或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

ミーナの行進

2007-01-10 06:30:48 | 010 書籍
図書館に予約して待つこと3ヶ月。ようやく読了した小川洋子の「ミーナの行進」(2006年)。彼女の小説はけっこう読んでいます。芥川賞を受賞した「妊娠カレンダー」(1991年)をはじめとして、初期のものを中心に。女性らしい品のある文体の中に、人間の根源に潜む”邪悪”がうまくブレンドされていて、独特の世界がある。そこに彼女なりの美学が感じられて。TVで見た時も、少女のような屈託のない顔立ちと喋り方が、”邪悪”とのギャップを感じさせ印象的だった。

ところが「ブラフマンの埋葬」(2004年)を読んだ時に、それまでと全く違う雰囲気にビックリ。いつ”邪悪”な話が出てくるのか期待していたけど、これが全く出てこずじまい。端的に言えば現代のメルヘン。ツッコミのいないボケ二人のオチのない漫才みたいな感じ。違うか。今回の「ミーナの行進」も、完全にその延長線。彼女の外見のまんま。うーん、期待していた路線と違う。

内容は、主人公である中学生の朋子が、家庭の事情で1年間、裕福な伯母の家で暮らす日常を描いたもの。”ミーナ”とは、その家に住んでいる一つ年下の従妹の名前。”行進”とは、この家で飼われているコビトカバのポチ子の背中に乗って彼女が通学する姿。1970年代の雰囲気を、ミュンヘンオリンピックとか、当時の世相を織り交ぜながら、ほのぼのと描いている。

印象に残ったのはマッチの話。最近は見ないですね、ライターばかりで。ミーナの趣味がマッチの収集。自分がマッチを使っていたのは、煙草を吸う時か花火をする時ぐらい、大昔の話だけど。今の時代にマッチをみると懐かしい。写真は、六本木にあるジャズクラブ「サテンドール」に行った時に持ち帰ったもの。煙草はとっくの昔にやめているのに、妙に懐かしくて。

まあ新しいキャラということで理解するしかないか。でもこれだけの直球は自分にはちょっとツライ。「博士の愛した数式」(2003年)をまだ読んでいないし、DVDも見ていないけど、それで正解かも。

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