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或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

Re-born はじまりの一歩

2009-03-09 06:20:35 | 010 書籍
「アンソロジーというのは、なかなか残酷な企画かもしれない」というのが「Re-born はじまりの一歩」(2008年)を読んだ後の感想。そういえばずいぶん伊坂幸太郎の小説を読んでいない。何か新しいのはないかなと探して、図書館にある「モダンタイムス」(2008年)をネットで予約したのはいいけど、いつもの如く数十人待ちでいつになるか分からない。それならばと彼の他の作品をチェックしていて見つけたのがこの本。予約が入っていなかったので、すかさず借りて読んでみた。

7人の作家が競演しているのだけど、共通のテーマは”新たな出会いと出発の物語”。作家は、宮下奈都、福田栄一、瀬尾まいこ、中島京子、平山瑞穂、豊島ミホ、そして伊坂幸太郎。お目当てである伊坂の「残り全部バケーション」は、いかにも彼らしい作品だけど、なんと言えばよいのか、彼が主催する学校を卒業した生徒が彼を真似て書いた作品という感じ。つまりテクニック的には完全に伊坂、だけどほのぼのとしたいつもの空気が感じられない。ということで彼にしてはイマイチの部類かな。

残酷な企画と最初に言ったのは、ほぼ同じ長さの短編を一度に読むと、作家の技量の差がモロに分かってしまうから。今回の7人では、伊坂は置いておいて、瀬尾まいこが突出していた。後はどんぐりの背比べ。人はそれぞれだから、どれを気に入るかは好みの問題。ただし技量はそうはいかない。アマチュアじゃないのか?と思われた作家も何人かいたから。

瀬尾の作品は初めてだったけど、上手い。それと軸がぶれない。その意味では伊坂に通じるものがある。とりたてて派手な仕掛けはないのだけど、知らない間に彼女の世界に浸っている自分に気づく。読み終えた時に、読んでいたことを忘れるくらい。この「ゴーストライター」という短編は、「戸村飯店青春100連発」(2008年)の序章として書かれたらしいので、いつか本編を読んでみるつもり。登場する中華料理店の息子である2人の兄弟のきめ細かな心理描写は、もう名人の域に達している。

Re-born はじまりの一歩Re-born はじまりの一歩

サグラダ・ファミリア

2009-02-23 06:11:42 | 010 書籍
「白い薔薇の淵まで」(2001年)を借りる時に、図書館のWEBで中山可穂の作品を検索している時に見つけたのが「サグラダ・ファミリア[聖家族]」(1998年)。タイトルを見て、スペインのバルセロナにあるガウディが設計した建物が脳裏に浮かんで。

読んでいて主人公の響子がピアニストだったので親近感が湧いたのは確か。極めつけは小説のポイントにもなっているコンサートでの演奏曲。ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。昨年の小山実稚恵のコンサートで終演後にサインをもらったのがこの曲のCD。数あるピアコンの中でもお気に入りの曲。なんか”つながる”なと。それもあって、ついつい物語に引き込まれて。

いつになくクールな文章が主人公の芸術家らしい雰囲気を漂わせている。中山作品ではお馴染みのレズビアン、いや”ビアン”。初めて知ったけど、どうもその世界では”レズ”とは言わず”ビアン”というらしい。その彼女が、かつての”ビアン”の相手の女が生んだ男の子と、その子の父親の相手だった”ホモ”の男と3人で暮らし始めるというストーリー。複雑な設定ではある。

後半どうも日常的な場面が多くなり芸術的な雰囲気が薄れたけど、全体としてはまずまず楽しめた。それで読み終わって浮かんだのがひとつの疑問。サブタイトルの”聖家族”の意味が分からない。調べるとサグラダ・ファミリアというのはスペインのカタルーニャ語で”聖家族”という意味。ガウディの建物も、別名”聖家族贖罪教会”とか”聖家族教会”と呼ばれているとか。

