ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

嗚呼! ジャンダルム・・・「一足お先に・・・」

2013年12月17日 00時51分34秒 | Weblog
小屋で受付を済ませ、荷物を部屋の入り口まで持っていった。
昨日の小屋と比べればそれほどの混雑振りではない。
それでも100名近い中学生の団体がいることで、この先どうなるのかとも思ったが、食事も部屋も全く別であることが分かり少々ホッとした。

着替えを済ませ、荷物の整理が終われば後は夕食までのんびりできる。
ここまで来てしまえば、明日はゆっくりと約1時間程度の下山のみだ。
「ROOKIEさんと会うのも一年振りかぁ・・・」

そう、この山行の終わりには自分にとってサプライズ的なことが待っている。
ROOKIEさんがわざわざ富山から車で新穂高温泉まで迎えに来てくれることになっているのだ。
初めはバスを乗り継いで自分が富山まで行くつもりでいたのだが、「迎えに行きますよ!」というROOKIEさんの申し出についつい甘えてしまったのだ。
会える楽しみを考えると、もうほとんど登山は終わってしまったようにも感じる。
下山の1時間はおそらくは樹林帯の中をのんびりと下るだけだろうし、昨日今日とを比べれば、あっけないほどなのだろう。

そう言えば、昨年の夏のことだ。
ROOKIEさんがジャンダルム縦走を終え、西穂山荘からの下りの1時間が最も長く感じたと言っていた。
それは、ナイフリッジが連なる岩稜群からの解放感故のことだろうと推測する。
絶対によそ見などできない緊張の連続が終止符を打ち、いきなりゆっくりと鼻歌を歌いながらでも下山できるルートへと変わってしまえば、まるで気の抜けてしまったコーラか、燃え尽き症候群的な心境になったとしてもごく当たり前のことだと思う。
それが証拠に、自分も早くソフトクリームが食べたくて仕方がないのだ。
いつもなら完全に下山してからの恒例行事的になっているコーラとソフトクリームなのだが、小屋に入る前に売店にあったソフトクリームの看板が確実に視界に入ってきてしまった。
その瞬間、既に自分にとっての山行はほぼ終了となった。(なんて単純なんだ)


「まっ、いいか!」
俺もまだまだ甘いなぁと思いつつも、早速外へ出て売店コーナーへと足を運んだ。
その時だった。
小屋には外へ行く人のためにサンダルが置いてあるのだが、そのサンダルを履いた途端、「あぁ~終わったんだなぁ・・・」
としみじみと思えてならなかった。
傷だらけのぶ厚く重い登山靴ではなく、素足に履いたサンダル。
それは開放感でもあり、目的への達成感でもあり、そして毎度の事ながら一抹の淋しさでもあった。

一足先に味わうソフトクリームの味は格別だった。
すでに残暑の時期ではあるが、この冷たさは「美味い!」としか言い表せない。
食べ終えた後、煙草を吸いながら今日のルートを思い返してみた。
やはりきつかったというのが当てはまる。
27年前とは体力も持久力も大きく違うし、「へばったなぁ。歳とったなぁ・・・」と嫌でも感じた。
だがそれを上回る充実感だけは確実にあった。

小屋に着いてから雲は取れ、青空が覗いている。
「秋は何処へ登ろうか・・・」
空腹ではあれ、ジャンダルム縦走の満足感で胸は一杯だった。

嗚呼! ジャンダルム・・・「ヒト・ゴー・ヨン・フタ 状況終了!」

2013年12月08日 01時48分38秒 | Weblog
西穂の頂で30分近くも休憩をとってしまったが、ここから先は今までのような難所らしき難所は無い(はず・・・)。
先ずは「ピラミッドピーク」へ向けて出発した。
目指す方向はガスが発生している。
天候の大きな崩れはないが、あと約2時間の縦走の間だけでも晴れ間が欲しいのが本音だ。

まだ小さなアップダウンが続く。
ポイントによってはナイフリッジのような所もあり気は抜けない。

冬季でも西穂山荘から独標までであれば割とスムーズに縦走できるのだが、独標から西穂高岳までとなるとルートの状況は急変する。
今が将にそのルート上にいるとういことだ。
自分の力量では、おそらくそれは無理だろうと思う。
トライしてみたい気持ちはあるが、独標止まりだろう。


ピラミッドピークに着いた。
ここは写真を撮っただけで即通過。
次の休憩予定地である独標まではこのままで行こう!

少し進むとガスが取れてきた。
独標と思われるポイントの杭が見えた。
そしてその先には西穂山荘の赤い屋根が見えた。

「やっとここまで来たか・・・」「ついにここまで来たか」「腹へった」
いろいろな思いが脳裏を掠めて行く。
だが、それと同時に無意識のうちに緊張の糸がプツリと切れてしまったようだ。
いつもながらの自分の悪い癖だ。

それまでは気が張っていたこともあり、右膝のことなどほとんど忘れていたのだが、ここに来て急に膝の裏側の痛みに気付いた。
しかも鼓動と同時に「ズキンズキン」と鈍痛が走る。
キネシオテープとサポーターでガッシリと固めてはあるものの、昨日と今日のアクロバティックなロング縦走では最後までもたなかった。


ここまで来た嬉しさと膝の痛さとを抱えたまま残り1時間となった。
実を言えば、この独標には約80名の中学生が来ていた。
今夜の宿である西穂山荘から来たことは間違いないだろう。

