友とお喋りをする。「コヘレトの言葉」について話すと、以前読んだ詩を紹介してくれる。
感動したので書き取ったと言って、次の詩を読む。
曽野綾子著 「老いの才覚」にも載っていた。作者は無名詩人である。
夢を見た、クリスマスの夜。 浜辺を歩いていた、主と並んで。
砂の上に二人の足が、二人の足跡を残していった。 私のそれと、主のそれと。
ふと思った、夢のなかでのことだ。 この一足一足は、私の生涯の一日一日を示していると。
立ち止まって後ろを振り返った。 足跡はずっと遠く見えなくなるところまで続いている。
ところが、一つのことに気づいた。 ところどころ、二人の足跡でなく、一人の足跡しかないのに。
私の生涯が走馬灯のように思い出された。
なんという驚き、一人の足跡しかないところは、 生涯でいちばん暗かった日とぴったり合う。
苦悶の日、悪を望んだ日、利己主義の日、試練の日、やりきれない日、自分にやりきれなくなった日。
そこで、主のほうに向き直って、あえて文句を言った。
「あなたは 日々私たちと共にいると約束されたではありませんか。 なぜ約束を守ってくださらなかったのか。
どうして、人生の危機にあった私を一人で放っておかれたのか、まさにあなたの存在が必要だった時に」
ところが、主は私に応えて言われた。
「友よ 砂の上に一人の足跡しか見えない日、それは私がきみをおぶって歩いた日なのだよ」