ところで”聖家族”って何?と新たな疑問が湧いたのでさらに調べると、キリスト教では父ヨセフ、母マリア、子キリストの3人を指すのだとか。つまり登場する3人を例えているわけか。両親とは血がつながっていない子供を育てるというのも”処女懐胎”を匂わせているのかも。ただし流派によって解釈が違うみたいだし、ややこしそうなので素人が深入りするのはやめたけど。

上の画像は大原美術館にある有名なエル・グレコの「受胎告知」(1590-1603年)。この美術館の代名詞にもなっている作品で何度も観ているけど、今回宗教について少し勉強したおかげで、ようやくタイトルの意味が分かった。ちょっと情けないか。

サグラダ・ファミリア[聖家族](新潮文庫)サグラダ・ファミリア[聖家族](新潮文庫)<br>

白い薔薇の淵まで

2009-02-11 06:26:15 | 010 書籍
中山可穂の小説「白い薔薇の淵まで」(2001年)を読んだ。彼女の作品は印象的だった「ケッヘル」(2006年)以来だから2年ぶり。第14回山本周五郎賞を受賞したらしいから出来は良いのだろう。少し引いていたのは内容がレズビアンを扱ったものだったから。

図書館で書棚から取ると、なんと表紙が女性のヌード。さすがに前からじゃなく後ろからだったけど。その時に借りたのがたまたま1冊だけで、しかも受付がキレイ系の若い子だったから、なんか借りにくかった。まあそんなことはどうでもいいけど。

ふとしたきっかけで若き女流作家と年上の平凡なOLが出会い、惹かれあい、関係を持ち、そして愛欲の日々が続くというストーリー。極めて日常的な文章で物語は進んでいく。そのかなりの部分が愛欲描写。自分の場合、欲情する対象は女性だけなので、ホモだとかレズだとか、どうも同性同士の行為というのが現実的にあり得ないだけにイメージが涌かなくて。せいぜい避妊しなくていいから楽だと思うくらい。だから読んでいてリアリティが感じられない。しかしそれを超越して心が揺さぶられた。

小説を読んでいて、ある特定のパラグラフに魅せられることはあまりない。でもこの小説では、はっきりと。抜粋すると、”塁は何度でも天国へ連れていってくれた。いや、それはむしろ、地獄へのはじまりだったのかもしれない。”に続く”午後の病室のベッドの中で、わたしたちは白い薔薇の淵を見た。”という部分。なんかね、すーっと超自然的な世界へ誘われて。

その白い薔薇の花びらは、夢の中で見る最愛の女性の涙。”塁はずっと、ずっと、ずっと、ずっと、あそこでわたしを待っていたのだ。わたしは塁と行くつもりだった。白い薔薇の淵まで行くつもりだった。”、というラストで再び唐突に浮遊する幻想的な空間。モノクロの世界。遠くからキース・ジャレットの「ザ・ケルン・コンサート」(1975年)[試聴]のラストチューンが聴こえてきた。

文庫/白い薔薇の淵まで文庫/白い薔薇の淵まで CD/The Koln ConcertCD/The Koln Concert

村上ソングズ

2009-01-26 06:18:16 | 010 書籍
このところ哲学書をむさぼるように読んでいるのだけど、さすがに疲れる。いつの時代も、よくもまあこんな暇な奴がいたもんだと思いつつ、熱中している自分もどっちもどっちという感じはする。さすがに少しは息抜きをと、図書館の中をブラっとしていた時にたまたま見つけたのが村上春樹と和田誠の「村上ソングズ」(2007年)。対談集かと思って中を見るとそうじゃない。

彼らが自分の好きな曲とお気に入りのアルバムを紹介するというもの。といってもほとんど村上が選曲していて、30曲近くの中でジャズが半分、ポップスが半分。どれもがそこそこ有名な曲ばかり。この本では特に歌詞に重点が置かれていて、村上自身が歌詞を和訳しているし、生まれた背景や当時の世相を絡めて曲に対する彼の想いが綴られている。これがなかなか味がある。さりげなく挿入されている和田のイラストも文章に程よくマッチしているし。なんだかねえ、ほのぼのとして癒される。

