ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

吾妻連峰縦走~烏帽子山の下り(3)

2010年09月30日 21時20分03秒 | Weblog
岩場の下りは樹林帯に入っても続いた。
巨大な岩が前方を塞ぎ、そしてその連続だった。

この写真は今回の縦走で撮った写真の中で、最も気に入っているものの一枚だ。
彼女が写っているから・・・ではない(笑)。
まったくの偶然ではあるが、彼女の動きと岩を乗り越えなければならないという真剣な眼差しが本当に素敵なのだ。ブログでは表情を見せられないのが残念。

この樹林帯の岩場を越えても、次は昭元山への登りが待っている。
今振り返れば、烏帽子山の下りから昭元山への登りが、往路の中で最もきつく苦しかった。
みんなには心配をかけてしまったが、昭元山の登りの途中で古傷の膝に痛みを感じた。
「ここさえ越えれば、こんな急勾配はもうない。」
そう思って登ったのだが、情けなくも膝をさすりながらの登坂となってしまった。

吾妻連峰縦走~烏帽子山の下り(2)

2010年09月30日 20時59分33秒 | Weblog
「危険な所ほどマイペースで」
ジャンダルムや大キレットのときと比べれば何のことはない唯の下りだが、みんなにとってはそうは行くまい。
とにかく安全第一で、確実に着地、確実にホールドをしながらゆっくりと下りるよう言った。

このような岩場の状況になるといつも思うことがある。
全く同じコースを登る、あるいは下る。殆どの場合女性にとっては不利なんだろうなぁと。
仮に一歩の高低差が1メートルとする。
身長180㎝の男性であればその1メートルを超えるのに足だけで越えられるだろう。しかし女性の場合は足が届かない。届かせるためには両腕を使ってどこかにホールドし、いったん体を空中に預ける状態にしなければならない。
そしてその動きを何度も何度も繰り返さなければならないことがある。
それだけで使う体力にかなりの差が生まれてくることになってしまう。
疲労度が余分に蓄積されれば、脚力や腕力、更には危険に対する認知力や回避速度にまで影響してきてしまうのだ。
いくら彼女が体力自慢でもここはゆっくりと下りるべきだと判断した。

吾妻連峰縦走~烏帽子山の下り(1)

2010年09月30日 20時39分15秒 | Weblog
予定していた時間の遅れはまだ取り戻せていない。
地図と時計とをにらめっこしながら「何とか日が暮れる前には・・・」それだけだった。
休憩時間を減らす。休憩回数を減らす。或いはスピードアップ。
どれをとるか、どれを組み合わせるか、ずっと考えながらの縦走だった。

烏帽子山の山頂に到着。
ここから見下ろす下りのコースを見て、ここでの休憩時間を短くすることに決めた。
巨岩を積み重ねた状態のコース。
「こりゃ時間がかかるな。絶対に俺のペースで下りたら誰かが怪我する。」
そう言い切れる険しさをもっていた。
状況によっては「3点確保」で下りなければならないかも知れない。
みんなにはあまり緊張感や危機感をもたせ過ぎないようにし、ビビリ君と戯れた。

吾妻連峰縦走~おニューのR&L!

2010年09月30日 19時47分05秒 | Weblog
今回の縦走登山に備えて、みんなそれなりに新しい登山アイテムを購入してきた。
うん、素晴らしい!それだけこの縦走に対して真剣に向かい合っていると言える・・・かな。

TOTOさんは、真新しい食器を購入。
夕食の時にそれを利用してカレーライスを食べた。何とも嬉しそうな顔。見ていて自分も嬉しくなってくる。
Tさんは、その殆どがおニューのアイテムばかり。実に羨ましい。その最たる物が「ハイドレーションリザーバー」だ。
ザックの中に水を入れるタンクを内蔵し、そこからチューブが外に伸びている。喉が渇けばたとえ歩いている状態のときでも、そのチューブをくわえ水分補給ができるという優れもの。
ちなみにザックは自分とお揃いの「ゼロポイント・チャチャパック45」。
彼女の名誉のために言っておくが、お揃いというのは全くの偶然である(笑)。

