ベースキャンプに戻った頃は、すでに太陽は山陰に隠れていたと思う。
この頃の個人装備と言えば、たとえば、ベースキャンプ内では登山靴を脱いでサンダルでくつろぐ等と言った考えはなかった。
言い換えればサンダルを余分な装備と思っていたのだ。
今ならそんな考えはなく、むしろ足の圧迫疲労を癒すために装備品の一つとして持って行くだろう。
また、雨具にしても、「ポンチョ」で間に合わせていた。
当時「ゴアテックス」が出回っていたかどうか記憶にはない。もし出回っていたとしても、おそらくは今以上に高価な物であり、手が出なかった代物だと思う。
さて、夕食を済ませ、みんなでココアを飲みながら今日の登山談議に花が咲いた。
前穂高岳の過酷なルートに、聞けば聞くほど「北穂でよかったぁ」としみじみ思ったものだ。
かと言って北穂から奥穂のルートが優しかったかというと、決してそんなことはない。
「ガレ場」「くさり場」の連続があり、独り言さえ出なかった緊張感を伴うルートでもあった。
上司に聞いてみた。
「明日のルートはどんな感じなんですか? 今日と比べてどうでしょうか?」
「なぁに、何度も通っているけど、今日のルートに毛が生えたくらいだよ。『馬の背』『千畳敷』『ロバの耳』『ジャンダルム』なんてたいそうな名前は付いてるけど、ゆっくり進めばどおってことはないルートだから大丈夫!」
事前に書籍で下調べをし、写真では見ていた。注意事項や難易度も知ってはいた。
が、実際に自分の足で進むのは初めて。
不安はあったが、上司のこの言葉に安心した。そう、実際に足を踏み入れるまでは・・・。
三日目の夜、バーボンを一杯だけストレートで飲み、明日のために寝た。
この頃の個人装備と言えば、たとえば、ベースキャンプ内では登山靴を脱いでサンダルでくつろぐ等と言った考えはなかった。
言い換えればサンダルを余分な装備と思っていたのだ。
今ならそんな考えはなく、むしろ足の圧迫疲労を癒すために装備品の一つとして持って行くだろう。
また、雨具にしても、「ポンチョ」で間に合わせていた。
当時「ゴアテックス」が出回っていたかどうか記憶にはない。もし出回っていたとしても、おそらくは今以上に高価な物であり、手が出なかった代物だと思う。
さて、夕食を済ませ、みんなでココアを飲みながら今日の登山談議に花が咲いた。
前穂高岳の過酷なルートに、聞けば聞くほど「北穂でよかったぁ」としみじみ思ったものだ。
かと言って北穂から奥穂のルートが優しかったかというと、決してそんなことはない。
「ガレ場」「くさり場」の連続があり、独り言さえ出なかった緊張感を伴うルートでもあった。
上司に聞いてみた。
「明日のルートはどんな感じなんですか? 今日と比べてどうでしょうか?」
「なぁに、何度も通っているけど、今日のルートに毛が生えたくらいだよ。『馬の背』『千畳敷』『ロバの耳』『ジャンダルム』なんてたいそうな名前は付いてるけど、ゆっくり進めばどおってことはないルートだから大丈夫!」
事前に書籍で下調べをし、写真では見ていた。注意事項や難易度も知ってはいた。
が、実際に自分の足で進むのは初めて。
不安はあったが、上司のこの言葉に安心した。そう、実際に足を踏み入れるまでは・・・。
三日目の夜、バーボンを一杯だけストレートで飲み、明日のために寝た。