そんな中でとりわけぐっときた曲が”さよならを言うたびに(Ev'rytime we say goodbye)"。コール・ポーターが作った隠れたバラードの名曲。発表されたのが1944年だから半世紀以上も前なんだ。自分としては詩の最後の、”...but how strange the change from major to minor. Ev'rytime we say goodbye"というフレーズが好きで、村上は”これほど美しい愛の歌はないのに、それはあっという間に悲しみの歌に転じてしまう。あなたにさようならを言うたびに。”と訳している。なんてロマンティックなんだろう。

それでアルバムを2枚。本の中でも紹介されているジューン・クリスティがスタン・ケントンのピアノ伴奏で歌っている「duet」(1955年)[試聴]とコルトレーンの「My favorite things」(1960年))[試聴]。前者は今思えば白人女性ジャズヴォーカルの創成期。後者はマッコイとエルヴィンが加わったコルトレーンジャズの創成期。共に久しぶりに聴いてみたけど、時代の香りがしたなあ。

          村上ソングズ村上ソングズ

DuetDuet My Favorite ThingsMy Favorite Things

男の隠れ家

2008-12-29 05:04:23 | 010 書籍
今日はなんとも寂しい話。日経ネットに出版社「あいであ・らいふ」の自己破産の記事が掲載されていて。帝国データバンクによると、関連会社と併せて負債総額は約25億円。景気が急速に悪化する中で、ネットに押されて斜陽産業となっている出版業界はよけに厳しいのだろう。自分の眼に止まったのは、この会社がお気に入りの月刊誌「男の隠れ家」を発行していたから。

そういえば最近とんと本屋に入らない、新聞も以前ほどは読まないし。会社だけでなくプライベートでもペーパーレスが浸透している。この間久しぶりに本屋に入ったら新鮮だった。雑誌の表紙の見出しを読むだけでも刺激になる。本屋と言えば立ち読みをする時に必ず手に取っていたのが「男の隠れ家」。まさにチョイ悪な中年オヤジ向け。最初からピーンときたから。

この雑誌の主なテーマは趣味と旅行。ジャズもそのひとつ。増刊号を含め数回取り上げていて、少し抜粋すると、★ジャズを巡る旅★港町ジャズ紀行★ジャズコラム「70年代の香り漂う、ジャズ喫茶マッチコレクション」★音の書斎 ~くつろぎの音楽空間~隠れ家が選ぶオーディオの名品★旬を旅する、石川紀行 【第一回】魯山人の愛した加賀路をゆく....といった具合。

こんな記事を並べられると、頭の中に自然に妄想が浮かんでくるのが楽しくて。出張と偽って若い女の子と2泊3日ぐらいで旅行に出る。もちろん雰囲気を感じさせる街へ。夜は郷土料理を食べて地酒を飲む。その後ほろ酔い気分で地元のジャズクラブへ。宿に帰れば満天の夜空を見上げながら貸切露天風呂で疲れを癒す。なんて感じでね。まさに隠れ家的匂いがぷんぷん。

定期購読率が低下して売り上げが減少していたらしいけど、そんなことなら毎月買ってあげておけば良かったかなあ。思うに、やはりこういうアブナイ世界は”隠れ家的”であるべきで、雑誌にしてオープンにすべきじゃない類のものなのかも。

破線のマリス

2008-11-14 06:27:29 | 010 書籍
このところ哲学書と一緒にリラックスを兼ねて呼んでいるのが推理小説。といっても詳しくないので、何か良い選定方法はないかなと悩んでいた時に目に入ったのが江戸川乱歩賞。これを受賞した小説なら間違いないだろうと。それで片っ端から乱読しているところ。するとテーマや時代設定、書き口は様々なれど、なんとなく共通項があるのに気づいた。簡単に言えば複雑系。