さて、ここで登場するのがビビリ君のニューアイテム。
本人がすねると困るので、彼の物も説明しておく。
出発直前、いよいよ登山靴を履くという時だった。
「見て下さい。買っちゃいましたよ、これ!」
と言って見せたのが、左右独立形状の登山用ソックスだった。
ウール製の厚手は当たり前。なんと右足専用、左足専用と、形状が独立しているというこれまた優れものだった。更には決して左右を間違えて履くことのないようにそれぞれ「R」「L」とプリントされていた。
「ほぉ~すごいな。やる気満々だね!」
そうほめたのだったが・・・。

昼食時、足の圧迫を和らげるため登山靴を脱いだビビリ君。
自慢のおニューソックスが顔を見せた。
その時Tさんが突然笑い出した。
「アッハッハッハ な・なんでぇ~?! 右(R)と左(L)が違ってるよ」
みんな「まさか」という思いで彼の自慢のソックスを注目した。
しばしの笑いの後。
「なんで気付かなかったの?」
「よく靴ずれを起こさなかったな」
「左右独立ってのは左右兼用なんだ」
なんだかんだと言われながらも返す言葉のないビビリ君。

ビビリ君。
君はどうしてこうもみんなを和ませてくれるの。
君の一言一言が、一挙手一投足が疲れた心と体を癒してくれるよ。

それにしても御丁寧に「R」「L」とプリントまでされているはずなのだが・・・。
履いた瞬間に形状の違和感はなかったのだろうか。ちょっと気になる(笑)。

吾妻連峰縦走~備えよ!

2010年09月30日 00時01分17秒 | Weblog
「備えよ!」
この言葉は、自衛隊幹部が有事を想定してよく使う言葉だ。
事が起きてからでは遅いということ。
そしてこの言葉は登山にも十分に当てはまる。

突発的な怪我や病気は致し方ない。しかしある程度は自分で未然に防ぐ努力はしなければならない。
同時に登山における有事を想定し、それに見合った応急処置の薬品等を持参することは極めて重要なことであり、必須でもある。
今回、この縦走初参加に向けて「T」さんは登山靴を購入した。
もちろんいきなり当日になって初めて足を入れるなどという愚かなことはしない。
できる限り靴を履き、足を慣らせて本番を迎えたのだ。(さすが!)
それでも「ひょっとしたら」という思いは自分にはあった。
これは経験からであり、靴慣らし(足慣らし)を何度もしてきたはずなのに、いざ山を歩いてみたら「靴ずれ」を起こしたことが何度かあったのだ。
彼女の場合、両かかとに靴ずれを起こしかけていた。登りの時はどうしてもかかとに靴が触れてしまう。それが繰り返されて靴ずれを起こすのだ。
幸いに「水ぶくれ」はできておらず、部分的に赤く腫れ上がっている状態だった。
「よかったよ。まだこれなら大丈夫。」
そう言ってガーゼを当て、テーピングテープとキネシオテープで固定した。
「持ってきて良かった」そう思えた。
たかが靴ずれだが、されど靴ずれだ。
縦走にはとんでもないマイナス要因となってしまう。

吾妻連峰縦走~飯じゃぁ~♪

2010年09月29日 23時33分41秒 | Weblog
家形山を下れば、ニセ烏帽子山までは比較的フラットな樹林帯を進む。
遅れた時間を少しでも取り戻すにはここしかなかった。
みんなには申し訳なかったが、やや急ぎ足で歩いた。
雨が降らなかったことも幸いし、若干ではあるが時間を稼ぐことができた。

午前2時半に起き、現地に到着したのが7時。そこで朝食は摂り、途中行動食も摂った。それでも運動量と起きている時間の長さを考えれば腹ぺこだ。
水分、塩分、糖分、そして炭水化物の摂取は縦走において大切なのだが、できれば「プラスαの温かい食べ物(飲み物)」があれば、登山においては小さな幸せを感じることができる。
今日の昼飯はドライカレーとおにぎり。そしてオニオンスープと食後の珈琲だ。
早速湯を沸かし、フリーズドライのドライカレーに湯を注いだ。
そしてみんなには暖かな珈琲を。
残念ながら曇っていて視界は良好とは言えなかったが、1900メートルの高地で食べる味は格別だった。もちろん仲間と一緒に食べる楽しさもある。
心から落ち着くひとときが、山の頂で静かに流れていた。

