ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

みんなで劔岳:撤収そして感動の出会い

2017年10月27日 01時21分13秒 | Weblog
できればもう一本ビールを飲みたかったところだったが、何はともあれテントを撤収し小屋に来て受付を済まさねばならない。
受付はできるだけ早いほうがよい。
何故なら小屋が混んでいる時は、食事ができるグループは受付順となっているからである。
腹が減っていれば食事は早いほうがいいに決まっている。

各々撤収に取りかかった。
劔を愛でながらテントを撤収する。
なんと贅沢なことか・・・。

今日一番頑張ったKMさん。
本当にお疲れ様でした。 m(_ _)m
早く熱いシャワーを浴びて、またビール飲んでね!


殿を努めてくれたAM君。
岩稜地帯もかなり慣れたと思うし、次はどこを狙う?


このままテントでもう一泊したいところ。
でも、劔沢小屋だけは絶対に外せない。
新平さんやいつものスタッフに会いたい。

名残惜しい思いもあったが、劔沢小屋の食事に思いを馳せテント場を後にした。
ここから小屋まではほんの10分程度だ。
小屋に着き受付を済ませた。
新平さんからはあらためて小屋の説明を受けることはない。
「大丈夫ですよね?・・・(笑)」
と聞かれ「はい、ほかの二人にも自分から説明をしておきますから。」
と答えた。

ざっと荷物の整理を済ませ、早速シャワーだ。
早く髭を剃りたい~!
「石鹸やシャンプーはできるだけ使用しないでください」というルールはあるが、時間をかけゆっくりと洗えばその様な物を使用しなくても十分にサッパリできる。
ただ、髭剃りだけはフォームを使わせてもらった。

「ビールもいいけどやっぱコーラかな・・・」
小屋の庭に出て、冷えたコーラを飲みながら劔岳を見上げた。
(「登ったんだなぁ・・・。みんなで登ったんだなぁ・・・」)
毎年登っているはずの劔であるが、今回は新鮮な思いで登ることができた。
これも「仲間」という存在が大きい。
な~んて感傷に浸っていると、独りの小柄な登山者が小屋に到着したのが見えた。
後ろ姿ではあったが、(「えっ、あの人って・・・。 ん? ひょっとして・・・。」)
僅かだが横顔を確認することができた。
(「やっぱりそうだ。間違いない! 多賀谷さんだ!」)

少し時間をおいてから小屋のスタッフに確認をした。
多賀谷さんだった。

多賀谷 治さん。
国際山岳ガイド。劔・立山を中心とした一帯において、ガイドとしてこの人の右に出る者はいない。
そして、映画「劔岳 点の記」においてはチーフガイドを務めた将に「名人」である。
嘗てこの小屋で一度だけお会いする機会があり、ほんの数分だったが話しをすることができた。
もちろんご本人はそんなことは覚えているはずもなかろう。
しかし自分にとってはかけがえのない思い出として鮮明に記憶として残っている。

恥ずかしながら胸が高鳴った。
ある意味憧れの人でもある多賀谷さんとの二度目の出会いだ。
おそらくは、明日ガイドとして誰かを案内するためにここに前泊するのだと推測した。
ということは今夜は多賀谷さんと同じ宿で眠るということ。
何かまた話ができればいいなぁと勝手に思ってしまった。
できれば写真を撮らせてもらえれば更にラッキーなのだが・・・。

多賀谷さんが明日の準備を終えた頃合いを見て、思い切って話しかけてみた。
するとどうだろう、「以前、ここで会いましたよね。 何となくですが覚えてますよ。」
おぉ~何と言うことだ!!!!!
こんなちんけな登山者を覚えていてくれただなんて。
そして「そうですか、毎年登っているんですか。素晴らしいことですね。」
たとえそれが社交辞令だったとしても最高のほめ言葉を頂いてしまった。
「あのぉ、もしできれば一緒に写真を撮らせていただいてもよろしいでしょうか?」
恐る恐る尋ねてみたところ、なんともあっけない返事を頂いた。
「こんな年寄りでいいんですか? じゃぁせっかくだから外で山をバックに撮りましょうか。」

(「えぇ~! こんなに気さくでいいの? 俺なんかにこんなに気さくでいいの?」)
恐れ多いというか、もったいない返事というか。
ありがたいを通り越して拍子抜けするほどの気さくさであった。
「偉ぶらない」そこがまた多賀谷さんの素晴らしいところであり、自分にとって憧れるポイントなのだ。

二人を呼んできてみんなで記念写真を撮った。

握手までしていただいた。
(「この手で世界中の山々を登ってきたんだ。この手が・・・この手が世界の山を知っているんだ。」)
感動と嬉しさのあまり涙が出そうになってしまった。


AM君とKMさんは、多賀谷さんがどのような人であるのか、今ひとつ分かっていない・・・のではなく、知っていないだけ。
「すっげーんだから。とにかく俺の憧れの山男なんだよ」
と、この後詳しく説明をした。


多賀谷さんとのツーショット。
あの多賀谷さんとツーショット。
ありがたい。
本当にありがたい。
ましてや俺なんぞのことを覚えていてくださった。

今日再開できたのは全くの偶然だが、山の神様に感謝だ。
劔岳に感謝だ。