やはり一種のコンクールなので、手抜きが感じられない。勿論文章は力強いし、しっかり書いてあるし。でもね、自分みたく斜めに速読すると、途中でストーリーを見失うこともしばしば。もっと言えば、読後もイマイチ人間関係とかトリックの種明かしとか、完全に理解できていないことが多い。そこで楽をしようと、まず映画化されているものを観て、それから原作を読もうと。

これっておそらく邪道。だけどたいがい原作を読んで映画を期待すると外されることが多いから、逆ならそれはないだろうと。最初が今回記事にした脚本家の野沢尚の作品「破線のマリス」(2000年)。第43回の受賞作。同年に封切られた映画も本人が脚本を担当。当たり前か。主演が女優の黒木瞳。TV局のやり手ビデオ編集者が、自らが演出したドキュメンタリーの放映をきっかけに犯罪に巻き込まれていくというストーリー。TV局の舞台裏が詳細に描かれていて、自分の想像ともよく合っている。

惜しい、というのが見終わった感想。作者が脚本を担当しているせいか、原作と映画の乖離は少ない。あれーっと思ったのはラスト。ネタバレだけど、小学生じゃ設定に無理があると。せめて登校拒否を繰り返している中学生じゃないと。ウソだと思ってそこだけ真っ先に原作を読んだくらい。そこだけなんだけどなあ。でもそうなると、あの頃の黒木瞳じゃ無理だしなあ。

話は変わるけど、TVとか雑誌はコワイですね。取材した会話や映像(破線)といった情報を意図的(マリス)に編集して偏った報道をするなんて簡単。人を奈落の底に突き落とすような細工はどうにでもなるって感じ。余程脇が締まった人じゃないと。自分なんてもし有名人にでもなったら、すぐにスキャンダルで破滅するだろうなあ。ならなくてよかった、なんてなれもしないけど。

破線のマリス 文庫破線のマリス 文庫    破線のマリス DVD破線のマリス DVD

放浪記

2008-11-01 08:13:35 | 010 書籍
今日は門司旅行シリーズの番外編。有名スポットの旧門司三井倶楽部を見学した時のこと。2Fには林芙美子資料室との案内が。100円という格安の料金もあってすんなり入場。でも、門司とはどういう関係なんだろう?。というのも彼女の自叙伝として有名な「放浪記」の冒頭には、下関の生まれだと書いてあったような気がしたから。

展示してあった略歴をみると、門司の小森江で生まれたとある。小森江は門司港から数km離れた所にあって、ここの高台にあるイタリアンの店を夕食の予備として検討していたので位置はしっかり頭に入っていた。家に戻ってネットで調べると、門司在住の医者が指摘したらしい。当時すでに放浪していたので、彼女自身もよく知らなかったのかもしれない。

意外だったのが晩年に夫婦で絵を楽しんでいたこと。資料室にも作品が飾ってあった。上の写真はその中の1枚で彼女が描いた油彩の自画像。正直シロウトの域を出ていないけど、自分でもいつか絵を描きたい気持ちがあって、妙に親近感が湧いたのは確か。どうもこれまで悪いイメージがあったなあ、彼女には。女流作家として有名になった後、後進が自分を追い抜くのではと妨害工作までしていたという話を聞いていて。話を聞くにつけ自己中で激しい気性の持ち主という印象がつきまとった。

それが今回改めて彼女の一生をたどると、流浪の中でたくましく生きていたことの方に少し目が向いて。そう言えば女学生時代を過ごした尾道の千光寺公園に下の写真の石碑があって名所になっている。「海が見えた。海が見える。五年振りにみる尾道の海はなつかしい。汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根が提灯のように拡がって来る。...」、という「放浪記」の中の一節。なんかウン十年も続いている森光子の舞台でも観ようかという気分になってくるから不思議。

それと映画にも興味を持った。成瀬巳喜男監督が彼女の作品をシリーズ化しているらしいので。なかでも晩年の「浮雲」(1955年)は傑作とか。でも主演が高峰秀子なんて、岸恵子よりさらに昔に遡ることになりイマイチ気が乗らないけど、まあいいか。


放浪記 (新潮文庫)放浪記 (新潮文庫)