吾妻連峰縦走~家形山からニセ烏帽子山へ

2010年09月29日 22時51分39秒 | Weblog
一切経山のガレ場を下り、五色沼の畔へと出た。
ここで小休止。今回残念ながら参加できなかった同僚のO氏へ連絡をしてみた。
「行きたかったぁ~」という想いが言葉から伝わってきた。

ここから家形山への登坂は、再びガレ場的なルートとなっていた。
さすがにビビリ君も気を引き締めているようだった(笑)。
しかし自分が心配していたのは「T」さんだった。
出発前にザックを持たせてもらい「おっ、軽い。羨ましい」と思った。だが、泊を伴うだけに日帰りトレッキングと比べればそれなりに重量はある。
そして再びガレ場の登坂とくれば、ビビリ君以上に気を配ってあげなければならない。
が、しかしだ。いたって涼しい顔で登り切った。
「大丈夫?」
「ぜんぜん!」
なんと頼もしいことか。

一方TOTOさん。
彼にはある意味気の毒なのだが、那須連峰の時と同様に「しんがり」を努めてもらった。
グループでの登山の場合。先頭はサブリーダーで、2番目に最も体力や諸々な心配が予想される人を置く。今回は黄色いジャケットを着た人だ(笑)。
そしてしんがりはリーダーが努め、後方から全体を把握する。
本来の計画では、ルートを知っているO氏が先頭となり、最後方を自分が努めることになっていた。
だが、O氏のいない今回、自分が先頭を歩くのが筋であり、最後方をTOTOさんにお願いするしかなかった。
2度目の経験で後ろから全体を把握してもらうなどと、そんなことは頼めない。その分自分が頻繁に振り返りながら進むべきだ。

さて、家形山山頂での出来事。と言うか笑えるハプニングがあった。
とある黄色いジャケットを着た人が、「ふぅ~」と大きなため息をつきながら、休憩するために腰を下ろした。
下ろした先には丸太が横たえてあった。
ゴロ~~ン。ドテッ!
見事に背中から地面にひっくり返ったのだ。
何が起きたのかというと、腰を下ろした瞬間にその丸太がくるりと回転し、黄色いジャケットを着た人はその勢いのまま後方にひっくり返ってしまったのだ。
今回ばかりは「気の毒に・・・」とは思えず、みんな爆笑。
もちろん怪我がなかったことは嬉しいが、黄色いジャケットを着たあの人はどんな時でも笑いと癒しをもたらしてくれる貴重な存在だ。


吾妻連峰縦走~ある意味期待通り!

2010年09月29日 22時20分38秒 | Weblog
ガレ場の下りは、一歩間違えると大怪我につながる。
小幅でゆっくりと、軽く膝を曲げ確実に地面をとらえながら下る。決して気を緩めてはならない場所なのだが・・・。

この写真はある意味登山のHOW TO雑誌に掲載できるものだ。
『黄色いジャケットを着ている人をよく見て下さい。ルンルン気分で、まるでスキップをしているが如くガレ場を降りているのがわかりますね。これはガレ場を下りるときの危険で最も悪い例です。後方の赤いジャケットを着ている人はどうでしょうか。前の人と比べてもわかりますように、小幅でゆっくりと、そして軽く膝を曲げた状態で降りているのがわかると思います。これが安全で最も怪我をする確率の少ない正しい下り方です。』

おそらくはこんなコメントが写真につけられるのではないか(笑)。

さて、この直後のことだった。
先頭を下りて行く自分の耳に「ガガガー ズズー」という、明らかに誰かが転倒したと分かる音が聞こえてきた。
音から判断するにさほど大した転倒ではないことはわかった。そして誰が尻餅をついたのかも、振り返ることなく直感でわかった(笑)。
「ほら、やったぁ!」
幸い怪我はない。ないが、へたをすれば前を下りている自分が転倒滑落の巻き添えをくらうことになっていた。
「ガレ場の下り方は教えたろう。ここはビビリでいいんだから。ビビッて下りた方がかえって安全なんだから。」
立つ瀬のないビビリ君だった(笑)。
だが、誰もが少なからず期待していた通りの展開が本当に起きるとは・・・。
怪我だけはしてくれるなよ。
と言うより、自分が怪我をさせてはならない立場にあることをあらためて思い直した。