一か月ほど前のことだった。
西穂山荘に予約の電話を入れたとき、その日は100名近い中学生と一緒になりますと言われたが、別に気にするほどのことでもなく予約を済ませた。
独標はその中学生と引率教員の団体で賑わっている。

先生が話しかけてきた。
「どこから来られたのですか?」
「今日は奥穂の小屋からです」
そんな会話だったが、この時間帯にここにいるということだけで、どこから来たかなど聞くまでもあるまい。
逆算すれば自ずと答えは一つに絞られる。
とは言え、あまり山を知らない人にしてみれば分かるはずもないか・・・。

ワイワイガヤガヤとした独標での喧騒を後にして小屋へと下った。
ところが、ここからの下りが厳しかった。
ルートの状況から言えば、今日一日の中で最も楽な状況であるはずなのだが、僅かな段差でも右足を着地させる度に「ズッキ~ン!」と膝に響いた。
はっきり言ってしまえば、右足を引きずるようにしながらの最後の縦走となってしまっていた。
「情けなぁ・・・。やっぱり気が張っている時とでは違うのかなぁ・・・」
そんな思いでひたすら段差を下る。
少しずつではあるが、赤い屋根が近づいてくる。
・・・はずなのだが、こんな時ほどその距離はなかなか縮まらない気がする。
確実に縮まってはいるのだろうが、いらつくほど「まだか・・・」と思う。

最後の100mくらいが一番長く感じただろうか。
しかも大きな岩の段差のおまけつきだった。

「ヒト・ゴー・ヨン・フタ時」(15時42分)西穂山荘に到着。
所要時間約9時間。
休憩と寄り道の時間を除けば約7時間の縦走だった。
本日のすべての状況(縦走)終了!

嗚呼! ジャンダルム・・・「み・水が出ない~!」

2013年12月03日 00時01分07秒 | Weblog
昼食を食べるにしても先ずは安全第一とし、落石や滑落の危険性が無いポイントを選ばなければならない。
またこの狭いルート上であれば、通る人の邪魔にならないことも重要になってくる。
そうなると自ずとポイントは限れてくるだろう。
昼食の時間にはまだ早い遅い云々とは言ってられない。
「ポイントが見つかったら即食べる!」


ちょうど人が来る。
その先に見える小さなPEAKを越えた辺りに良い場所があればそこで食べることにしようと決めた。
ごく小さなスペースだったが、「ここなら・・・」と決め、小屋で作っていただいた弁当を食べた。
先ほどの方にすれ違いざまに聞いたところ、西穂高まではそう遠くない距離にある。
そこまで行けば2時間ほどで今日の予定地に到着だ。
天候の大きな崩れを暗示するような雲も無い。
大休止を取らずにここまで来たこともあり、ランチタイムは30分とした。
先ずは一服、次に水分補給、つぎに飯、そして食後の一服と珈琲。


食べる物も食べたし、珈琲も飲んだし、靴を脱ぎゆっくりと手足を伸ばすこともできた。
「ふっかぁ~~つ(復活)!!!」
とばかりに再スタートを切ったのはいいが、ハイドレーション内の水の残量を確認することを怠り、そしてそのことに気付かぬまま歩き出した。


くさり場が見えたが、右手にはホールドできそうなポイントがうじゃうじゃとあったので、ここはくさりは不要。


久々に見る青空。
気分は上々だったが、この岩場の登りにおいても頭部(ヘルメット)をぶつけてしまった。
気の抜けないルートはまだまだ続く。
そして何となくではあるが、自分は同じポイントをグルグルと回っているような錯覚に陥りそうになっていた。
岩の壁を登る。稜線を歩く。岩にしがみつきながらトラバース。そして下る。
大きな変化や特徴の無い似たような岩場を延々と繰り返しながらぐるっと一周しているだけのような感覚だった。


時折振り返りながら自分の通ってきたルートを確認した。
(写真の指先は下を向いており、「あそこを下ってきた」という意味)

時間的に言ってもそろそろ西穂なんだけどなぁ・・・。
と思っていると、やっと標識のあるPEAKにたどり着いた。
休憩を含め、ここまで6時間20分。

昼食を食べていた若者がいたので写真をお願いした。
互いに山の話に花が咲き始め、ここではなんと30分もの大休止をとってしまった。
もちろん水分補給も・・・と思い、ハイドレーションの飲み口をくわえ噛んだのだが、水は殆ど出てこなかった。
なんどやっても結果は同じ。
一瞬背筋が凍りついた。
「あーやってしまったか!」
という思いと、ここから目的地までは2時間だし、水分無しでも何とかもつだろうという思い。
正直のどはかなり渇いている。
目の前の二人に、少しだけ水を分けてもらおうかとも考えたが、あと2時間だし・・・。

ハイドレーションの水が既に無くなってしまっていること気付いた二人が「水ならありますよ」と言ってくれた。
ありがたい言葉だったが、ザックの中をガサゴソとやっていると、すっかり忘れていた予備の水筒が見つかった。
(「そっかぁー、そうだ、これがあったんだ」)
長時間縦走であることから、万が一の時のために用意していた1リットルの予備水がザックの中から出てきた。
数口だけ飲み、後は2時間のために残しておいた。

今となっては少しは笑える話だが、あの時は冷や汗をかいた。
そして「2時間程度なら大丈夫」という甘い考えがあったのも事実。
「途中に水場のない長時間の縦走だから」という理由だけだったが、本当に助かった。
水は足りなくなるくらいなら余る方が良い。

改めて教訓としなければなるまい。