フィッシュストーリー

2008-07-08 06:24:22 | 010 書籍
このあいだ伊坂幸太郎の最新作「ゴールデンスランバー」の記事を書いた時に、彼のひとつ前の作品「フィッシュストーリー」(2007年)を読んでいないことに気づいた。あまり話題にならなかったのかなあ、知らなかったということは。中身は短編が4つ。”動物園のエンジン”、”サクリファイス”、”フィッシュストーリー”、そして”ポテチ”。正直なところ期待はしていなかったけど。

ところが読んでみてビックリ。素晴らしい。「ゴールデンスランバー」とはえらい違い。肩の力の抜け具合も絶妙。特に気にいったのが”動物園のエンジン”と”フィッシュストーリー”。特に後者は伊坂の本領発揮といったところ。音楽ネタがベースなのも楽しい。そして読んだ後には独特のさりげないロマンチシズムがさらりと漂ってきて。久しぶりに伊坂を堪能したって感じ。

売れないロックバンドが残した最後のアルバム。その中の曲中にある”無音の間奏”。そこからおバカな空想が生まれて。それがニ十数年前、現在、三十数年前、十年後と時空を越えて繋がっていき、気づけば空想が現実に。とにかく小ネタとシカケが満載。それもこの物語だけじゃなく、「ラッシュライフ」とか昔の作品に出ていたと思われる人物が続々と登場してくるし・・・。

「僕の孤独が魚だとしたら、・・・」、「僕の勇気が魚だとしたら、・・・」、「僕の挫折が魚だとしたら、・・・」と、自分を魚に例えた引用が随所に。そのうえ鍵を握る曲のタイトルというのが”魚の歌(fish story)”。英訳が巻頭に掲載されていた。ホラ話。大げさな話。釣り師が、自分の釣果を実際より誇張して言いがちなことに由来するのだとか。なかなか渋いタイトルをつけるよなあ。

確かによくある話かも。5cmぐらいサバを読むのはザラだから。でも自分の仲間内では友人が常にメジャーを持っていてキチンと測定するから嘘が言えない。それでももめるのが大台ぎりぎりの時。無理に魚を引っ張ったりして。でもまあ確かにその差は大きいからなあ。ちなみに上の大昔の写真は60cmと言いたいところだけど残念ながら58cmで、真鯛としては自己ベスト。

フィッシュストーリーフィッシュストーリー

後鳥羽伝説殺人事件

2008-06-18 06:12:35 | 010 書籍
DVDレコーダーを購入して4年半ぐらいになるけど、簡単に録画予約ができるのでビデオテープを使っていた昔がウソのよう。技術の進化というか、デジタルの力というのは凄い。その反面、簡単なだけにどうでも良い番組を気軽にどんどん録画してしまい、あっという間にハードディスクの残量が少なくなるのが最近の悩み。その原因は娘が7割で自分が3割ぐらいかな。

この休みに自分が録画した過去の番組をチェックしてDVDに落としたり削除したりしたのだけど、今となっては録画したことすら記憶にないのもけっこうある。そんな中で驚いたし嬉しかったのが、日本テレビ系列の火曜サスペンス劇場で水谷豊が主演した「備後路殺人事件」の再放送。有名な浅見光彦シリーズのひとつ。調べると最初の放映が1990年で今から20年近く前。

当時見た記憶がある。その前に内田康夫の原作を読んでいたし。舞台が広島県なので印象に残っている。あまりに懐かしかったので、今回初めてのカミさんと一緒に観たけど、なんと主だったロケが行われていたのが今年の春に花見に行った三次市の尾関山公園。秋は紅葉かと勉強になったりして。それにしても水谷豊が若いなあ。最近はTVによく出でいるけど。

原作が何処かにあったなと本棚をチェックすると、このドラマの原作である「後鳥羽伝説殺人事件」(1982年)を初め、けっこう内田作品を持っていた。若い頃によく読んでいたんだ。ついでに調べると、この作品は彼の第3作で商業デビュー作。しかも初めて浅見光彦が登場したメモリアルな作品だった。なるほどね。作家になる前に仕事の関係で広島に来ていたかららしい。

