前剱から一緒だった三名とはここでお別れになる。
少し寂しい思いもあったが、自分にとっての縦走はここからが本番の様なもの。
ここから北方稜線へと下り、長治郎の頭(づこ)辺りで昼食を食べピストンで下山するのが今回の目的だ。
握手を交わしお互いの無事を願って別れた。
目指すは先ずは「長治郎のコル」。
このルートは何度も通っているとは言え、下るのはまだ二度目に過ぎない。
一度目は二年前の夏。
下っている途中でとんでもない岩雪崩を起こしてしまった苦い経験がある。
思い出したくもないことだが、忘れてはいけないことでもあろう・・・。
劔の頂上からすぐの所はまだ比較的穏やかな岩稜ルートであり、振り返れば劔のてっぺんで休憩している多くの登山者の姿が見えた。
北方稜線方面へと向かう者は自分一人。
何か急に心細くなってしまった思いだが、単独での本格的登山が久しぶりであることも原因なのだろう。
長治郎谷、そして長治郎の頭が見えてきた。
ここからでは残雪は全く見えない。
だが、二年続けて昼食を食べたあの「モアイ像」のポイントが目視できた。
昼食はそこでも良かったのだが、今回はどうしても長治郎の頭にこだわった。
長治郎の頭は4回通ってはいるが、その4回の内三度は違うルートでの通過となった。
つまりは残雪の積雪量や、崩れ落ち堆積した岩による通過不可能などにより違うルートを見つけなければならなかったのだ。
これがバリエーションルートの証でもある。
だから長治郎の頭はいつも通過することが一杯一杯の状態で、このポイントが具体的にどのようになっているのかなどゆっくりと見て回る余裕が無かったのだ。
今回はどうしてもこのポイントで食事をしてみたかった。
赤い線が過去に越えてきた3ルート。
ルートははっきりと見えてはいるが、それよりも先ずはコルに下りなければならない。
登るよりも緊張する下りだ。
2年前に危うく下りかけた大きな溝があった。
一昨年よりも、去年よりも更に深くえぐられており危険を感じた。
溝を避け、左手よりルートを探した。
何とかコルまで下りることはできたが、やはりこの辺りの下りはルートファインディングのミスが起きやすく、危険が多いと改めて感じた。
コルから先は初めてここを通過したルートで挑んだ。
もちろん逆ルートになるのだが、崩れ落ちていた岩は少なく頭を谷側から巻いて通過することができた。
問題はここからだ。
できるだけ頭のてっぺんを目指した。
・・・が、いくらルートファインディングをしてもてっぺんへと繋がるルートは見つけることができなかった。
悔しい思いではあったが、自分の経験、知識、技術ではこの辺りが限界なのだろう。
それでもまだ時間に余裕があったことからもう少しだけルートを探してみた。
実際に登れそうなルートを見つけることはできたのだが、登ったはいいが、果たして下りることができるだろうかという不安があった。
(そう、往復できか否かを考えて挑むのがバリエーションルートにおけるルートファインディングの基本である。)
座って昼食を食べられそうなポイントは見えてはいるのに・・・。
自分の限界、そして単独での限界だった。
仕方なく去年通過したルートを探した。
実はやや斜面気味になってはいるが、確か座って休憩することができるスペースはあったはずだ。
たいしてあてにはならない自分の記憶だが、行くだけ行ってみようと決めた。
見覚えのあるフィックスロープがあった。
「まだあったんだ。でも今日はこれを使って下りるのはやめた方がいいだろうなぁ。来たルートで戻ろう。」
やはり記憶は当てにはならなかった。
座るには十分なスペースだが、思っていた以上に斜度があったのだ。
「まぁいいか。とにかく腹も減ったし。」
そう思いザックを下ろし昼食準備に取りかかった。
赤○のポイントで昼食を食べた。
と言ってもカップ麺だが(笑)。
残念ながらこの時の写真は無い。
バーナーでお湯を沸かす為の僅かな平坦(に近い)スペースがあるだけで、ザックをそのまま置いてしまうとズルズルと落ちてしまう程の斜度だったからだ。
カラビナでザックをフィックスロープに掛け固定した。
ちょっと緊張する昼食となったが、目的達成に満足した。
ギアを一つでも落としてしまうとやっかいなことになるので、できるだけザックから出す物は少なくした。
本当はここで珈琲を飲みたかったのだが、それは復路での劔のてっぺんですることにした。
来たルートを戻り、再びコルへと下りた。
「上りなら楽なんだよなぁ」と、独り言を言いながら再び劔の頂上を目指す。
すると、下っている時には気づかなかったあの岩のポイントに着いた。
夏には黄色い花を咲かせていたであろう「ミヤマダイコンソウ」の名残がある岩だ。
このポイント、この岩、そして岩の僅かな裂け目から咲いているミヤマダイコンソウ。
忘れもしない、初めてこのルートを通った時に、この花を見て感動したものだ。
「こんな所に・・・。こんな岩の裂け目から・・・。凄いな。」
もう6年も前になろうか。
やがて劔の頂上が見えてきた。
