或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

talk to her

2007-01-18 06:57:31 | 350 映画
久々に琴線に触れる映画に巡り合いました。スペイン人のペドロ・アルモドバル監督の作品「talk to her」(2002年)。この映画を知ったのは、Amazonでブラジルの歌手カエターノ・ヴェローゾのCDを探していた時。たまたまサントラ盤のジャケットが目に入って。赤と青のコントラストと、女優レオノール・ワトリングの横顔が印象的で。題名も変な日本語訳がついていない。

これはと思いDVDをレンタルして観たらこれがマル。素晴らしかった。芸術と哲学の香りがして。派手なシーンはほとんどなし。物語は淡々と進んでいく。音楽と映像が美しくそこはかとなく心に染みる。愛する相手が事故で植物人間になり同じ病院に入院したことから知り合った二人の男の友情の物語。共通するのは女性に対する愛。問われているのはその形。傑作でしたね。

道徳と非道徳、自然と超自然。ある新聞が”天国と地獄の中間地帯”という表現を使っていて、なかなかうまいなあと。そこに自然に引きずり込まれている自分に気づく。下賤なシモネタ話や滑稽なサイレント映画をわざと挿入することにより、看護士ベニグノの倒錯的な愛が逆にピュアなものに見えてくる。その仕掛けが上手い。さすがアカデミー賞の脚本賞の受賞作。

そんな中で印象的だったのが、主人公のジャーナリスト、マルコが病院で寝ている時に夢を見るシーン。なんとカエターノ・ヴェローゾ本人が登場。横でチェロを弾いているのは、坂本龍一のアルバムでも紹介したジャキス・モレレンバウム。曲は”ククルククパロマ”。歌も良かったけど、それ以上だったのが集まった観客の幸せそうな表情。おそらくそこは天国だったのでしょう。

面白かったのはカミさんのコメント。えらく感動している自分を見て、「モラルがない人の好みかもね」だって。うーん、鋭い。確かにラストでのマルコの微笑みには、この世のものとは思えない色気を感じたなあ。いけないことへの予感のような。

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