さらに調べると、内田康夫公認の浅見光彦倶楽部というファンクラブや、その公式サイト「浅見光彦の家」なんかもあったりして。中を覗いてみて分かったのが浅見シリーズだけで100冊もあること。根強いファンがいるのもうなずける。そこでふと目に止まったのがシリーズの最終作「棄霊島」(2006年)。これがなんと前に記事にした長崎の軍艦島が舞台。これはいつか読まなくては。

なんて内田康夫の話をしながら、懐かしさがピークに達したのはドラマのエンドロールで竹内まりやが唄う”シングル・アゲイン”[YouTube]が流れた時だったかも。

尾関山公園<春>尾関山公園<秋>

DVD/備後路殺人事件DVD/備後路殺人事件 文庫/後鳥羽伝説殺人事件文庫/後鳥羽伝説殺人事件

単行本/棄霊島〈上〉単行本/棄霊島〈上〉 単行本/棄霊島〈下〉単行本/棄霊島〈下〉

CD/竹内まりや ImpressionsCD/竹内まりやImpressions

puzzle

2008-05-21 06:13:37 | 010 書籍
久しぶりに読んだ恩田陸の中編小説が「puzzle(パズル)」(2000年)。祥伝社文庫創刊15周年記念の特別書下ろしでテーマ競作「無人島」の中の一作品。これがまたまた長崎観光つながり。というのも舞台が長崎市の南西15km程の所にある軍艦島。正式名称は端島。桜鯛釣りの後でアジ曽根から帰港する途中に友人が気を利かせて案内してくれた。遠目に見るとまさに軍艦って感じで驚いたなあ。

今は無人島だけど1890年から三菱財閥の所有となり、大正期以降には当時としては画期的な鉄筋コンクリート造の集合住宅群が建設され、病院、寺、映画館等を完備した独立した都市として機能したらしい。最盛期の1960年には人口が5千人を超えたもののエネルギー政策の影響を受けて1974年に閉山。ちょうど日本の高度経済成長の終焉と重なっている。興味深いのが住民の生活ぶり。人口密度が異常に高いうえに、どの住宅にもエレベーターはないし内風呂も少なかったらしいから、まさにごった煮状態。

この島が脚光を浴び始めたのが10年ぐらい前から盛り上がっている廃墟ブーム。DVD、写真集、小説等が続々と発売されていて、本作もその中のひとつ。事件となる3人の死体が発見されるのが廃墟となった無人島で、そのモデルは間違いなく軍艦島。餓死、全身打撲死、感電死と異なる方法、異なる場所での同時刻の死について、2人の検事が解明のため現地に向かう。

なんてストーリーだけど、読む前に写真集とかを見ておく方がより楽しめること間違いなし。というのもホント背筋が寒くなるぐらい怖いから。よくTVの企画とかである”つぶれた病院の夜の肝だめし”なんかをはるかに圧倒するスケール。今は立入禁止になっているけど、周囲を船で周る観光コースが設定されているし、こっそり島に上陸する人も後を絶たないらしい。

それで肝心の感想だけど、自分が好きな恩田ワールドが全開という感じでとても楽しめた。トリックの細かい部分の荒探しをするとキリがないけど、妄想系と割り切ってしまえば問題なし。ウケたのが、そのトリック、いやパズルのひとつのピースとして登場した”さまよえるオランダ人”の伝説。村上春樹のワーグナーつながりかよ。どうもかつてのジャズレーベルへと展開しそう。

文庫 puzzle 文庫 puzzle

DVD 軍艦島1975-模型の国-DVD 軍艦島1975-模型の国-   DVD 廃墟賛歌 軍艦島DVD 廃墟賛歌 軍艦島

写真集 軍艦島―眠りのなかの覚醒写真集 軍艦島―眠りのなかの覚醒 写真集 1972 青春 軍艦島写真集 1972 青春 軍艦島