タテバイの取り付き口へと来た。
上を見上げながらタテバイのルートについて概略を説明した。
説明しながら思ったこと。
「果たしてこの人の岩場での登山レベルはどれくらいなんだろうか・・・」
そして「この俺が他人にタテバイのアドバイスか・・・。なんか笑っちゃうな。」
そんなことを考えながらも真剣に攻略方法を説明した。
生意気にもこの自分がタテバイの説明をしている(笑)。
今回は自分が先に登攀し、AM君が後続とした。
少し登ったポイントで一端立ち止まり、様子を見た。
ゆっくりではあるが特に問題はなさそうに見えた。
ん? ペースが落ちている。アタックが始まったばかりでまさか・・・。
そこは右への移動ポイント。 ゆっくりでいいからマイペースで確実に!
自分が今いるポイントはちょっと厳しいが頑張って欲しい。
最後のほぼ90°の壁を越えればもう大丈夫なのだが、かなり苦戦しているように見えた。
「そこから最後までが厳しいですけど、きついと思ったら無理せず一息入れてください。時間を掛けてゆっくりと登ってください。」
と下に向かって言った。
返事はなかったが、顔の表情は「ちょっとやばいかな」と思える程辛そうに見えた。
しかし、それでも自力で登らなければならない訳だし、始めからそのつもりで来たのだろうし、自分と出会ったのは偶然だろうけど、自分は言葉としてアドバイスをることしかできない。
かなり時間はかかってしまったが、なんとかタテバイをクリアしてくれた。
「ここまで来てしまえばもう大丈夫ですよ。もうアドバイスは必要ないですから先に登頂してください。」
何度もお辞儀をして山頂を目指した彼だった。
正直に言ってしまえば、全くの初対面の他人様の命を預かるようなことはしたくはない。
そこまで責任は負えないし、負いたくはない。
もう勘弁してほしいと思った。
さて、お次はAM君の番だ。
まぁ特に問題はないだろうし、たくさん写真を撮ってあげよう。
取り付き開始!
順調順調!
「お~い、あんまり急ぐなよ。いい写真が撮れないから(笑)」
「わかりました~。ゆっくり登ります。」
こっち向いて「ハイチ~ズ!」
気の緩みではなく、ゆとりだ。 さぁもう少し。
ここを越えればOK。
はい、お疲れ様でした。 m(_ _)m
劔岳に登るのなら、程良い緊張感は必要だといつも思っている。
同じコースでどれほど登ろうともそれは同じだ。
2回目までのタテバイはそれなりに緊張感を持って臨んでいた。
だが今はどうだろう、昔のような緊張感はないのが事実だ。
それは「慣れ」であり「自信」でもある。
この20mの岩壁のどこにどのようなポイントがあり、腕と足をどう動かせば良いのかを知っているからだ。
「ダメだ。このままじゃダメだ・・・」
タテバイを登り終え、突然独り言のようにつぶやいた。
AM君が驚いたように「どうしたんですか?」と聞いてきたが、「いや、何でもない。俺のことだから気にしないで。」とだけ言い返した。
「慣れ」は怖い。
無意識で緊張感を失っている。
そしてそのことに気付いていない自分だ。
こんなんじゃ、いつの日か剱に手痛いしっぺ返しをくらうことになりかねない。
この先、北方稜線に入ったら100%気持ちを切り替えないといけない。
そう思った。
上を見上げながらタテバイのルートについて概略を説明した。
説明しながら思ったこと。
「果たしてこの人の岩場での登山レベルはどれくらいなんだろうか・・・」
そして「この俺が他人にタテバイのアドバイスか・・・。なんか笑っちゃうな。」
そんなことを考えながらも真剣に攻略方法を説明した。
生意気にもこの自分がタテバイの説明をしている(笑)。
今回は自分が先に登攀し、AM君が後続とした。
少し登ったポイントで一端立ち止まり、様子を見た。
ゆっくりではあるが特に問題はなさそうに見えた。
ん? ペースが落ちている。アタックが始まったばかりでまさか・・・。
そこは右への移動ポイント。 ゆっくりでいいからマイペースで確実に!
自分が今いるポイントはちょっと厳しいが頑張って欲しい。
最後のほぼ90°の壁を越えればもう大丈夫なのだが、かなり苦戦しているように見えた。
「そこから最後までが厳しいですけど、きついと思ったら無理せず一息入れてください。時間を掛けてゆっくりと登ってください。」
と下に向かって言った。
返事はなかったが、顔の表情は「ちょっとやばいかな」と思える程辛そうに見えた。
しかし、それでも自力で登らなければならない訳だし、始めからそのつもりで来たのだろうし、自分と出会ったのは偶然だろうけど、自分は言葉としてアドバイスをることしかできない。
かなり時間はかかってしまったが、なんとかタテバイをクリアしてくれた。
「ここまで来てしまえばもう大丈夫ですよ。もうアドバイスは必要ないですから先に登頂してください。」
何度もお辞儀をして山頂を目指した彼だった。
正直に言ってしまえば、全くの初対面の他人様の命を預かるようなことはしたくはない。
そこまで責任は負えないし、負いたくはない。
もう勘弁してほしいと思った。
さて、お次はAM君の番だ。
まぁ特に問題はないだろうし、たくさん写真を撮ってあげよう。
取り付き開始!
順調順調!
「お~い、あんまり急ぐなよ。いい写真が撮れないから(笑)」
「わかりました~。ゆっくり登ります。」
こっち向いて「ハイチ~ズ!」
気の緩みではなく、ゆとりだ。 さぁもう少し。
ここを越えればOK。
はい、お疲れ様でした。 m(_ _)m
劔岳に登るのなら、程良い緊張感は必要だといつも思っている。
同じコースでどれほど登ろうともそれは同じだ。
2回目までのタテバイはそれなりに緊張感を持って臨んでいた。
だが今はどうだろう、昔のような緊張感はないのが事実だ。
それは「慣れ」であり「自信」でもある。
この20mの岩壁のどこにどのようなポイントがあり、腕と足をどう動かせば良いのかを知っているからだ。
「ダメだ。このままじゃダメだ・・・」
タテバイを登り終え、突然独り言のようにつぶやいた。
AM君が驚いたように「どうしたんですか?」と聞いてきたが、「いや、何でもない。俺のことだから気にしないで。」とだけ言い返した。
「慣れ」は怖い。
無意識で緊張感を失っている。
そしてそのことに気付いていない自分だ。
こんなんじゃ、いつの日か剱に手痛いしっぺ返しをくらうことになりかねない。
この先、北方稜線に入ったら100%気持ちを切り替えないといけない。
そう思った。