吾妻連峰縦走~共有と分かち合い

2010年09月29日 00時55分52秒 | Weblog
一切経山山頂に着いたが、猛烈な強風に襲われた。
今回で3度目のこの山だが、こんな強風は初めてのこと。
おそらく気温は12℃ほどなのだろうが、汗をかいて冷えた体にはこの強風は堪えた。
風速1mの風が吹けば、体感気温は1℃下がる。
つまり、汗をかき冷えた体であるが故に、体感気温はわずか数℃、或いはマイナスであろうと推測する。
早くこの場から歩き出さなければと考えたが、どうしてもみんなに見せたい風景があった。
少し歩けば山頂から見下ろす形で次のルートへとつながり、そこから見えるのが「五色沼」だ。
本来晴天であれば、紺碧の空がそのまま湖面に映し出され、周囲の緑と碧との素晴らしいマッチングが見られるのだが、あいにくの曇り空だった。
それでもどうしてもこの風景を見せたかった。
「うわぁ~~!」「おぉ~~すげぇ~!」
その言葉が嬉しかった。
自分の足でしか来ることができない場所。汗をかいてこそ得られる感動を味わってほしかった。

さぁ、ここからは危険なガレ場の下りだ。
みんな気をつけて。特にビビリ君。
でもある意味君に期待してるよ(笑)。

吾妻連峰縦走~仲間

2010年09月29日 00時09分35秒 | Weblog
みんな職場の仲間であり、自分にとっては後輩にあたる。
TOTOさんを山に誘ったのは自分だ。同じ部署にかかわった関係で、何気なく誘ってみたところ「はい、是非・・・。でも自分なんかで大丈夫でしょうか。」
彼らしいどこか控えめな言葉であったが、一つ心配なことがあった。
お子さんがまだ幼く、二人とも就学前だということだ。
つまり育児に近い家庭環境であり、TOTOさんが登山で家を空けるということは、育児や家事全般が奥さん一人の手に委ねられてしまい、奥さんに負担が大きくのしかかってしまうことになる。
それがきががりだった。
「いえいえ、まったく問題ないです。大丈夫ですから。」と、笑って答えてはいたが、自分も経験しているだけに、TOTOさんと奥さんに申し訳ない思いだ。

紅一点の「T」さん。
はっきり言って美人である。
しかしその顔からは想像もできない体力と持久力と度胸の持ち主。
「女はわからん」の典型だろうか(失礼)。
アウトドアーが大好きだとは聞いていたが、初めての登山が縦走でしかも泊を伴うわけだから、彼女にとっていろんな場面で不利な状況になることは必至だ。
であるにもかかわらず「是非一緒に!」と言ってきた。
男性であるこっちが気を遣う場面もあるだろうが、逆に気を遣わせまいとする彼女の気持ちがいじらしかった。

さてさて、仕方がないのでついでにもう一人。
「ビビリ君」の登場だ。
メンバーの中で一番若い。はっきり言って自分とは親子ほどの年の隔たりがある。
社会人になって何か趣味を持ちたいという思いがあったが、何をしてよいのかがわからなかった。そんなときに彼と出会ったのがきっかけだった。
今ではいっぱしの登山家気取りだが、自分から見ればまだまだ初心者。だが何故か可愛い存在だ。
今回の縦走でこんなことがあった。
縦走の途中で「これはこうなんですよ」とか、「ここはこんな風に」などと、Tさんに登山の知識や技術のノウハウを語っていた。
もちろんすべて自分から得たものばかりだ。
「おいおい、あまり言ってしまうと持ちネタが無くなるぞ」と自分が茶化すと「はい、もうすでに8割使ってしまいました」と。一同大爆笑だった。
そんなビビリ君がいてくれたおかげで、心身が疲れていても常に笑いのある、癒された縦走となってくれた。