或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

鎌倉大谷記念美術館

2007-11-02 06:45:14 | 300 絵画
東京周辺で何か企画展をやっていないかと調べた時、興味をそそったのが、鎌倉大谷記念美術館で開催されていたヴラマンク展。彼の作品は各地の美術館にけっこう置いてあるし、5年前にはひろしま美術館で「ヴラマンク・里見勝蔵・佐伯祐三展」が開催されたので、けっこう身近かなあ。佐伯の師匠だけに彼に通じるその画風も気に入っていたし。

ここはもともとホテルニュー大谷の前会長であった大谷米一氏の別邸。こういう個人美術館というのは、作品の数そのものは少ないけど、オーナーの趣味が随所に感じられて味わい深い。途中たまたま道を聞いたおじさんが親切な人で、同じ方向だったこともあって道案内をしてくれて。知らなければ迷いそうな道を歩いていくと、やや高台の閑静な住宅街の中にありました。門からアイビーに囲まれたエントランスを登っていくと、そこは美術館というより落ち着いた雰囲気のセレブの邸宅だった。

館内に入ってまず驚いたのが掃除が行き届いていたこと。こういうのってとても大事。それから邸内を案内される感じで廊下や階段、各部屋に展示されている作品を見て回ったけど、それまでの自分の中のヴラマンク像を覆すという意味で新鮮だった。確かに彼の若い頃の作品はほとんど見たことがなかったし。セザンヌそっくりの画風の時代があったとは驚きだった。

それにしても居心地がいい。1Fに素敵なテラスがあって、置いてある観葉植物や窓の外に見える庭の樹木や湘南の海が、あたかも自分が住んでいる気持ちにさせてくれる。こんな所で絵を見たり、音楽を聴いたり、小説を読んだりできたらなあ。

上の写真は今回の展示で一番のお気に入りの「錫の酒つぼのある静物」(1926年)。ちょうど廊下の端に展示してあって、絵の前にソファーが置いてあったから、そこに座って眺めたけど、窓から入ってくる淡い光と程よく調和して、眠ってしまいそうな優雅な時間が流れた。でもオーナーっていいなあ、こんな雰囲気を独り占めできて、なんて思ったりもしたかな。