或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

フィッシュストーリー

2008-07-08 06:24:22 | 010 書籍
このあいだ伊坂幸太郎の最新作「ゴールデンスランバー」の記事を書いた時に、彼のひとつ前の作品「フィッシュストーリー」(2007年)を読んでいないことに気づいた。あまり話題にならなかったのかなあ、知らなかったということは。中身は短編が4つ。”動物園のエンジン”、”サクリファイス”、”フィッシュストーリー”、そして”ポテチ”。正直なところ期待はしていなかったけど。

ところが読んでみてビックリ。素晴らしい。「ゴールデンスランバー」とはえらい違い。肩の力の抜け具合も絶妙。特に気にいったのが”動物園のエンジン”と”フィッシュストーリー”。特に後者は伊坂の本領発揮といったところ。音楽ネタがベースなのも楽しい。そして読んだ後には独特のさりげないロマンチシズムがさらりと漂ってきて。久しぶりに伊坂を堪能したって感じ。

売れないロックバンドが残した最後のアルバム。その中の曲中にある”無音の間奏”。そこからおバカな空想が生まれて。それがニ十数年前、現在、三十数年前、十年後と時空を越えて繋がっていき、気づけば空想が現実に。とにかく小ネタとシカケが満載。それもこの物語だけじゃなく、「ラッシュライフ」とか昔の作品に出ていたと思われる人物が続々と登場してくるし・・・。

「僕の孤独が魚だとしたら、・・・」、「僕の勇気が魚だとしたら、・・・」、「僕の挫折が魚だとしたら、・・・」と、自分を魚に例えた引用が随所に。そのうえ鍵を握る曲のタイトルというのが”魚の歌(fish story)”。英訳が巻頭に掲載されていた。ホラ話。大げさな話。釣り師が、自分の釣果を実際より誇張して言いがちなことに由来するのだとか。なかなか渋いタイトルをつけるよなあ。

確かによくある話かも。5cmぐらいサバを読むのはザラだから。でも自分の仲間内では友人が常にメジャーを持っていてキチンと測定するから嘘が言えない。それでももめるのが大台ぎりぎりの時。無理に魚を引っ張ったりして。でもまあ確かにその差は大きいからなあ。ちなみに上の大昔の写真は60cmと言いたいところだけど残念ながら58cmで、真鯛としては自己ベスト。

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