ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

猛暑の劔岳:山が怖い・・・

2018年09月19日 01時51分17秒 | Weblog
何とか気を落ち着かせ再びコルを目指し下った。

(「なんであんなところに・・・」)
(「まさかあれが置き石とは・・・」)
(「危なかった。一歩遅れていたら俺の足が潰れていた」)
(「下に登山者はいなかったはずだ。いるわけがない。」)

落ち着いたつもりであったが、さっきの出来事が脳裏を掠めてばかりだった。
(「いかん! 今やることに集中しよう。」)
わかっているつもりなのに、また「なんで・・・」となる。
自分のメンタルの弱さをさらけ出しながらの縦走となってしまっていた。


もうすぐ長治郎のコルというところで、かなりの段差があるポイントがあった。


「ここを下りればいいだけ・・・ちょっと待て。この段差じゃ復路の時に絶対に登れない。」
一応足をおろそうと試みたが、下りることはできてもこれだけの段差を登ることは無理だとはっきりわかった。
「やめよう。他を探そう。」
AM君にそう言ったものの、どこにあるのか・・・。
安全に往復できる巻きルートを探した。
だがなかなか見つからない。
唯一巻けそうなポイントと言えば、岩壁にへばりつくようにしながら何とか越えられそうなところが一ヵ所だけあった。
ホールドポイントは数ヵ所あったがスタンスポイントが一ヵ所だけ。
しかもつま先程度しか置くことができなかった。
「ここしかないか・・・」
半ば諦めに近い思いでトライしたが落ちれば怪我だけじゃ済まないだろう。
(「まさかこの岩がグラってくることはないよな・・・」)
どうしてもさっきのことがトラウマになってしまっていた。

たった1メートルほどの距離を巻いて越えるにもこの有様だ。
こんなことで長治郎の頭を越えられるのだろうか・・・。

ここまでくればもう大丈夫というポイントからはAM君に先にコルへと下りてもらった。


コルから見上げた裏剱。
想定していた以上の難所だった。


ここで一服した。
煙草をふかしながら下ってきたルートを見上げた。
「さっきのはあのあたりだったかな。」
落石現場と思えるポイントを指さした。
「すごい斜面ですね。ひとたまりもないですね。怪我が無くて良かったです。さっきは○○さんが本当に死んじゃうと思ってしまいました。」

改めて見ると確かにすごい斜面だと痛感した。
痛感しながらもルートは分かった。
何の印もないが、頂上へと向かうルートが自分には見える。
ただ、安全に戻れる保証はどこにもない。


富山湾をバックに一枚。


ついでに自分も一枚。
しかし、顔からは満足感も充実感も見て取れない。

いよいよ頭だ。
取り付きポイントは「あそこ」と言って指を差した。

取り付き箇所は分かるが、果たしてその先がどうなっているのか・・・。
去年と同じであってくれれば助かるのだが、そううまくは行くまい。
ここに来るまでにも去年とは違った状況になっていたポイントは幾つもあったし、ましてや今立っている場所はバリエーションルートのど真ん中だ。

山は楽しくもあり怖い。自然は美しくもあり恐ろしい。

あれから約二ヶ月が過ぎた。
敢えて言うのなら、7月26日、あの日は丸一日が試練の連続だった。