「アンソロジーというのは、なかなか残酷な企画かもしれない」というのが「Re-born はじまりの一歩」(2008年)を読んだ後の感想。そういえばずいぶん伊坂幸太郎の小説を読んでいない。何か新しいのはないかなと探して、図書館にある「モダンタイムス」(2008年)をネットで予約したのはいいけど、いつもの如く数十人待ちでいつになるか分からない。それならばと彼の他の作品をチェックしていて見つけたのがこの本。予約が入っていなかったので、すかさず借りて読んでみた。
7人の作家が競演しているのだけど、共通のテーマは”新たな出会いと出発の物語”。作家は、宮下奈都、福田栄一、瀬尾まいこ、中島京子、平山瑞穂、豊島ミホ、そして伊坂幸太郎。お目当てである伊坂の「残り全部バケーション」は、いかにも彼らしい作品だけど、なんと言えばよいのか、彼が主催する学校を卒業した生徒が彼を真似て書いた作品という感じ。つまりテクニック的には完全に伊坂、だけどほのぼのとしたいつもの空気が感じられない。ということで彼にしてはイマイチの部類かな。
残酷な企画と最初に言ったのは、ほぼ同じ長さの短編を一度に読むと、作家の技量の差がモロに分かってしまうから。今回の7人では、伊坂は置いておいて、瀬尾まいこが突出していた。後はどんぐりの背比べ。人はそれぞれだから、どれを気に入るかは好みの問題。ただし技量はそうはいかない。アマチュアじゃないのか?と思われた作家も何人かいたから。
瀬尾の作品は初めてだったけど、上手い。それと軸がぶれない。その意味では伊坂に通じるものがある。とりたてて派手な仕掛けはないのだけど、知らない間に彼女の世界に浸っている自分に気づく。読み終えた時に、読んでいたことを忘れるくらい。この「ゴーストライター」という短編は、「戸村飯店青春100連発」(2008年)の序章として書かれたらしいので、いつか本編を読んでみるつもり。登場する中華料理店の息子である2人の兄弟のきめ細かな心理描写は、もう名人の域に達している。
Re-born はじまりの一歩
7人の作家が競演しているのだけど、共通のテーマは”新たな出会いと出発の物語”。作家は、宮下奈都、福田栄一、瀬尾まいこ、中島京子、平山瑞穂、豊島ミホ、そして伊坂幸太郎。お目当てである伊坂の「残り全部バケーション」は、いかにも彼らしい作品だけど、なんと言えばよいのか、彼が主催する学校を卒業した生徒が彼を真似て書いた作品という感じ。つまりテクニック的には完全に伊坂、だけどほのぼのとしたいつもの空気が感じられない。ということで彼にしてはイマイチの部類かな。
残酷な企画と最初に言ったのは、ほぼ同じ長さの短編を一度に読むと、作家の技量の差がモロに分かってしまうから。今回の7人では、伊坂は置いておいて、瀬尾まいこが突出していた。後はどんぐりの背比べ。人はそれぞれだから、どれを気に入るかは好みの問題。ただし技量はそうはいかない。アマチュアじゃないのか?と思われた作家も何人かいたから。
瀬尾の作品は初めてだったけど、上手い。それと軸がぶれない。その意味では伊坂に通じるものがある。とりたてて派手な仕掛けはないのだけど、知らない間に彼女の世界に浸っている自分に気づく。読み終えた時に、読んでいたことを忘れるくらい。この「ゴーストライター」という短編は、「戸村飯店青春100連発」(2008年)の序章として書かれたらしいので、いつか本編を読んでみるつもり。登場する中華料理店の息子である2人の兄弟のきめ細かな心理描写は、もう名人の域に達している。
Re-born はじまりの一歩
