅で登った。
「大丈夫だからゆっくり登ろう。」
見上げれば空はいつの間にか晴れ渡ってくれていた。
そして時々だが、ガスの切れ間から「平蔵のコル」と思われるポイントが見えた。
「先は長いなぁ~」
まだ始まったばかりだというのに愚痴が出た。
予定起床時刻は3時30分。
やや遅れてしまったが4時前には起床。
早速外へ出てみた。
空が白み始め、徐々に碧みがはっきりと確認できるようになってきた。
「よっしゃ、行ける!」
小さく呟き拳を握りしめた。
この時はもう迷いはなく、通常ルートでの登攀などは頭の片隅にも無かった。
朝食用と昼食用の弁当を頂き、最終パッキングをした。
「水、行動食、救急セット、雨具、中間着よ~し。メット、ピッケル、アイゼンOK」
軽く準備運動をし、小屋をスタートした。
まだヘッデンは必要だった。
雪渓沿いに夏道を下って行くが、昨年の同じ時期と違うのは雪渓の雪解けが多いということだ。
この先スノーブリッジが出ているらしいので、今年は先ず夏道を下って行くしかない。
なるほど、確かに去年の同じ時期にこれは無かった。
やはり雪解けの量は今年の方がやや激しい。
ということはだ、雪渓全体の雪の緩みやクレパスやシュルンド、見えないスノーブリッジなどが多く存在する可能性が高いと言うことだ。
日が高くなり、雪渓に当たるようになってきた。
スプーンカットの表面がガンメタリック調に光彩陸離し始めた。
まだ表面は固く、アイゼンの爪が程よく噛んでくれているが、時間が経つにつれ緩くなってくることは明らかだ。
特に平蔵谷のラストは斜度が相当厳しいらしいし、できるだけ早い時間帯に雪渓を登り終えたい。
ここの下り斜面は良く覚えており、平蔵の出会いが近いということだ。
腹も空いてきた。
そろそろ朝食にしようかと思っていたが、適当に腰を下ろせるポイントが無くもう少し下ることにした。
平蔵の出会いに到着。
ここまで約30分程だが、この先は全面登攀斜面であり、勾配は徐々にきつくなってくる。
やはり朝食はここで済ませた方が良いだろう。
幸い腰を下ろせるだけの岩が頭を覗かせていた。
エスビット(固形燃料)でみそ汁一杯分のお湯を沸かした。
弁当はとっくに冷たくなってしまっていたが、温かいみそ汁が嬉しい。
食べながらふと思った。
初めて劔岳を目指そうと下調べをしていた頃、地図に記された別山尾根ルート以外のルートには一切目もくれなかった。
そんな気持ちのゆとりがなかったのだ。
だから去年の長治郎谷も今年の平蔵谷も夢のまた夢のようなルートだった。
ましてや単独で挑もうなどあり得ないことだった。
食事を済ませ一服し、仕上げにBCAAを飲んでみた。
普段も必ず持ち歩いてはいる物なのだが、雪山以外ではそう滅多に口にすることはない。
「今日は年に一度のスペシャルだしね。」
ちょっと苦笑いをしながら久しぶりのBCAAを味わった。
タイムスケジュールでは、平蔵谷は休憩を含めて約3時間で登攀を終える予定でいる。
途中にアクシデントがなければ・・・・、自分の体力がもってくれれば・・・、天候が良ければ・・・。
いろいろな条件はあるが、あくまでも予定は予定であり、心臓をバクバクさせての登攀だけはやめておこう。
去年の長治郎谷で懲りたしね(笑)。
ゆっくりと200歩登っては約30秒の休憩。
暫くはそれを繰り返して登攀を続けた。
たとえ「あと100歩行ける」と思っても、200歩で必ず一息は入れた。
「おっ、これっていいかも♪」
まだ登攀開始30分にも至っていなかったが、体が楽に感じた。
もちろんそれは斜度がそれほどではなかったということでもあるのだが・・・。
そんなことを考えていると、早速お出ましだ。
「こんなに早々とお目にかかってしまうのか・・・。」
中央寄りは空洞になっているかも知れないという不安はあったので、ここは小幅で登った。
「大丈夫だからゆっくり登ろう。」
見上げれば空はいつの間にか晴れ渡ってくれていた。
そして時々だが、ガスの切れ間から「平蔵のコル」と思われるポイントが見えた。
「先は長いなぁ~」
まだ始まったばかりだというのに愚痴が出た。