早く珈琲が飲みたい。
少し寂しい思いもあったが、自分にとっての縦走はここからが本番の様なもの。
ここから北方稜線へと下り、長治郎の頭(づこ)辺りで昼食を食べピストンで下山するのが今回の目的だ。
握手を交わしお互いの無事を願って別れた。
目指すは先ずは「長治郎のコル」。
このルートは何度も通っているとは言え、下るのはまだ二度目に過ぎない。
一度目は二年前の夏。
下っている途中でとんでもない岩雪崩を起こしてしまった苦い経験がある。
思い出したくもないことだが、忘れてはいけないことでもあろう・・・。
劔の頂上からすぐの所はまだ比較的穏やかな岩稜ルートであり、振り返れば劔のてっぺんで休憩している多くの登山者の姿が見えた。
北方稜線方面へと向かう者は自分一人。
何か急に心細くなってしまった思いだが、単独での本格的登山が久しぶりであることも原因なのだろう。
長治郎谷、そして長治郎の頭が見えてきた。
ここからでは残雪は全く見えない。
だが、二年続けて昼食を食べたあの「モアイ像」のポイントが目視できた。
昼食はそこでも良かったのだが、今回はどうしても長治郎の頭にこだわった。
長治郎の頭は4回通ってはいるが、その4回の内三度は違うルートでの通過となった。
つまりは残雪の積雪量や、崩れ落ち堆積した岩による通過不可能などにより違うルートを見つけなければならなかったのだ。
これがバリエーションルートの証でもある。
だから長治郎の頭はいつも通過することが一杯一杯の状態で、このポイントが具体的にどのようになっているのかなどゆっくりと見て回る余裕が無かったのだ。
今回はどうしてもこのポイントで食事をしてみたかった。
赤い線が過去に越えてきた3ルート。
ルートははっきりと見えてはいるが、それよりも先ずはコルに下りなければならない。
登るよりも緊張する下りだ。
2年前に危うく下りかけた大きな溝があった。
一昨年よりも、去年よりも更に深くえぐられており危険を感じた。
溝を避け、左手よりルートを探した。
何とかコルまで下りることはできたが、やはりこの辺りの下りはルートファインディングのミスが起きやすく、危険が多いと改めて感じた。
コルから先は初めてここを通過したルートで挑んだ。
もちろん逆ルートになるのだが、崩れ落ちていた岩は少なく頭を谷側から巻いて通過することができた。
問題はここからだ。
できるだけ頭のてっぺんを目指した。
・・・が、いくらルートファインディングをしてもてっぺんへと繋がるルートは見つけることができなかった。
悔しい思いではあったが、自分の経験、知識、技術ではこの辺りが限界なのだろう。
それでもまだ時間に余裕があったことからもう少しだけルートを探してみた。
実際に登れそうなルートを見つけることはできたのだが、登ったはいいが、果たして下りることができるだろうかという不安があった。
(そう、往復できか否かを考えて挑むのがバリエーションルートにおけるルートファインディングの基本である。)
座って昼食を食べられそうなポイントは見えてはいるのに・・・。
自分の限界、そして単独での限界だった。
仕方なく去年通過したルートを探した。
実はやや斜面気味になってはいるが、確か座って休憩することができるスペースはあったはずだ。
たいしてあてにはならない自分の記憶だが、行くだけ行ってみようと決めた。
見覚えのあるフィックスロープがあった。
「まだあったんだ。でも今日はこれを使って下りるのはやめた方がいいだろうなぁ。来たルートで戻ろう。」
やはり記憶は当てにはならなかった。
座るには十分なスペースだが、思っていた以上に斜度があったのだ。
「まぁいいか。とにかく腹も減ったし。」
そう思いザックを下ろし昼食準備に取りかかった。
赤○のポイントで昼食を食べた。
と言ってもカップ麺だが(笑)。
残念ながらこの時の写真は無い。
バーナーでお湯を沸かす為の僅かな平坦(に近い)スペースがあるだけで、ザックをそのまま置いてしまうとズルズルと落ちてしまう程の斜度だったからだ。
カラビナでザックをフィックスロープに掛け固定した。
ちょっと緊張する昼食となったが、目的達成に満足した。
ギアを一つでも落としてしまうとやっかいなことになるので、できるだけザックから出す物は少なくした。
本当はここで珈琲を飲みたかったのだが、それは復路での劔のてっぺんですることにした。
来たルートを戻り、再びコルへと下りた。
「上りなら楽なんだよなぁ」と、独り言を言いながら再び劔の頂上を目指す。
すると、下っている時には気づかなかったあの岩のポイントに着いた。
夏には黄色い花を咲かせていたであろう「ミヤマダイコンソウ」の名残がある岩だ。
このポイント、この岩、そして岩の僅かな裂け目から咲いているミヤマダイコンソウ。
忘れもしない、初めてこのルートを通った時に、この花を見て感動したものだ。
「こんな所に・・・。こんな岩の裂け目から・・・。凄いな。」
もう6年も前になろうか。
やがて劔の頂上が見えてきた。
早く珈琲が飲みたい。