或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

中国行きのスロウ・ボート

2007-11-23 07:34:54 | 010 書籍
最近の話だけど、村上春樹の短編をごっそり買い込みました。というのも前に読んだ「神のこどもたちはみな踊る」(2000年)と「東京奇譚集」(2005年)がしっくりきたから。それでどうしてこれまで彼の短編集を読んでいなかったのか考えてみた。思い当たったのが買ったものの読まずに埃をかぶっていた最初の短編集、「中国行きのスロウ・ボート」(1983年)。何故かって?

理由はいくつかあって、表題がジャズのスタンダード曲"On a slow boat to China"からのパクリで、しかも"slow"の日本語訳が”スロウ”になっていてダサイ。それと曲がそんなに好きじゃない。ベタな歌謡曲調ツーファイブでアドリブがやりにくいから。

そんなたわいもない理由で機会損失をしていた訳だけど。これからは一応年代順に読んでいき記事にするつもり。いざ最初に読んだこの本の中では、やはり表題作はダメ。でもとても気に入ったのがあった。「土の中の彼女の小さな犬」と「午後の最後の芝生」。アプローチは違うけど、どちらもその淡く切なくもある独特のまったり感と無常感が、そこはかとなく哀愁を誘う。

読み終わって面白いと思ったのが歳月の経過による村上の作風の変化。やはり20年前は彼も若いし、良い意味で片意地を張っている。1980年代前半というのは高度成長時代が終わってオイルショックで冷や水をかけられた後で、その後バブル景気に突入するまでの過度的な時代。虚無感が漂い、ディスコに行って踊っているのがおバカで一番楽しかった、そんな時代。

題名つながりで、演歌系サックスによる"On a slow boat to China"の代表盤でも紹介しておきますね。最初がテナーの巨人ソニー・ロリンズの初リーダーアルバム「Sonny Rollins with the Modern jazz quartet」(1951年)。次がアルトの大御所、フィル・ウッズの「Woodlore」(1957年)。古き良きバップの時代には、こういう楽しい曲が似合います。

中国行きのスロウ・ボート中国行きのスロウ・ボート

Sonny Rollins with the MJQSonny Rollins with the MJQ      WoodloreWoodlore